・新型コロナウイルスのオミクロン株と、斜陽の抗体医薬品

 

 新型コロナウイルス感染症の勢いが止まらず、肺癌診療に思いを馳せる余裕が出てきません。

 ちょっと前までは、抗体医薬品であるロナプリーブやゼビュディを早い段階で積極的に使うことで、治療開始の翌々日には患者さんが解熱して見通しが立つことが多かったのですが、最近はこれら抗体医薬品を使えなくなりました。

 冒頭に掲げた表は、オミクロン株に対して国内承認済みの抗体医薬品や抗ウイルス薬がどの程度有効かを示したもので、数字が小さいほど有効であることを示しています。

 新型コロナウイルス感染症流行勃発当初の比較対照株に比べて、現在国内で主流となっているとされるオミクロン株BA.5亜型に対してはゼビュディは全くの無力で、ロナプリーブも効果は限られそうなデータです。Bebtelovimabは有効そうですが、まだ我が国では使えませんし、使えるようになったときには新たな株が出てきて無効になっているかもしれません。

 今のところ、治療の主役は抗ウイルス薬であり、汎用性の観点から内服可能な患者さんにはラゲブリオ、内服困難な患者さんにはベクルリー、酸素投与が必要な患者さんにはステロイド併用、適応があればアクテムラも考慮、という感じでしょうか。抗体医薬品はさらに治療を上乗せしたいときに検討する薬との位置づけで、今回の結果を見ると、ゼビュディよりロナプリーブの方が優先されるようです。