・DWIBS法による全身MRI検査・・・FDG-PET検査に代わる存在となり得るか?

 FDG-PET検査が普及して、肺がん患者さんの遠隔転移検索は随分とシンプルになりました。

 

 FDG-PET検査以前は、胸腹部造影CT、頭部造影MRIもしくはCT、骨シンチグラフィーが必須検査で、検査枠の確保に苦労したものです。また、これだけ検査をしても胃腸の病変は検出困難で、厳密に調べようとすれば胃カメラと大腸カメラまで行っていました。胸腹部と頭部の検査それぞれで造影剤を使用しなければならないのも負担でした。

 

 FDG-PET検査は、脳以外の遠隔転移巣はほぼ検出可能なので、FDG-PET検査と頭部造影MRIを行えば、全身の病巣分布を知ることができます。これだけなら、きちんとスケジュールを組めば1日で終わらせてしまうことが可能です。FDG-PET検査と頭部造影MRI検査双方を施行可能な施設、大分県には大分大学医学部附属病院(大分県由布市)と大分先端画像診断センター(大分県別府市)があります。後者は画像診断専門施設のため、FDG-PET検査と頭部造影MRIを同日に行うことを前提に紹介することが多いです。

 

 そんなわけで、気管支鏡検査に1日、FDG-PET検査と頭部造影MRIに1日、最短計2日間で肺がん診断のための精密検査が完了します。

 

 とはいえ、繰り返しになりますが大分県でFDG-PET検査ができる医療機関は上記2施設しかありません。医療分野における大分県の特性としてよく語られるのですが、医療資源が大分市別府市とその周縁部に集中しており、均てん化がうまくいっていません。

 

 そんな中、MRIの技術を応用して、FDG-PET検査と遜色ない程度にがん病巣を検出しうる手法として、DWIBS法が知られるようになりました。先日、勤め先の放射線科部長から、撮影できるように準備を整えたので遠慮なく依頼してくださいとご提案がありました。DWIBS法、恥ずかしながら私は全く知らなかったのでお尋ねしたところ、以下のリンクを教えていただきました。

 

Body DWI研究会 / m3.com学会研究会 (kenkyuukai.jp)

 

 なるほど、確かにFDG-PET検査のイメージに近いです。急性期脳梗塞の診断ではMRI-DWI image法にいつもお世話になっていますが、がん領域に応用できる技術だったとは知りませんでした。

 FDG-PET検査は同時に撮影するCT画像と重ね合わせることでより有用性が増す(FDG-PET/CT検査)のですが、DWIBS法を依頼したときに、どの程度FDG-PET/CT検査に肉薄できるのでしょうか。

 同じような質が担保できるなら、放射線被ばくなし、薬剤投与不要、自費診療でも負担額は20,000円そこそこと受け入れやすく、がん検診として有用性が高いかもしれません。

 本検査は2,020年04月から保険適用となっていますが、基準を満たす施設で、前立腺がんの骨転移検索という名目でないと保険が効かないようです。まだ一般化しているとはいいがたい状況です。