・オリゴ転移について

先日、日本内科学会雑誌を読んでいたら、オリゴ転移状態の非小細胞肺がんに対する局所治療のことが書かれていました。 内科医すべてを対象に書かれた文章ですから、肺がん診療に直接携わる呼吸器内科医、呼吸器外科医、腫瘍内科医、放射線治療医のみならず、…

・CheckMate816試験、幻の術前ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の評価は?

実家の庭のサクランボの花が咲いていました。 サクラの開花も、もうすぐです。 母が最後のニボルマブ+イピリムマブ併用療法を受けたのが2021年05月でしたから、あと2ヶ月で3年を迎えます。 術前薬物療法について検証したCheckMate816試験、ニボルマブ+化学…

・第III相CheckMate 722試験・・・EGFR-TKI耐性化後のニボルマブ+プラチナ併用化学療法

ドライバー遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんには、免疫チェックポイント阻害薬は効果が低い、というのが通説で、学会においても論文においてもよく言及されます。 しかし、免疫チェックポイント阻害薬と殺細胞性抗腫瘍薬を併用した場合には、必ずしもそう…

・第III相TROPION-Lung01試験・・・ドライバー遺伝子異常のない既治療進行非小細胞肺がんに対するDato-DXdの効果

datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は以前少しだけ触れたことがあります。 oitahaiganpractice.hatenablog.com Trophoblast cell surface antigen 2 (TROP2) 、直訳すれば胚盤胞栄養膜細胞表面抗原2、はTacstd2遺伝子によりコードされる膜貫通型の糖タンパ…

・高齢進行がん患者さんご夫妻の老々介護と、周囲からの「温かい励ましに感謝」

常々、医師は現場に立って患者さんに接してナンボの職業だと思っています。 どんなに学会発表や研究会発表を視聴したり、論文を読んだりしてもほとんどの場合、そこには数字や画像しか出てきません。 しかし、実際の診療には患者さんやご家族のいたみ、つら…

・QT間隔延長とtorsade de pointes(トルサード・ド・ポアンツ、多型性心室頻拍)

今日は肺がん診療とは直接関係のない、でも現代の肺がん薬物療法に関わる方には是非とも共有していただきたい、最近の私自身の辛い経験を記します。 この件に自分なりの気持ちの整理をつけるまで、診療実務以外のことに手を付ける気分になれませんでした。 …

・第III相LIBRETTO-431試験・・・RET肺がんにセルペルカチニブが有効なのは間違いないけれど・・・

RET肺がんの義父がセルペルカチニブを使い始めたのが2021年のクリスマス。 もうすぐ丸2年を迎えようとしています。 これまで過敏症症状、下肢深部静脈血栓からの重症肺血栓塞栓症合併などに悩まされました。 無増悪生存中、とはいきませんが、それでも2020年…

・米国食品医薬品局 PralsetinibをRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん治療薬として通常承認

RET肺がんの義父がセルペルカチニブを服用し始めてから、1年9ヶ月が過ぎました。 食欲不振、血圧上昇、過敏症、ネフローゼ症候群などさまざま有害事象に見舞われました。 病勢はひいきめに言って小康状態(SD)です。 最近では肺血栓塞栓症を合併して重症呼…

・EGFR遺伝子変異陽性局所進行非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後の取り扱い

2022年08月の適応拡大により、EGFR遺伝子変異陽性切除可能非小細胞肺がんに対し、病理病期II期以降なら術後補助療法としてオシメルチニブが使用可能になりました。 タグリッソ錠40mg/タグリッソ錠80mg (pmda.go.jp) 臨床試験による裏付けはないものの、同じ…

・重症市中肺炎治療とヒドロコルチゾン

肺がん診療とは直接関係のない話なのですが、肺炎治療後のリハビリ目的で転院して来られる患者さんの治療経過を見ていると、抗菌薬にステロイドを併用されている方がずいぶん増えたなあという印象を受けます。 今回取り上げる論文の影響もあるのかもしれませ…

・お盆に親族が集まるということ

1年ちょっとの膵がんとの闘病期間を経て、6月下旬に叔父が亡くなりました。 大学病院の腫瘍内科でがん薬物療法を受けていたのですが、自宅で身動きが取れなくなって、私の勤め先に救急搬送されてきました。 各種検査データから多臓器不全の状態にあり、CTで…

・第III相LUNAR試験・・・腫瘍治療電場・・・?

腫瘍細胞の有糸分裂過程を阻害する電場を用いた治療・・・。 摩訶不思議な響きを持つ謳い文句で、私が不意に思い浮かべたのは叔母が好んで通い続けていた、「ヘルストロン」のサロンでした。 ヘルストロンとは | 株式会社 白寿生科学研究所 ハクジュプラザ…

・「コロナ患者の呼吸器を2分間停止・・・」の記事、問題点は?

ウェブサイト上に以下のような記事があり、いろいろと考えさせられてしまいました。 進行肺がんの診療ばかりしていると人工呼吸管理に携わること、意識することは少ないのですが、一般診療を行う呼吸器内科医としては他人ごとではありません。 医師と患者の…

・パクリタキセルによる末梢神経障害と冷たい手袋・靴下(フローズン・グローブ)

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんの患者さんで、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が効かなくなった後の治療はいくつか選択肢がありますが、IMpower150試験のサブグループ解析の結果からカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療…

・B型肝炎ウイルス感染者と免疫チェックポイント阻害薬

HBV感染既往のある患者さん、HBVキャリアの患者さんから、がん薬物療法への影響について質問がありました。 過去に記事として扱ったことがあります。 oitahaiganpractice.hatenablog.com 要は定期的にモニタリングしながら、核酸アナログ(エンテカビル)を…

・EGFR遺伝子変異陽性肺がん、耐性化後の個別相談事例から

肺がん患者さんの個別相談において、圧倒的多数を占めるのがEGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんです。 正直なところ、ここまで相談が偏るとは思っていませんでした。 EGFR遺伝子変異をはじめとするドライバー遺伝子変異陽性肺がんでは、分子標的…

・50%糖液を用いた難治性気胸に対する胸膜癒着術・・・一筋縄ではいきません

「社会にも研究にも、いわゆる「流れ」というものがあって、その流れにはいつも目を配っておかないといけないよ」 とは、私に肺がんの病理学を手ほどきしてくださった恩師が、私にたくさん授けてくださった至言のひとつです。 その当時、術後補助療法の有効…

・AI・・・Autopsy Imaging, 死亡時画像診断

AIといわれて誰もが思い浮かべるのは、Artificial Intelligence、いわゆる「人工知能」ですよね。 日常会話の中で、新聞報道で、ニュースで、ソーシャルメディア上で、AIという言葉を耳にしない日はありません。 しかし、今日の話題は「人工知能」ではなく「…

・まさかのウロキナーゼ入手困難・・・その理由は・・・!?

20220722_mochida.pdf (jrs.or.jp) 悪性胸水のコントロールに苦戦しています。 EGFRエクソン19欠失変異陽性の患者さんだったので、オシメルチニブがよく効くだろうと高をくくっていたのですが、そうは問屋が卸しませんでした。 軽い皮膚障害以外に目立った副…

・気管支カメラが先か、胃カメラが先か

気管支カメラと胃カメラの両方を試みなければならないことがときにあります。 患者さんが口から血をはきだしているとき、それがどこから来ているのか知りたいときです。 口の中か。 鼻からか。 喉からか。 気管・気管支からか。 あるいは食道や胃、十二指腸…

・病名、病状未告知での肺がん治療は許されるのか

いま、90代後半の進行肺がん患者さんを担当しています。 EGFR遺伝子変異陽性(エクソン19欠失変異)、がん性胸水を伴っています。 PSは3相当、一定の理解力はあり、日常会話は普通にこなせます。 さて、どうしたものか。 この患者さんとはまた別件で、他の診…

・最近の出来事あれこれ

最近、いろいろあって疲れました。 ここでちょっと吐き出して頭をリフレッシュします。 ・50代女性 健康診断で胸部異常陰影を指摘されたとのことで受診されました。 CTを撮影して精査したところ、小さいものの画像所見から明らかに原発性肺腺がんです。 外科…

・甲状腺腫瘍で野口病院を受診

左肺上葉結節影同様、甲状腺左葉にも何かがあることは2016年から分かっていました。 とはいえ、甲状腺腫瘍ならよほど増大速度が速くない限りはしばらく経過観察でいいんじゃないかなあと高をくくっていました。 今年は消化器内科の先生の検査オーダーで撮影…

・内視鏡的大腸ポリープ粘膜切除術と人生初の日帰り入院

8月下旬、CTとともに胃カメラ、大腸カメラも併せて行いました。 胃カメラはともかく、大腸カメラは事前準備が大変です。 検査前日の夕食は素麺だけにして、食後に下剤を飲みます。 当日は朝5時起きで、起床後ただちに約2Lの下剤を飲み始めます。 この2Lを飲…

・3年ぶりの肺結節影経過観察

もう9月も終わりを迎えようとしています。 一昨年は義父が、昨年は実母の進行肺がんが、今年は母方の叔父の膵がんが発覚しました。 自分のことはそっちのけで親族のお世話をしていましたが、そろそろ自分の体も見ておかなきゃな、ということで、今年は3年ぶ…

・仲間の意見を聞く

肺がんの診療を進めるにあたり、常に意識することがあります。 ・その患者さんにとって、肺がんと診断することはどんな意味があるのか ・その患者さんにとって、肺がんの治療をすることはどんな意味があるのか ・その患者さんは、肺がんと診断されることの意…

・最近の出来事

相変わらず、新型コロナウイルス感染症対応に翻弄される毎日です。 私立病院である私の職場ですらこうなので、公的医療機関にお勤めで新型コロナウイルス感染症対応を最前線でなさっている呼吸器内科の先生方は、他疾患も併せて診るのに本当にご苦労されてい…

・がん患者の家族、親族として思うこと

一昨年末から義父、実母が立て続けに進行肺腺がんになりました。 担当医の先生方の適切なご加療により、ようやくそれぞれに小康状態になったと思ったら。 今度は母方の叔父が膵がんになりました。 義父や実母は非喫煙者なので、できる限りの支援をしなければ…

・バングラデシュの患者さんと

2022/06/01から入国制限が緩和されたためかどうかはわかりませんが、外国籍の患者さんを診療する機会がCoVID-19流行前に復しつつあります。 先日は中国籍の方が腹痛・腰痛でもだえ苦しみながら時間外外来にお越しになりました。 私は中国語ができませんし、…

・ビタミンC、自然治癒、ルルドの泉

先日に続き、いま読んでいる本からの引用です。 決してブログのネタにするために読み始めたわけではなく、どちらかというとiDeCoやNISAでの銘柄選びの基礎知識を得ようと思って手を付けた本なのですが、なぜかがんに関わる記述が随所に見られます。 昨今大量…