・NTRK融合遺伝子陽性肺がんに対するラロトレクチニブ

 

 臓器横断的臨床試験の結果、既に実地臨床で使用できるラロトレクチニブ。

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 肺がん患者さんだけでの治療成績はどうか、というのが今回の報告の趣旨です。

 

 印象深かったのは、以下の3点でしょうか。

1.対象となったのはNTRK融合遺伝子陽性進行肺がん患者さん26人で、効果判定可能だったのはそのうち23人

2.奏効割合83%、3年生存割合72%

3.中枢神経病変を合併した患者さん10人における奏効割合80%、1年生存割合78%

 

 なにはともあれ、NTRK融合遺伝子を患者さんから見出さないことには始まりません。

 

 

 

Updated efficacy and safety of larotrectinib in patients with tropomyosin receptor kinase (TRK) fusion lung cancer.

 

Alexander E. Drilon et al.

2022 ASCO Annual Meeting abst.#9024

DOI: 10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.9024

 

背景:

 NTRK融合遺伝子は、肺がんを含む様々ながん種でドライバー遺伝子異常として働く。larotrectinibは中枢神経系病変に対しても有効で、選択性の高いTRK阻害薬で、TRK融合遺伝子陽性肺がん患者15人に対して75%の奏効割合を示したと報告されている。今回はTRK融合遺伝子陽性肺がんをlarotrectinibで治療した拡大コホートのデータについて報告する。

 

方法:

 TRK融合遺伝子陽性肺がん患者に対しlarotrectinibを使用した2件の臨床試験のデータを解析した。larotrectinibは1回100mgを1日2回投与した。腫瘍縮小効果はRECIST ver.1.1に則り、効果判定委員会が評価した。

 

結果:

 2021年07月20日までに、計26人のTRK融合遺伝子陽性肺がん患者(非小細胞肺がん24人、非定型カルチノイド1人、神経内分泌がん1人)が組み入れられ、うち10人は治療開始時点で中枢神経病変を合併していた。年齢中央値は51.5歳(範囲は25-76)、融合遺伝子の内訳はNTRK1が21人(81%)、NTRK3が5人(19%)だった。前治療歴中央値は2レジメンで、19人(73%)は2レジメン以上の治療を受けていた。治療効果判定可能だった23人の患者で、奏効割合は83%(95%信頼区間61-95)で、完全奏効(CR)2人、部分奏効(PR)17人、病勢安定(SD)4人だった。治療開始から奏効までの期間の中央値は1.8ヶ月だった。治療開始時点で効果判定可能な中枢神経病変を有していた10人における奏効割合は80%(95%信頼区間44-97)で、部分奏効(PR)8人、病勢安定(SD)2人だった。奏効持続期間中央値(追跡期間中央値12.9ヶ月)、無増悪生存期間中央値(追跡期間中央値14.6ヶ月)は解析時点でいずれも未到達だった。生存期間に関する追跡期間中央値は12.9ヶ月で、2年生存割合、3年生存割合はいずれも72%だった。治療開始時点で中枢神経病変を合併していた10人の患者において、12ヶ月奏効持続割合は26%、12ヶ月無増悪生存割合は22%、12ヶ月生存割合は78%だった。治療継続期間は2.1ヶ月から52.7ヶ月以上と幅があった。データカットオフ時点で、6人の患者は病勢進行に至っていたがその後もlarotrectinibの治療を4週間以上beyond-PDとして継続していた。治療関連有害事象のほとんどはGrade1-2と軽微で、Grade3-4の治療関連有害事象は5人のみ(ALT増加、AST増加、過敏症、筋肉痛、体重増加)だった。治療関連有害事象のために治療を中止した患者はいなかった。

 

結論:

 NTRK融合遺伝子陽性進行肺がん患者に対し、larotrectinibは速やかに、かつ持続的に腫瘍縮小効果を示し、生存期間を延長し、安全性の面も長期にわたり優れていた。中枢神経系病変を有する患者においても同様だった。肺がん患者におけるNTRK融合遺伝子検索は必要である。