前回までの記事で見てきた通り、限局型肺小細胞がんの治療開発は停滞気味です。
一方、進展型肺小細胞がんには、アテゾリズマブやデュルバルマブといった抗PD-L1抗体に分類される免疫チェックポイント阻害薬をカルボプラチン+エトポシド併用療法と一緒に使うのが標準治療になりました。
当然のことながら、限局型肺小細胞がんでも抗PD-L1抗体を使ってみよう、という発想が出てきます。
まだ韓国からの単アーム第II相試験結果しか報告されていませんが、シスプラチン+エトポシド+デュルバルマブ+1日1回根治的胸部放射線照射併用療法により、2年生存割合67.8%(HF-ARTでは47%)、2年無増悪生存割合42.0%(HF-ARTでは29%)というのは有望な結果です。
ドイツでも似たようなコンセプトのランダム化第II相試験が進行中のようで、今後グローバルな第III相試験に発展したら、我が国も寄与できたらいいなと感じました。
Durvalumab with chemoradiotherapy for limited-stage small-cell lung cancer
Sehhoon Park et al.
Eur J Cancer. 2022 Jul;169:42-53.
doi: 10.1016/j.ejca.2022.03.034. Epub 2022 Apr 29.
背景:
限局型肺小細胞がん(Limited-Stage Small-Cell Lung Cancer, LS-SCLC)に対する現在の標準治療は、同時併用化学放射線療法(Concurrent Chemo-RadioTherapy, CCRT)である。
方法:
今回の単アーム第II相試験では、LS-SCLC患者に対して4コースのシスプラチン+エトポシド+デュルバルマブ(CED)併用療法を3週間ごとに行った。根治的胸部放射線照射は、CED併用療法の3コース目から2.1Gy/回を1日1回、計25回、総線量52.5Gyで開始した。以上の治療が終了した患者は、デュルバルマブ単剤維持療法を4週間間隔で、参加登録日から起算して最長2年経過するまで継続した。適応のある患者には、予防的全脳照射(Prophylactic Cranial Irradiation, PCI)が推奨された。
結果:
51人の患者が登録され、50人の患者が全ての項目に関する解析対象となった。追跡期間中央値26.6ヶ月の段階で、無増悪生存期間(PFS)中央値は14.4ヶ月(95%信頼区間10.3-未到達)、2年無増悪生存割合は42.0%だった。生存期間(OS)中央値は未到達で、2年生存割合は67.8%だった。PD-L1陽性患者は22人、PD-L1陰性患者は20人いたが、PD-L1陽性はPFS(ハザード比0.70(95%信頼区間0.31-1.58))、OS(ハザード比0.64(95%信頼区間0.22-1.84))いずれの延長とも有意な相関を認めなかった。PCIの適応がある患者は43人に上り、実際にPCIを受けた患者集団(22人)は受けなかった集団(21人)に対して、初回増悪時に脳転移を伴っていた患者が有意に少なかった(13.6% vs 42.9%, p=0.033)。Grade 3もしくは4の有害事象が数件認められたが、適切な支持療法で管理可能だった。
結論:
LS-SCLCに対するCCRT+デュルバルマブ併用療法は臨床効果、安全性両面で有望であり、ランダム化比較試験での検証が急がれる。
ドイツでの第II相臨床試験概要は、以下から参照可能です。
概要:
同時併用化学放射線療法は、限局型肺小細胞がん患者の全生存期間、無増悪生存期間を延長することがわかっている。今回の臨床試験は前向き多施設共同無作為化オープンラベル第II相試験であり、限局型肺小細胞がん患者を対象に、シスプラチン・エトポシド併用化学療法+同時併用根治的胸部放射線照射に加えてデュルバルマブを上乗せすることの意義を検証する医師主導試験である。
標準治療群:
シスプラチン75mg/㎡を1日目、エトポシド100mg/㎡を1-3日目を3週ごと4-6コース
根治的胸部放射線照射は1.8-2.0Gy/回、総線量60±6Gy、1-3コース目のどこかで開始
試験治療群:
標準治療群の内容に加え、デュルバルマブ1500mgを1日目、3週ごと
他剤および放射線照射終了後は維持療法としてデュルバルマブ1500mgを4週ごと
☆ シスプラチンは40mg/㎡、1日目・8日目の分割投与も可とする
☆ 毒性のためやむを得ない場合は、3コース目以降はシスプラチンをカルボプラチン5AUC、1日目に変更することも可
☆ 少なくとも2コースは、同時併用化学放射線療法を行う
主要評価項目:
無増悪生存期間
副次評価項目: