・オリゴ転移巣を有する非小細胞肺がんに対する局所治療後のペンブロリズマブ単剤療法

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 2021年日本肺癌学会総会の講演で取り上げられていた報告について、要約だけ読んでみました。

 オリゴ転移巣に対する局所治療には、手術も放射線治療も含まれます。

 相乗効果を期待するのならば、手術よりも放射線治療を優先して、がん特異抗原の流出を誘発してアブスコパル効果に期待する方が理にかなっているように思われます。

 

Pembrolizumab After Completion of Locally Ablative Therapy for Oligometastatic Non–Small Cell Lung Cancer: A Phase 2 Trial | Lung Cancer | JAMA Oncology | JAMA Network

 

Joshua M Bauml et al.
JAMA Oncol. 2019 Sep 1;5(9):1283-1290. 
doi: 10.1001/jamaoncol.2019.1449.

 

背景:
 オリゴ転移巣を有する非小細胞肺がん患者は、手術や定位照射といった局所治療により予後が改善するかもしれない。これまで、オリゴ転移巣に対する局所治療の研究は免疫チェックポイント阻害薬が登場する前の時代に行われてきたのだが、残存微小病変に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性を示唆する知見が集積しつつある。今回の研究では、オリゴ転移巣を有する非小細胞肺がん患者に対し、局所治療後のペンブロリズマブ投与が患者の予後を改善するかどうかを評価した。

 

方法:
 今回の単アーム第II相試験は、2015年2月1日から2017年9月30日にかけて、ペンシルベニア大学の関連施設で行った。計4か所以下のオリゴ転移巣を有する非小細胞肺がん患者51人が参加した。既知のオリゴ転移巣全てに対して局所治療を終えたのちにペンブロリズマブを投与した。局所治療終了後、4-12週の期間に、ペンブロリズマブ200mgを21日間隔で反復投与した。既定の治療コース数は8コースとしたが、病勢進行、忍容不能の毒性がなければ最大16コースまで継続することとした。主要評価項目は、局所治療開始日から起算した無増悪生存期間(PFS-L)と、ペンブロリズマブ開始日から起算した無増悪生存期間(PFS-P)とし、historical controlと比較した。副次評価項目は全生存期間、安全性、Functional Assesment of Cancer Therapy-Lung(FACT-L)評価によるQoLとした。集積したデータは、2015年2月1日から2018年8月23日までの期間で解析した。

 

結果:
 51人の患者が参加し、45人(男性24人(53%)、年齢中央値は64歳(46-82歳)、62%の患者は転移巣1ヶ所のみ、同時多発転移が31%、維持多発転移が69%、手術を受けたのは67%で、原発巣を切除したのは44%、転移巣を切除したのは49%、定位放射線治療を受けたのは67%)がペンブロリズマブの投与を受けた。解析時点で、24人の患者が病勢進行に至る(13人)か、もしくは死亡(11人)していた。PFS-L中央値は19.1ヶ月(95%信頼区間9.4-28.7)で、historical controlの6.6ヶ月よりも有意に延長していた(p=0.005)。PFS-P中央値は18.7ヶ月(95%信頼区間10.1-27.1)だった。12ヶ月生存割合は90.9%(標準誤差は±4.3%)で、24ヶ月生存割合は77.5%(標準誤差は±6.7%)だった。がん細胞のPD-L1発現状態(陽性24%、陰性47%、不明29%)、がん組織へのCD8陽性細胞浸潤度は、いずれもPFS-Lと有意な相関がなかった。局所治療にペンブロリズマブを上乗せしても。安全性やQoLへの新たな悪影響は認めなかった。

 

結論:
 オリゴ転移巣を有する非小細胞肺がん患者に対する局所治療後のペンブロリズマブ投与は無増悪生存期間を改善し、安全性やQoLへの悪影響はなかった。

 

 

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 そもそも、オリゴ転移巣に対する定位照射には生命予後を延長する効果はあるのか、という研究です。オリゴ転移に対する放射線治療というのは比較的新しい概念で、まだ一般化しているとはいいがたいです。

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 EGFR遺伝子変異陽性患者さんでオリゴ転移巣に遭遇したときには、免疫チェックポイント阻害薬ではなくてEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の方がいいのでは、という内容です。薬物療法に求めるものが、EGFRチロシンキナーゼと免疫チェックポイント阻害薬では異なりますね。前者はできるだけ長く薬を使い続けたい、というコンセプト、後者は放射線治療後のアブスコパル効果や長期持続効果に期待するコンセプトです。

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 放射線治療を前処置とした免疫チェックポイント阻害薬についての試験、アブスコパル効果を利用した薬物療法についての過去の報告です。

 

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