・セルペルカチニブと過敏症

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 このところ、間もなく薬価収載され、実臨床に導入されると見込まれるセルペルカチニブのウェブセミナーが繰り返し開催されています。

 オンコマインDxTTでの検出が必須で、かつ非扁平上皮非小細胞肺がんにおける出現頻度はわずか2%のがんです。

 それだけに、頻繁に開催される関連セミナーの背景には、なんとか諦めずに見つけてね、見つけたらきちんと使ってね、というメッセージが込められているように感じます。

 

 セミナーを見ていると、「過敏症(hypersensitive reaction)」というカテゴリーの有害事象が繰り返し取り上げられています。

 過敏症というと、一般の感覚からすると「アレルギー」「アナフィラキシー」といった状況を連想します。

 われわれ臨床医は、抗体医薬をはじめとした薬物を使用したときの即時反応(結局アナフィラキシーとかインフュージョンリアクションのことだが)を思い浮かべます。

 しかし、セルペルカチニブにおける過敏症という概念は、これらとはちょっと違うようです。

 演者の言葉を借りますと、

 「なかなかこれまでの分子標的薬で、こうした用語は出てこなかった」

 「こういうものが全体の5.2-11.7%くらいにでてくるので、注目すべき」

 「過敏症関連事象と表現されている一方で、アナフィラキシーなどの重篤な過敏症を除くと但し書きされており、分かりにくい」

 「こうした有害事象が起こりうる、ということを頭に入れておかないと診断自体が難しく、治療調整につなげにくい」

とのことです。

 これまでのところ、本件についてまとめられたネット上の記事が乏しかったので、まとめておきます。

 治療上のポイントは休薬とステロイド開始だが、ステロイドの使い方に決まったものはないようです。

 これも演者のコメントを借りれば、患者体重1kg当たり0.5mgくらいの開始量で、経過を見ながら5-10mgずつ減量がいいのではないか、と提案されていました。

 

<セルペルカチニブによる過敏症の特徴>

・原因は不明

・皮膚症状(斑状丘疹)が主体

・関節痛や筋肉痛を伴う発熱から始まることが多い

・肝機能障害、血小板減少を伴う

・これら個別の有害事象が重なってきたときに過敏症と診断できるが、それと気づくまで診断自体が難しい

・ときに口内炎、下痢、末梢神経障害、筋痙攣

・まれに血圧低下・頻脈・血中クレアチニン値増加を伴う

・治療開始から過敏症出現までの期間中央値は1.9週(範囲は0.9-77)

・過敏症が現れたら、まずは回復するまで休薬

・休薬だけで改善しなければステロイドプレドニゾロン)内服開始

・その他の対症療法

ステロイドを開始すると48時間程度で速やかに症状改善

・症状がおさまったら、ステロイドを併用しながらセルペルカチニブ40mg/回、1日2回に減量して再開

(通常の用量は160mg/回、1日2回)

・再開後に7日間以上過敏症症状が再発しないときは、80mg/回、120mg/回、160mg/回と1段階ずつ過敏症発現時の用量まで増やせる

・増量完了後に7日以上過敏症症状が再発しないときは、ステロイドを漸減する

・免疫チェックポイント阻害薬による前治療歴があると過敏症が出現しやすい(11.2-18.8% vs 1.8-2.8%)