・SPIKESのE

 今回は、「SPIKES」の「E」を扱います。

 

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 「SPIKES」の「E」は「Empathy」「Exprolation」の「E」です。

 「Emotion」は「感情移入」「共感」です。

 「Exprolation」は「探索」です。

 前回の「K」の際に「K」と「E」は本来不可分なのでは、といった締めくくりをしました。

 悪い知らせを伝えている際、いつも患者さんや家族の心情に配慮する心のゆとりが欲しい、ということです。

 

 当然のことながら、悪い知らせを受け取る側は、大変な心理的ショックを受けます。

 心で耳をふさいでしまって、それ以上の説明は意味を成さないかもしれません。

 説明者は五感をフルに活用して、面談が継続可能かを絶えず判断せねばなりません。

 「Exprolation(探索)」にはそうした意味合いがあります。

 

 患者さんが心を閉ざして、返事ができなくなるかもしれません。

 患者さんが涙を流して、それ以上説明が出来なくなるかもしれません。

 

 涙を流している患者さんに、「S」の段階で準備していたポケットティッシュを差し出すさりげない配慮。

 絶句してしまった患者さんとともに、ぐっと我慢して沈黙を保つ忍耐。

 二の句が告げない患者さんに、

 「ご心痛、お察しします」

 「大変びっくりされたことと思います」

 「説明を聞かれて、どんな風にお感じになりましたか」

などのopen questionを適切に投げかける、間の取り方。

 そしてときには、患者さんの心情を考えるとこれ以上の説明は難しい、別の機会を設けて続きを話そうとする決断力。

 そういった一連の「思いやり」が、病状説明を行う医療従事者には欠かせません。

 

 私の恩師は、「Empathy」を「思いやり」と訳して教えてくださいました。

 文法的に必ずしも正しい訳語ではないかもしれませんが、とても腹落ちする解釈です。

 

 そして最後にもう一度、最初とは異なる「S」で面談を締めくくることになります。