・プラチナ併用化学療法と免疫チェックポイント阻害薬使用後の、ペンブロリズマブ+ラムシルマブ併用療法

 免疫チェックポイント阻害薬とラムシルマブの併用療法、懐疑的な目で見ていたのですが、自分の立ち位置を考え直さなくてはならなくなりました。

 二次治療以降の選択肢が一つ増えるのは喜ばしいことで、例えばプラチナ併用化学療法+ペンブロリズマブ併用療法が効かなくなったとき、ペンブロリズマブはbeyond PDで使い続けながら、プラチナ併用化学療法をラムシルマブに切り替える、といった使い方ができるのかもしれません。

 願わくは、第III相試験できっちり検証していただきたいものです。

 

 演者のReckamp先生がインタビューを受けている動画を拝見しました。

 SoC群の2/3をドセタキセル+ラムシルマブ併用療法を受けた患者さんが占めており、そうした環境でSoC群のOS中央値が11.6ヶ月とREVEL試験におけるドセタキセル+ラムシルマブ併用療法群の成績とほぼ符合していることから、それを上回る成績を残したペンブロリズマブ+ラムシルマブ併用療法にはかなり期待できるんじゃないか、というお考えのようでした。

 

 

 

Overall survival from a phase II randomized study of ramucirumab plus pembrolizumab versus standard of care for advanced non–small cell lung cancer previously treated with immunotherapy: Lung-MAP nonmatched substudy S1800A.

 

Karen L. Reckamp et al.

ASCO 2022, abst.#9004

DOI:10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.9004

 

背景:

 進行非小細胞肺がん患者の大多数は、免疫チェックポイント阻害薬による治療に耐性化する。免疫チェックポイント阻害薬耐性化は対策が待ち望まれる大きな問題である。免疫チェックポイント阻害薬と血管内皮増殖因子およびその受容体の併用は、免疫系に作用することで複数のがん種に対し有効性を示している。今回我々は、既治療進行非小細胞肺がんに対するマスタープロトコールであるLung-MAP基盤研究の支援の下、免疫チェックポイント阻害薬既治療進行非小細胞肺がん患者を対象に、ペンブロリズマブ+ラムシルマブ併用療法について評価した。患者背景や毒性については2021年の米国臨床腫瘍学会で報告済みである。

 

方法:

 S1800Aはランダム化第II相試験で、バイオマーカーに基づく臨床試験には参加資格がなく、免疫チェックポイント阻害薬への獲得耐性(免疫チェックポイント阻害薬使用後少なくとも84日間経過して病勢進行(progressive disease, PD)が確認された状態)を示した患者を対象とした。加えて、プラチナ併用化学療法治療歴があること(免疫チェックポイント阻害薬との併用如何を問わない)、ECOG-PS 0-1であることも条件とした。PD-L1発現状態、組織型、標準治療(SoC)群に割り付けられたときにラムシルマブを使う意思があるかどうかを割付調整因子として、対象患者をペンブロリズマブ+ラムシルマブ併用療法(P+R)群とSoC群に割り付けた。SoCにはドセタキセル+ラムシルマブ、ドセタキセル単剤、ペメトレキセド単剤、ジェムシタビン単剤を規定し、担当医がいずれか1レジメンを選択することとした。登録患者数144人、適格患者数130人を想定し、主要評価項目は全生存期間(overall survival, OS)とし、90件の死亡イベントにおいて片側検定で10%の群間差をログランク検定で検出する設定とした。副次評価項目は奏効割合(overall response rate, ORR)、奏効持続期間(duration of response, DoR)、担当医評価による無増悪生存期間(progression free survival, PFS)、毒性とした。 

 

結果:

 2019年5月17日から2020年11月16日までに、166人の患者が登録され、137人が適格と判定された(P+R群 69人、SoC群 68人(うち45人はドセタキセル+ラムシルマブ、23人はラムシルマブを含まない他のレジメン))。不適格と判定された主な理由は前治療でPDが確認されていないこと(P+R群 6人、SoC群 6人)、2レジメン以上の免疫チェックポイント阻害薬治療歴があること(P+R群 2人)、毒性により免疫チェックポイント阻害薬が中止されていたこと(SoC群 2人)、測定可能病変がないこと(P+R群 1人、SoC群 2人)だった。OSはP+R群で有意に改善した(ハザード比0.61(95%信頼区間0.38-0.97)、片側検定におけるp値=0.019、中央値はP+R群15.0ヶ月(95%信頼区間13.2-17.0)、SoC群11.6ヶ月(95%信頼区間8.5-13.8)。PFSは両群間で差はなかった(ハザード比0.86(95%信頼区間0.57-1.31)、片側検定p=0.25、中央値はP+R群4.5ヶ月(95%信頼区間4.0-6.9)、SoC群5.2ヶ月(95%信頼区間4.0-6.6))。ORRは両群間で差がなかった(p=0.28)。P+R群におけるOS延長効果はほとんどのサブグループで認められた。

 

結論:

 化学療法及び免疫チェックポイント阻害薬既治療の進行非小細胞肺がん患者において、P+R併用療法はSoCと比較して有意にOSを改善した。OSに対するORRやPFSの結果の乖離は過去の免疫チェックポイント阻害薬関連の臨床試験でも報告されている(Rittmeyer et al., Lancet 2017)。本報告は、プラチナ併用化学療法及び免疫チェックポイント阻害薬治療後の二次治療において、殺細胞性抗腫瘍薬を含まない治療レジメンがドセタキセル+ラムシルマブを含む標準治療群と比較して生存期間延長効果を示した初めての臨床試験であり、Lung-MAP基盤研究を用いて明らかにされた。

 

 

 関連記事です。

 ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法、個人的にはあまり好きではないんですよね。

 有効性の割に、コスト面を含めた毒性が強すぎる印象を持っています。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 第III相REVEL試験におけるドセタキセル+ラムシルマブ併用療法の生存期間中央値は10.5ヶ月でした。

oitahaiganpractice.hatenablog.com