第57回日本肺癌学会総会より
<肺癌薬物療法の実用的バイオマーカー>
S10-1:
<EGFR遺伝子変異陽性肺癌のバイオマーカー>
・minor mutation
Kobayashi et al, Cancer Sci 2016
・Exon 20挿入変異:T790M同様、EGFR阻害薬耐性あり
→中にはEGFR阻害薬が効くものもあり
・EGFR kinase domain duplication
Gallant et al, Cancer Discov 1155-1163, 2015
Afatinibの効果が期待できるタイプ
・BIM遺伝子欠失多形によるEGFR阻害薬感受性の低下
Vorinostat併用でEGFR阻害薬感受性になる
VICTORY-J試験が進行中
・第3世代EGFR阻害薬に対する耐性化の問題
C797S変異, Neiderst et al, Clin Cancer Res 3924-3933, 2015
T790MとC797Sがtransに存在すれば第1世代と第3世代のEGFR阻害薬の併用で対応
T790MとC797Sがcisに存在する場合はEAI-045とcetuximabの併用で対応可?
Jia et al, Nature 129-132, 2016
・T790M screening:liquid biopsy
血液検体、尿検体で行う
Liquid biopsyでT790Mが検出された場合、最初から第3世代を使用するか、病勢進行が確認される前に治療を変更するのか、病勢進行が確認されてから治療を変更するのか、選択を迫られる
・病勢進行の形式
Gandara et al, Clin Lung Cancer, 2014
Systemic PD
Oligo PD
Brain “sanctuary” PD
→Oligo PDの概念は、TNM分類第8版の病期分類に取り入れられている
・in vivoでMET増幅陽性の腫瘍細胞に対して、gefitinib+crizotinib併用で制御可能
→gefitinibのみ、crizotinibのみでは制御不能
→Osimertinib+crizotinibなら毒性も軽めに抑えられるかもしれない
・tumor heterogeneity
Hata et al, Nature Med, 262-269, 2016
T790Mにも2種類ある
de novo T790Mとdrug torelant T790M
S10-2:
<ALK融合遺伝子陽性肺癌のバイオマーカー>
・FISH法の実際
まず50個の細胞をカウントする
25個以上の細胞が陽性なら「ALK-FISH陽性」と判定
5-25個の細胞が陽性なら「保留」
5個以下の細胞が陽性なら「ALK-FISH陰性」と判定
「保留」では、さらに50個の細胞をカウントする
15個以上の細胞が陽性なら「ALK-FISH陽性」と判定
15個以下の細胞が陽性なら「ALK-FISH陰性」と判定
→極めてアナログな手法、人手がかかるため、検査費用は人件費のために高額になる
・免疫染色(iAEP法)でスクリーニングし、FISHで確認
→iAEP法とFISH法を両方行うと、検査費用の方が保険償還される費用よりも高い
→陽性患者がたくさんいると、病院がどんどん赤字になるというジレンマ
・J-ALEX試験がLancet誌にアクセプトされた
→世界規模で考えてもインパクトが大きい結果であったことの証
・ASCEND-4試験(WCLC2016)では、ALK陽性はIHC(Ventana)のみで確認
→FDAはCeritinibの適用条件として、IHC(Ventana)のみで可とした
・耐性化の問題
様々なゲートキーパー変異が報告されている
G1202R変異はCrizotinib、Alectinib、Ceritinib全て無効
Lorlatinib, Brigatinibは効果あり
By-pass trackも考慮しなければならない
MET増幅→Crizotinib推奨
IGF-R変異、などなど
・Eusantinib、Entrectinibは日本発のALK阻害薬
S10-3:
<multiplex遺伝子解析>
・Sunami, Kohno et al, J Thorac Oncol 2016
EGFR 53%
KRAS 9.4%
HER2 1.9%
BRAF 0.3%
ALK 3.8%
RET 1.9%
ROS1 0.9%
NRG1 0.3%
MET skip 2.8%
・MET Exon 14 skipping mutation:Capmatinibが有効?
・LC-SCRUMは2016年12月現在で、3,700人の患者を集積した
・途中で調べたところ、2,514件は新鮮凍結検体、767件は液性検体(胸水)で提出されていた
・クライオプローブは大きな、しかも良質な検体が採取できる
・LC-SCRUMで使用しているOncomine Cancer PanelはもともとFFPE用のパネル
・FFPEでのconfirmationも行い、将来的にはFFPEでmultiplex解析ができるようにしたい
・RET, ROS1, ALKでPCRとNGSのconcordanceを検討したが、concordance rateはどれも0.99と良好
・LC-SCRUMは、2017年度よりEGFR遺伝子変異陽性患者も登録可能になり、複数回登録も許容し、パネルはGuardant 360へ移行、liquid biopsyも検討中
S10-4:
<PD-1阻害薬のバイオマーカー>
・PD-L1免疫染色は様々ながん種でバイオマーカーになりうるのか?
Louis et al, PLoS ONE 1837-1846, 2016
・KEYNOTE-024でDAKO 22C3抗体を用いた
・扁平上皮癌では、Nivolumabの効果はPD-L1発現状態に依存しない
・非扁平上皮癌では、Nivolumabの効果はPD-L1発現状態と相関する
・AtezolizumabとPD-L1発現状態の関係
腫瘍細胞だけでなく、腫瘍浸潤炎症細胞でも評価
Barlesi et al, #LBA44, ESMO 2016
・Blueprint project, J Thorac Oncol 2016
IASLC, ASCO, Bristol-Meyers squib, Roche, AstraZenekaが共同で検討
22C3抗体、22-8抗体、SP-142抗体、SP-263抗体で検討、各抗体の相関は不十分で代替はできない
・二次治療でNivolumabとPembrolizumab、どちらを選べばいい?
・WJOG PC1617L試験
PD-L1発現状態が1%-49%の患者を対象に、Nivolumab vs Pembrolizumabの無作為化比較試験を検討中
・PD-L1発現<1%の患者群でも、10%程度の奏効割合あり
→PD-L1発現<1%の患者に対して、抗PD-1抗体の適応なし、と断定できるのか
・Chen et al, Immunity 39(1) 1-, 2013
がん免疫サイクルにおいて、PD-L1はその一部にしか関わっていない
・Michele et al, Clin Cancer Res 2139-2145, 2015
腫瘍微小環境をI型からIV型まで分類
・TCR-MHC複合体
El-Osta et al, Oncotarget and therapy 2016
・Tumor mutation burden(TMB)
Rizvi 2015
Schumacher et al, Science 2015
ASCO 2016 #9017
・Neoantigen-Clonal neoantigen
McGranahan et al, Science 1463-1469, 2016
・MANA reactivity
WCLC 2016 #4352
in vitroでclonal expansion evaluation by neoantigen
・腫瘍組織を用いたバイオマーカー開発
・末梢血を用いたバイオマーカー開発
S10-5:
<liquid biopsy>
・Cobas ver.2はCE, FDA承認済み
Ann Oncol 2016, v1-v27
ESMOガイドライン2016にliquid biopsyも書き込まれている
・MBP-QP法によるEGFR遺伝子変異の経時的モニタリング
・HASAT study, Aragane et al, Cancer Sci, 2016
T790MはPD時にliquid biopsyで検出できるようになる
新規病変によるPDならT790M陽性患者の52%でliquid biopsy陽性
原発巣増大によるPDならT790M陽性患者の17%でliquid biopsy陽性
・liquid biopsyとtissue biopsyの一致率は50-60%程度
・Oxnard et al, J Clin Oncol 2016
sEGFRmとT790Mでは、tissue biopsyとliquid biopsyの間の一致率が異なる
sEGFRmでは一致率が高く、T790Mでは一致率が低い傾向
・佐賀大学で、T790M検出についてCobas ver.2による組織生検検体とMBP-QP法によるliquid biopsy検体の同等性を検証するオープンアクセス臨床試験を行っている