肺がんを腫瘍ワクチンで治療しようという試みは、なかなか前進しない。
ずいぶん前の話になるが、ある先生ががんセンターに講演にお越しになった際、
「腫瘍ワクチンは、病巣の表面くらいにしか機能しない印象がある」
「進行期の患者に対する腫瘍縮小よりも、手術後の患者に対する再発予防の方が有望な気がする」
とおっしゃっていた。
米国食品医薬品局が、ニボルマブと腫瘍ワクチン併用療法の臨床試験を承認したようである。
進行期の患者を対象としたこのマリアージュ、果たしてうまく行くか。
単に薬品同士のマリアージュというだけでなく、政治的にも米国とキューバが仲良くなったから実現したマリアージュなのだろう。
うまくいくといいな。
試験の概要は以下を参照。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02955290?term=cimavax&rank=1
対象はIIIB/IV期もしくは再発の非小細胞肺がん患者で、主要評価項目は安全性、全生存期間、抗体誘導能である。
FDA Approves US Trial of Cuban Lung Cancer Vaccine
Nick Mulcahy
October 28, 2016
米国食品医薬品局はキューバで開発された肺がんワクチンを用いた臨床試験実施を承認した。
この肺がんワクチン「CIMAVax」は、非小細胞肺がんに対する治療薬として2011年にキューバで使用可能となった。
今回承認された第I/II相試験は、治療歴のある進行非小細胞肺がん患者に対し、CIMAVaxとニボルマブを併用するものである。2016年11月に試験を開始し、2020年6月までに136人を集積する予定である。
CIMAVaxは上皮成長因子(EGF)を治療標的としたワクチンである。EGFRは非小細胞肺がんの約40-80%で過剰発現している。EGFRの過剰発現は生存期間の短縮や治療抵抗性と相関している。CIMAVaxは内因性のEGFに対する自己抗体を誘導し、EGFがEGFRに結合するのを妨害する。
CIMAVaxは25年前から開発されてきた。これまでの臨床試験は、緩和治療に比べてCIMAVaxに生存期間延長効果があることを示してきた。にも拘らず、主要なメディアがCIMAVaxを大きく取り上げたにも拘らず、その臨床効果は実臨床にさして大きな影響を与えないと考えられてきた。
CIMAVaxはこれまでに全世界で4000人程度の患者に使用されてきた。ボスニア・ヘルツェゴビナ、コロンビア、キューバ、パラグアイ、ペルーで承認・使用されている。
進行非小細胞肺がんを対象とした第III相臨床試験では、CIMAVax群は緩和医療群に対して有意な生存期間延長効果を示した(生存期間中央値はそれぞれ12.4ヶ月、9.4ヶ月、p=0.04)(Clin Cancer Res 2016, 22, 3782-3790)。また、サブグループ解析では、上皮成長因子の血中濃度が高い患者では、CIMAVax群の生存期間中央値は14.6ヶ月とさらに延長していた。