・第III相SKYSCRAPER-02試験・・・進展型小細胞癌IMpower133レジメンへのTiragolumab上乗せ効果は?

 抗TIGIT抗体、Tiragolumab。

 現在進展型小細胞肺がん一次治療の標準となったアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド併用療法、いわゆるIMpower133レジメンへの上乗せ効果が期待されたSKYSCRAPER-02試験ですが、残念ながらうまくいかなかったようです。

 

 

 

SKYSCRAPER-02: Primary results of a phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled study of atezolizumab (atezo) + carboplatin + etoposide (CE) with or without tiragolumab (tira) in patients (pts) with untreated extensive-stage small cell lung cancer (ES-SCLC).

 

Charles M. Rudin et al.

2022 ASCO Annual Meeting abst.#LBA8507

DOI: 10.1200/JCO.2022.40.17_suppl.LBA8507

 

背景:

 アテゾリズマブは、カルボプラチン+エトポシド併用療法と併用する条件のもと、進展型小細胞肺がんの1次治療として初めて承認された免疫チェックポイント阻害薬である。しかし、最終的にはほとんどの患者が病勢進行に至る。TIGITは新しく見いだされた抑制性の免疫チェックポイントであり、活性化T細胞やNK細胞に発現している。tira(抗TIGIT抗体)はPD-1 / PD-L1阻害薬のような他の免疫チェックポイント阻害薬と相乗効果を示すのではないかと目されており、免疫反応をさらに増幅して臨床効果を改善するのではないかと考えられている。SKYSCRAPER-02試験は、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド併用療法にtiraを上乗せすることで、進展型小細胞肺がん患者における抗腫瘍効果や生存期間延長効果が増幅されるかどうかを評価する臨床試験である。

 

方法:

 未治療の進展型小細胞肺がん(治療の有無を問わず、無症候性の脳転移巣を有する患者を含む)を対象に、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド併用療法に加え、tiraを600mg投与する群(tira群)とプラセボを投与する群(p群)に1:1の比率で無作為に割り付けた。治療は3週間隔で4コース行い、その後はアテゾリズマブとtiraもしくはプラセボを3週間隔で維持投与し、病勢進行を認めるか、臨床的有用性が失われるまで継続した。層別化因子はECOG-PS(0 vs 1)、脳転移既往(あり vs なし)、LDH(正常 vs 異常高値)とした。主要評価項目は2つ設定し、脳転移既往のない患者集団(primary analysis set, PAS)における担当医評価での無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)とした。その他の評価項目は、全患者集団(full analysis set, FAS)におけるPFS、OS、奏効割合(obsective response rate, ORR)、奏効持続期間(duration of response, DoR)、安全性とした。

 

結果:

 総数490人の患者が無作為割付された(tira群243人、p群247人)。2022年2月6日までのデータカットオフ時点までの追跡期間中央値は13.9ヶ月で、今回提示するデータはPFSの最終解析結果とOSの中間解析結果である。PAS集団においては、tira群のPFS、OS延長効果は認めなかった。FAS集団における評価もPAS集団と同様で、PFSやOSの延長効果は認めなかった。Grade 3 / 4の治療関連有害事象はtira群の52.3%、p群の55.7%で認めた。Grade 5の治療関連有害事象はtira群の0.4%、p群の2.0%で認めた。治療中止に至る治療関連有害事象はtira群の5.0%、p群の5.3%に認めた。

 

結論:

 進展型小細胞肺がん患者において、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド併用療法にtiraを上乗せすることの有用性は認められなかった。毒性は忍容可能だった。本試験はOSの最終解析結果が得られるまで継続する予定である。

 

 

 

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