・ADAURA試験、2年間の追加追跡調査の結果

 

 完全切除後EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者さんに対し、術後補助療法としてのオシメルチニブの意義を検証したADAURA試験。

 2年間の追加追跡調査後の結果が報告されていました。

 結果は揺るがず、オシメルチニブの高い治療効果を追認することとなりました。

 

 ポイントを3つまとめます。

・EGFR遺伝子変異陽性完全切除後非小細胞肺がんにはオシメルチニブが有効

・無病生存期間を2倍以上に延長

・中枢神経系への再発抑制効果も高い

 

 なお、本治療は2022/08/24付で、術後補助療法としても保険診療で適用可能になりました。

アストラゼネカのタグリッソ、早期EGFR変異陽性肺がんの術後補助療法として適応拡大 (astrazeneca.co.jp)

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 

 

 

Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with resected EGFR-mutated (EGFRm) stage IB-IIIA non-small cell lung cancer (NSCLC): Updated results from ADAURA

 

Masahiro Tsuboi et al.
ESMO 2022, abst.#LBA47
Annals of Oncology (2022) 33 (suppl_7): S808-S869. 
doi: 10.1016/annonc/annonc1089

 

アストラゼネカのタグリッソ、EGFR変異陽性患者さんの術後補助療法において無病生存期間の中央値を5.5年に延長 (astrazeneca.co.jp)

 

背景:
 オシメルチニブは第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)で、TKI感受性変異、あるいはT790M耐性変異を有するEGFRを阻害する。中枢神経系転移合併患者を含め、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対して有効である。完全切除後のEGFR遺伝子変異(エクソン19欠失変異 / エクソン21点突然変異)陽性非小細胞肺がん患者(術後補助化学療法施行後の患者を含む)を対象に、術後補助療法としてのオシメルチニブの有効性を検証した第III相ADAURA試験の初回評価において、オシメルチニブはプラセボと比較して有意な無病生存期間(DFS)延長効果を示した。II-III期患者のDFSに関するハザード比は0.17(99.06%信頼区間0.11-0.26, p<0.0001)、IB-IIIA期患者のDFSに関するハザード比は0.20(99.12%信頼区間0.14-0.30, p<0.0001)だった。今回は、追跡期間を2年間延長し、DFSと再発パターンの最新データについて報告する。

 

方法:
 適格患者(日本と台湾では20歳以上、その他の地域では18歳以上、WHO-PS 0-1、完全切除後のI-IIIA期(AJCC第7版準拠)非小細胞肺がん患者(術後補助化学療法施行の有無は問わない)を対象に、OSI群(オシメルチニブ80mg/日)とPBO群(プラセボ)に1:1の比率で無作為割り付けを行い、最長3年間治療を継続した。主要評価項目は、II-IIIA期の患者を対象とした担当医判定によるDFSとし、副次評価項目はIB-IIIA期の患者を対象としたDFS、全生存期間(OS)、安全性とした。再発様式の検討と中枢神経系無病生存期間(CNS-DFS)を探索的評価項目に定めた。データカットオフは2022/04/11とした。この期間内に、本試験に登録された全ての患者がプロトコール治療を完了した。

 

結果:
 全世界で682人の患者が無作為割り付けされた(OSI群339人、PBO群343人)。年齢中央値は63歳で、全体の約70%が女性、非喫煙者OSI群68%、PBO群75%、アジア人は両群ともに64%、WHO-PS0の患者はOSI群63%、PBO群64%だった。ほぼ全ての患者の病理組織型は腺がん(95%超)で、全体の約60%が術後補助化学療法を受けていた。II-IIIA期患者(計470人)のDFSに関し、OSI群の追跡期間中央値は44.2ヶ月、PBO群の追跡期間中央値は19.6ヶ月、OSI群のDFS中央値65.8ヶ月、PBO群のDFS中央値21.9ヶ月、ハザード比0.23(95%信頼区間0.18-0.30、242/470イベント(イベント発生率51%))、2年DFS割合はOSI群90%vsPBO群46%、3年DFS割合はOSI群84%vsPBO群34%、4年DFS割合はOSI群70%vsPBO群39%だった。IB-IIIA期患者全体のDFSに関し、OSI群の追跡期間中央値44.2ヶ月、PBO群の追跡期間中央値27.7ヶ月、OSI群のDFS中央値65.8ヶ月、PBO群のDFS中央値28.1ヶ月、ハザード比0.27(95%信頼区間0.21-0.34、305/682イベント)、2年DFS割合はOSI群90%vsPBO群55%、3年DFS割合はOSI群85%vsPBO群44%、4年DFS割合は73%vs38%だった。PBO群と比較すると、OSI群では局所再発、遠隔転移再発ともに少なく、解析時点での再発はOSI群で27%、PBO群で60%だった。OSI群における再発様式は肺12%、リンパ節6%、中枢神経系転移6%だった。PBO群では肺26%、リンパ節17%、中枢神経系11%だった。63人(OSI群22人、PBO群41人)が中枢神経系への転移再発を来した。CNS-DFSは両群ともに中央値に達していなかった。2年CNS-DFS割合はOSI群98%vsPBO群81%、3年CNS-DFS割合はOSI群97%vsPBO群77%、4年CNS-DFS割合はOSI群90%vsPBO群75%だった。中枢神経系転移再発を来したII-IIIA期患者のCNS-DFSに関するハザード比は0.24(95%信頼区間0.14-0.42、63/470イベント)だった。毒性プロファイルは、既報と変わりなかった。

 

結論:
 2年間追跡調査を延長しても、DFS延長に関するオシメルチニブの優位性は維持され、初回評価の際と同じ結論が得られた。今回のデータにより、術後補助療法としてのオシメルチニブの意義がより強固なものとなった。