・抗LAG-3抗体、Relatlimab

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 PD-1、CTLA-4に加えて、がん治療上のターゲットになる免疫チェックポイントの1つとして、LAG-3が知られています。

 抗原提示細胞とT細胞が会合する際、T細胞の細胞膜表面に発現しているLAG-3蛋白は抗原提示細胞のMHC-class IIと抗原ペプチドの複合体に結合し、自身のT細胞内部分からT細胞の活性を抑制するシグナルを出すようです。

 より細かいメカニズムは、こちらのリンクに詳しいのでご参照ください。

免疫チェックポイント分子LAG-3はMHCクラスII分子を構造に依存的に認識することによりヘルパーT細胞の応答を選択的に抑制する : ライフサイエンス 新着論文レビュー (lifesciencedb.jp)

 

 さて、今回取り上げた抗LAG-3抗体、Relatlimab。

 未治療進行悪性黒色腫に対する初回治療として、ニボルマブと併用することで有望な結果を収めたようです。

 抗原提示細胞とT細胞の相互作用の段階で作用する薬ということで、位置づけがイピリムマブと似ています。

 非小細胞肺がん領域でも、ランダム化第II相試験の段階ではありますが、すでに欧米で治療開発が進んでいるようです。

 →A Study of Relatlimab Plus Nivolumab in Combination With Chemotherapy vs. Nivolumab in Combination With Chemotherapy as First Line Treatment for Participants With Stage IV or Recurrent Non-small Cell Lung Cancer (NSCLC)

ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04623775

 

 畑違いではありますが、いずれ非小細胞肺がん領域でもホットな話題になりそうな気がしますので、ここで悪性黒色腫における成績について触れておきます。

 

Relatlimab and Nivolumab versus Nivolumab in Untreated Advanced Melanoma

Hussein A Tawbi et al. N Engl J Med 2022 Jan 6;386(1):24-34.

doi: 10.1056/NEJMoa2109970.

 

背景:

 リンパ球活性化遺伝子3(Lymphocyte-activation gene 3, LAG-3)とPD-1は別種の抑制性免疫チェックポイントであり、T細胞の不活性化に関わる。抗LAG-3抗体であるrelatlimabと、抗PD-1抗体であるニボルマブを併用療法は、既治療の悪性黒色腫に対する安全性と抗腫瘍活性が示されているが、未治療の悪性黒色腫に対してどうなのかはまだ明らかにされておらず、検証が必要である。

 

方法:

 今回の第II-III相国際共同二重盲検ランダム化比較試験において、未治療の進行もしくは切除不能悪性黒色腫患者に対し、固定された投与量のrelatlimab+ニボルマブ併用療法(RN群)、もしくはニボルマブ単剤療法(N群)を4週間ごとに点滴静注した。主要評価項目は中央判定による無増悪生存期間とした。

 

結果:

 無増悪生存期間中央値はRN群で10.1ヶ月(95%信頼区間6.4-15.7)、N群で4.6ヶ月(95%信頼区間3.4-5.6)だった(ハザード比0.75、95%信頼区間0.62-0.92、p=0.006)。12ヶ月無増悪生存割合はRN群で47.7%(95%信頼区間は41.8-53.2)、N群で36.0%(95%信頼区間は30.5-41.6)だった。主要な因子でサブグループ解析を行ったが、全てRN群で予後良好な傾向にあった。Grade 3-4の治療関連有害事象はRN群で18.9%、N群で9.7%に認めた。

 

結論:

 未治療進行悪性黒色腫の患者に対してLAD-3とPD-1という2種の免疫チェックポイントを阻害することで、PD-1のみを阻害したときと比べて無増悪生存期間を有意に延長することが分かった。RN群において、未知の有害事象を認めなかった。