・ACTIVE試験:Apatinib+ゲフィチニブ併用療法...無増悪生存期間は延長したけれど

 以下の記事で取り扱った、EGFR-TKI+血管新生阻害薬の話題の延長線上に、このACTIVE試験も位置付けられます。

 ApatinibがVEGFR2を阻害する小分子化合物であるというところが、ベバシズマブやラムシルマブといった抗体医薬とは異なり、新しい話題です。

 経口薬であるということは、治療の受け入れやすさという点で大きなメリットです。

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e980326.html

 

 今回の欧州臨床腫瘍学会年次総会では、Apatinib+ゲフィチニブ併用療法がゲフィチニブ単剤療法よりも有意に無増悪生存期間を延長したと発表されていました。

 さて、副次評価項目とはいいながら、全生存期間がどのような結果になるのか、興味深いところです。

 

 また、治療効果予測因子としてTP53遺伝子変異が有望、というのは目新しい視点です。

 TP53エクソン8遺伝子変異があると、Apatinib併用の方が有意にPFSを改善したとのことです。

 

 

 

ACTIVE: Apatinib plus gefitinib versus placebo plus gefitinib as first-line treatment for advanced epidermal growth factor receptor-mutant (EGFRm) non-small-cell lung cancer (NSCLC): A multicentered, randomized, double-blind, placebo-controlled phase III trial (CTONG1706)

 

Li Zhang et al., ESMO2020 Abst.#LBA50

 

背景:

 血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)経路を阻害することにより、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対してEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の効果を高めることができる。ACTIVE試験は、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する初回治療として、経口小分子VEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるapatinibとゲフィチニブの併用療法の有効性を検証したプラセボ対照第III相臨床試験である。

 

方法:

 治療歴のない古典的EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失変異もしくはエクソン21-L858R点突然変異)陽性の患者を、apatinib 500mg/日+ゲフィチニブ250mg/日併用療法群(AG群)とプラセボ+ゲフィチニブ250mg/日併用療法群(G群)に1:1の割合で無作為に割り付けた。割付調整因子は、EGFR遺伝子変異タイプ、性別、PS(0または1)とした。主要評価項目は中央判定(IRRC)による無増悪生存期間(PFS)とした。副次評価項目は、担当医評価によるPFS、全生存期間、奏効割合、病勢コントロール割合、奏効持続期間、病勢進行までの期間、QoL、安全性とした。次世代シーケンサーを用いて治療開始前および病勢進行後の病巣サンプルを調べ、効果予測因子や耐性機序を検索した。

 

結果:

 313人の患者が登録された(AG群 157人、G群 156人)。追跡期間中央値は15.8ヶ月(四分位間は12.6-20.4ヶ月)だった。主要評価項目であるIRRCによるPFSはAG群13.7ヶ月、G群10.2ヶ月で、AG群で有意に延長していた(ハザード比0.71、95%信頼区間0.54-0.95、p=0.0189)。担当医評価でもAG群の方が優位にPFSが延長していた(ハザード比0.71、95%信頼区間0.53-0.95)。全生存期間のデータは、データカットオフ時点では未成熟だった(有効イベント発生割合は29.4%)。奏効割合はAG群で77.1%、G群で73.7%と、有意差を認めなかった(p=0.5572)。エクソン19欠失変異患者(ハザード比0.67、95%信頼区間0.45-0.99)の方が、エクソン21点突然変異患者(ハザード比0.72、95%信頼区間0.48-1.09)よりハザード比がよかった。次世代シーケンサーによる解析では、TP53遺伝子変異陽性の患者において、ギリギリの優位さでPFSが良好だった(ハザード比0.56、95%信頼区間0.31-1.01) 。TP53エクソン8変異の患者では、apatinib+ゲフィチニブ併用療法で有意にPFSが改善していた(ハザード比0.24、95%信頼区間0.06-0.91)。Grade 3-4の有害事象は両群ともに同様であった。しかし、AG群では、高血圧(46.5%)と蛋白尿(17.8%)が見られた。