・巨大髄膜種と重症肺化膿症

 世間はCoVID-19による行動制限なしの、久しぶりの大型連休初日です。

 私はといえば、朝な夕なに入院担当患者さんがお亡くなりになり、哀しい連休初日になりました。

 重症肺炎で人工呼吸管理中の超高齢患者さんを抱えているので、もとより今年の大型連休はないものと諦めていましたが、それだけではない波乱の馨りを感じます。

 

 朝9時過ぎに亡くなったのは、巨大髄膜種のために長期臥床状態にあり、終末期管理を続けていた方でした。

 紹介元から引き継いだ時点で意思疎通不能、JCS III-200から300相当の意識障害、全介助状態にありました。

 息子さんのたっての希望で、高カロリー輸液と酸素投与による管理を続けていましたが、急速に血圧の低下、徐脈化が進行し、ご永眠されました。

 脳ヘルニアにより脳幹部が圧迫されたのではないかと想像しています。

 

 黄昏時に、もう一人の患者さんが亡くなりました。

 もともとは重症肺化膿症で三次救急病院に搬送され、救急室で大喀血し、片肺挿管・人工呼吸管理下に置かれた方でした。

 起炎菌はStenotrophomonas maltophiliaで、随分と治療に難渋したそうです。

 ようやく肺化膿症の治療がひと段落して人工呼吸離脱、抜管したかと思いきや、喀痰コントロールがつかず再挿管、気管切開を施されました。

 呼吸管理がひと段落したら今度は急性膵炎を合併し、なんやかんやで経口摂取の見通しが立たなくなり、胃瘻も造設されます。

 気管切開、胃瘻いずれも閉鎖の見通しが立たないまま、リハビリの目的で私の所に転院して来られました。しかし、この時点で入院から約半年が経過しており、ご本人は少しでも早く自宅に帰りたい一心です。結局気管切開も胃瘻も維持したまま、訪問診療・訪問看護に後事を委ね、自宅退院となりました。

 それからさらに約半年、同居のご家族はよくご本人を支えられたのですが、最終的にはご家族の介護疲れで在宅療養が続けられなくなり、長期療養目的で当院に再入院することになりました。

 長期療養といえば聞こえはいいですが、気管切開と胃瘻を両方とも維持しなければならないとなると、ほかに行き場はありません。事実上、先の見通しは立たず、無期限の終末期医療を開始したようなものでした。

 入院時点で療養方針を本人・ご家族に相談したところ、もう十分に生き抜いた、支えきったとのことで、肺炎の再燃などを来しても積極的な治療は望まない、とのお考えで、最後は肺炎による呼吸不全で息を引き取られました。

 

 巨大髄膜種も肺化膿症も、基本的には良性疾患です。

 とはいえ、実質的には終末期ケアとしての対応に終始しました。

 昨今、厚生労働省主導で

 「人生会議」

 「アドバンストケアプラン」

というキーワードを耳にすることが多くなりました。

「人生会議」してみませんか|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

 2人目の患者さん・ご家族とは治療の在り方について話し合う機会を持つことができましたが、1人目の患者さんとは直接話し合うことができなかったため、今回の入院対応が適切だったのかどうか、考えています。

 

 

 関連記事です。

 

 1人目の患者さんについては、以下の記事でも触れました。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬の普及で、病院における患者さんやご家族の受け入れ態勢は随分と改善しました。とはいえ、ワクチン未接種でありながら家族連れで観光に出かけた後に体調を崩す入院・外来患者さんやそのご家族を連休中に拝見すると、休日返上で働いている身としては釈然としない気分になります。私はまだまだ精神修養が足りないのでしょうね。

oitahaiganpractice.hatenablog.com