・HER2エクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対するpoziotinib

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 poziotinibについては過去に何度か触れました。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 

 2021年の欧州臨床腫瘍学会では、EGFRエクソン20挿入変異ではなく、HER2エクソン20挿入変異を有する非小細胞肺がんに対して、poziotinibはどうか、というZENITH20試験のコホート4についての報告がありました。

 16mg1日1回、8mg1日2回の2つの方法で試みられているようですが、後者のデータはまだ公表されていないものの、筆頭演者の話によれば後者の方が毒性が軽いとのことでした。

 

 

 

Efficacy and safety of poziotinib in treatment-naïve NSCLC harboring HER2 exon 20 mutations: A multinational phase II study (ZENITH20-4)

 

R. Cornelissen et al., ESMO 2021 Abst. #LBA46

 

背景:

 EGFRエクソン20変異、あるいはHER2エクソン20変異を有する非小細胞肺がんの治療は確立していない。今回は、HER2エクソン20挿入変異を有する未治療非小細胞肺がん患者を対象に、エクソン20変異によって生じる(他の薬剤では結合困難な)薬剤結合部位にも作用しうるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるpoziotinibの有効性と安全性を評価する国際的複数コホート第II相試験を行った。

 

方法:

 ZENITH20試験はエクソン20挿入変異を伴う進行非小細胞肺がん患者を対象とした。腫瘍組織を用いた遺伝子プロファイリングで変異を同定し、コホート1は既治療EGFRエクソン20挿入変異陽性患者、コホート2は既治療HER2エクソン20挿入変異陽性患者、コホート3は未治療EGFRエクソン20挿入変異陽性患者、コホート4は未治療HER2エクソン20挿入変異陽性患者をあてた。poziotinibは1日16mgを経口投与し、1日1回投与、あるいは1日2回分割投与(8mg/回を1日2回)のいずれかの方法で使用し、発現した毒性に応じて治療の中断や減量ができることとした。主要評価項目はRECIST 1.1準拠の独立効果判定委員会判定による奏効割合(ORR)とした。副次評価項目は病勢コントロール割合(DCR) 、奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性とした。今回はコホート4の結果を報告する。

 

結果:

 コホート4では、48人の患者が16mg1日1回投与、23人の患者が8mg1日2回投与で治療を受けた。8mg1日2回投与による治療群は現在も患者集積中であるため、今回は16mg1日1回投与群の結果を報告する。48人の年齢中央値は61歳(34-87)で、4人の患者は学会報告時点でも臨床試験継続中だった。白人が75%、女性が54%、非喫煙者が69%、ECOG PS1が65%だった。88%の患者で治療中断を要し、76%の患者で減量が必要だった。12%の患者で治療中止に至る有害事象が発生した。Grade3以上の治療関連有害事象の主なものは、発疹(35%)、下痢(14%)、胃炎(20%)、爪囲炎(8%)だった。主要評価項目であるORRは44%(95%信頼区間29.5-58.8)だった。さらに2人の患者は、解析時点ではまだ1度の奏効しか確認できていなかったが、確認出来たら奏効割合が48%となる。DCRは75%、DOR中央値は5.4ヶ月(2.8-19.1以上)で、3人の患者が治療を継続していた。PFS中央値は5.6ヶ月(0-20.2以上)だった。

 

結論:

 Poziotinib16mg1日1回投与は、HER2エクソン20変異を有する未治療非小細胞肺がん患者に対して、臨床的に意義のある治療効果を示した。安全性プロファイルは他の第2世代EGFR阻害薬と同様だった。1日2回投与群の臨床試験は現在も継続中である。