リキッドバイオプシーの回数制限緩和

 2年ごとの診療報酬改定、個人レベルで細部を確認するのは難しい。

 日経メディカルの記事を読んでいたら、こんな内容が記されていた。

 引用する。

<リキッドバイオプシーを用いた肺癌のEGFR遺伝子検査が3回まで可能に> 2020/03/30

・2020年度の診療報酬改定で、リキッドバイオプシーを用いた肺癌のEGFR遺伝子検査が、3回まで実施できるようになる

・肺癌の詳細な診断及び治療法を選択する場合、又は肺癌の再発や増悪により、EGFR遺伝子変異の二次的遺伝子変異等が疑われ、再度治療法を選択する場合に、患者1人につき、診断及び治療法を選択する場合には1回、再度治療法を選択する場合には2回に限り算定できる

・EGFR遺伝子検査(血漿)について、同一の患者につき同一月において検査を2回以上実施した場合における2回目以降の当該検査の費用は、所定点数の100分の90に相当する点数により算定する

 もう少し診療の流れに沿って書くと、保険診療の範囲内でのリキッドバイオプシーは、

・初回診断時は1回に限り施行可能

・オシメルチニブ以外のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬での初回治療後に病勢進行に至り、オシメルチニブの治療を検討する場合、2回までは施行可能

→ということは、オシメルチニブ以外のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬での初回治療後に病勢進行に至り、1回目のリキッドバイオプシーでT790M陰性だったら化学療法を行い、それでも病勢進行に至ったらもう一度リキッドバイオプシーができて、そこでT790M陽性になった場合にはオシメルチニブが使えるということだ

・オシメルチニブ以外のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬での初回治療後に病勢進行に至り、1回目のリキッドバイオプシーでT790M陰性だったとしても、どうしても諦めきれなくて再度リキッドバイオプシーをやりたいというときは、あと1回だけ許してあげるけど、同じ月にやるんだったら病院への診療報酬を10%減らしますよ

 安い検査ではないけれど、4回目以降は自己負担でやってもいいんじゃないの、という気はする。

 1回25,000円で自分の運命が変わる可能性があるなら、私ならかけてみたい。

 そうはいっても、リキッドバイオプシーの信頼性、それほど高くないと実感している。

 先日も、明らかに多発肺転移、がん性胸膜炎、髄膜癌腫症がある患者に対して、胸水と血漿を用いたEGFR遺伝子変異検索を行ったところ、胸水からはExon 21点突然変異が検出され、血漿からは何も出てこなかった。

 胸水は極めて量が少なく、肺を傷つけないように採取するのにかなりの冷や汗をかいたが、それでも採取してよかった。

 リキッドバイオプシーだけでは診断しえなかったし、経気管支肺生検を行うにはさらなる覚悟が必要だった。

 結局、経気管支肺生検は行わずに診断に至った。

 リキッドバイオプシーは、他の手段ではEGFR遺伝子変異検索を行いえない、あるいは思うような結果が得られなかったのときの、あくまで補完的な手段として捉えておくべきだろう。