・新型コロナウイルスワクチンの効果と考え方

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 この記事は、2021/10/04が初版です。

 現在世界的に広がっているオミクロン株の感染爆発は、当時はその予兆すらありませんでした。

 連日新規感染者数の記録が更新されている今日にあたり、学ぶべき点はないかと考え、一部書き加えて改めて掲載します。

 

 新型コロナウイルスワクチン、本邦でもかなり浸透しました。

 当時視聴したニュース番組では、

・1回接種終了者:接種対象者の約70%

・2回接種終了者:接種対象者の約60%

と報道されていました。

 2022年01月21日現在では、NHK新型コロナウイルス特設サイトを参照すると

・1回接種終了者:全人口の80.0%(101,287,418人)

・2回接種終了者:全人口の78.7%(99,633,916人)

・3回接種終了者:全人口の1.5%(1,944,232人)

と、接種状況はさらに進捗しています。

 ワクチンが開発される以前、集団免疫が成立するには全人口の70%程度は接種完了が必要と言われていました。

 その基準は十分に満たしていますし、世界的に見ても2回接種完了者の割合は高水準で、韓国(85.34%)、中国(84.52%)に次いで我が国は第3位です。

 

 新型コロナウイルスに関連した学術報告はバブルの様相を呈しており、実生活にどの程度活かせるのかわかりません。

 こんなときは、かえって一般報道の方が実態を反映しているように感じられます。

 がんの臨床試験結果が、必ずしも実地臨床を反映していないのと関係がよく似ています。

 

 読み遅れていた2021/09/25付の新聞の社会面を見たら、いろいろと参考になることが書いてありました。

 患者さんと話すときに役立つかもしれないので書き残しておくことにしました。

 

新型コロナウイルスのワクチンの2回接種を終えてから感染する「ブレークスルー感染」が絡むクラスターが目立ってきた

・2回接種した人は感染しても未接種者より軽症で済むケースが多い

・ブレークスルー感染では、体調の変化に気付きにくく対応が遅れる恐れがある

→軽症例が多いとされるオミクロン株感染では、なおさらだと思います

群馬県伊勢崎市の病院で、2021/09/22までに10−80代の入院患者17人と職員8人の計25人の感染が判明した

・うち24人はワクチンを2回接種済みだった

・残る1人も1回接種していた

和歌山県高野町特別養護老人ホームで、2021/09/24までに重症者1人を含む80-90代の施設利用者12人と職員2人の感染が確認された

・全員がワクチンの2回接種を完了していた

・デルタ株に対するワクチンの感染予防効果は50-90%などとする報告があり、接種しても感染の可能性は残る

・一方で、発症や入院を予防する効果は80-90%とされ、重症化するリスクは低い

福井県越前市の介護老人保健施設で9月に2回接種済みの約30人が感染したクラスターでは、いずれも軽症や無症状だった

・ブレイクスルー感染は感染そのものに気付きにくく、無症状のまま他人に移してしまう恐れが指摘されている

・2021/09/24に東京都が開いたモニタリング会議で、2021/08/01-2021/09/20に新型コロナウイルス感染のために東京都内で亡くなった人484人のうち、ワクチン接種歴を確認できた412人を分析したところ、325人(79%)がワクチン未接種者、38人(9%)が1回接種者、49人(12%)が2回接種者だった

・2回接種した死亡者のうち、糖尿病などの基礎疾患のあった患者が45人(92%)を占めた

・年代別では、60歳以上の死亡者が303人(74%)だった

 

 以上から得られる教訓は、

・ワクチンを2回接種したら、一般には重症化や死亡のリスクを減らせる

・ブレークスルー感染は無症状、軽症のこともあり、誰もが無症候性・軽症キャリアとして感染源となる可能性があるので、消毒・手洗い・ソーシャルディスタンス・マスク着用といった予防行動はこれまで通りに必要

→軽症例が多いとされるオミクロン株感染では、なおさらだと思います

・高齢、糖尿病などのリスクがあると、2回接種を終了していてもブレイクスルー感染発症時の死亡リスクがあるため、感染予防行動が欠かせない

といったところでしょうか。

 

 裏を返せば、ワクチン接種完了者はこうした事実を踏まえながら社会正常化に向けた活動を始める時期が来た、ということでしょう。

 感染者数の増大に伴い、まん延防止等重点措置の適用を申請する都道府県は増加の一途にありますが、さらに患者数が増えたとき、果たして緊急事態宣言の発出に至るでしょうか?

 少なくとも大分県内(2022/01/22時点、大分県公表データから)では、デルタ株による第5波のときのような、重症化患者の頻発による高次医療機関の病床逼迫という状況にはありません。むしろ最も患者が収容されているのは宿泊療養施設(715人)であり、続いて自宅療養(468人)、その次が受け入れ病院(181人)という状況です。加えて、入院・宿泊療養準備中の患者が349人とかなり多く、宿泊療養施設の確保数(984

室)を考えるとそろそろ受け入れ余地がなくなりそうです。

 もはや、宿泊療養施設や病院で封じ込めるような水準ではなく、隔離期間を7日間程度にとどめ、インフルエンザのように在宅療養・外来管理を基本に据えるべき時期に来ているように感じられます。

 ただし、入院治療を要する方も一定数存在するはずですから、入院治療可能な病床もある程度は確保しておかなければなりません。

 そうした前提で考えるとき、ワクチン接種未完了者、あるいはワクチン非接種の意向を持つ人は社会的にはもはや少数派であり、社会生活を営むにあたって自他ともに特別な配慮を要するでしょう。