・新型コロナウイルスワクチンによる免疫学的肺炎

 新型コロナウイルス感染症の患者さんを診療していると、血液検査結果はそれほど大したことないのに、高い熱が続き、CTをとってみると淡いながらも肺炎像があった、ということをしばしば経験します。

 1週間を超えて症状が続く患者さんには、抗ウイルス薬よりもステロイドの方が向いているような気がします。

 よく言われるように、感染成立からしばらくすると、ウイルスの感染症としての性格よりも患者さんの免疫応答としての性格が強くなるからだと思われます。

 ところで、患者さんの免疫応答、という面からみれば、新型コロナウイルス感染症の患者さんでも、ワクチン接種後の人でも、同じような生体反応が起こっていると見てしかるべきです。

 ワクチン接種後の副反応を注意すべき期間として、アナフィラキシー反応が起こる接種後15-20分間がよく取り沙汰されますが、ワクチン接種後の免疫学的肺炎という観点からは、接種後7-10日間あたりが要注意なのではないでしょうか。

 

 私も呼吸器内科医のはしくれとして、以下のような患者さんを経験しました。

 

1)90代の女性

 1回目の新型コロナウイルスワクチン接種後、30分くらいで冷汗と気分不良、発疹が出現。

 しばらく経過観察していたら改善したものの、その2日後に発熱。

 ワクチンを接種した医療機関に相談したところ対応不能と断られ、私のところにお越しになりました。

 右肺中葉に肺炎像を認め、酸素欠乏を伴っていたため緊急入院としました。

 さまざま抗菌薬を使ってみたものの、一向に改善しません。

 ステロイド薬の内服を開始したところ改善傾向となり、状態を確認しながら3ヶ月程度で緩やかに投与量を減らしました。

 経過からワクチンとの因果関係は否定できない(気持ち的には明らかに関係がある、と感じています)と判断し、大分県庁や厚生労働省の担当部署に報告しました。

 

2)70代の男性

 この方の診療経過は、以下の記事に詳しく述べています。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 後日談なのですが、外来経過観察中にじわじわと影は薄くなり、果たして気管支鏡での診断結果が正しいことが証明されました。

 診療中、いろいろと雑談をする中で、ワクチンの話題になりました。

 「3回目の新型コロナウイルスワクチンはどうしようか」

 「肺炎球菌ワクチンもしておこうかなあ」

 順次計画を組んでやっていきたいですね、そういえば、2回目の新型コロナウイルスワクチンを接種したのはいつごろですか、と伺ったところ、件の肺炎騒ぎが発覚する約2-3か月前だったとのこと。

 2回目を接種したのち、1ヶ月足らずで外来受診した際に撮影された胸部レントゲン写真を改めてまじまじと見てみると、うっすらと左上肺野にすりガラス状の影があります。

 精査の結果明らかな原因菌やウイルスが同定できなかったことから、新型コロナウイルスワクチンによる免疫学的肺炎の可能性が極めて高いと考えています。

 

 現在も、ワクチン接種後10日目から不明熱がずっと続いている患者さんとか、15日目に原因不明の両肺多発肺炎を起こし、今でも断続的に微熱が続いている患者さんを入院担当しています。

 また、ここ2件ほど、治療抵抗性の肺炎で、ステロイド投与により速やかに改善傾向になった、という患者さんがリハビリ目的で相次いで転院して来られました。

 我々が考えている以上に、新型コロナウイルスワクチンによる免疫学的肺炎を発症した方は多いのではないかという気がします。