・アテゾリズマブ併用化学療法の有効性と免疫関連有害事象の関係

 

 進行非小細胞肺がんに対するプラチナ併用化学療法+アテゾリズマブを含む併用療法の有効性を検証した3つの臨床試験・・・IMpower130試験、IMpower132試験、IMpower150試験を統合解析し、有効性とirAEの関係を探った研究です。

 そこそこのirAEに見舞われた方が免疫チェックポイント阻害薬の有効性が高い、ということはよく知られていることです。

 むしろ、本研究の興味深いところは、

 「免疫チェックポイント阻害薬を使用していない患者集団においても、irAE様の有害事象が出現した方が生存期間が延長する」

という点だと思います。

 免疫チェックポイント阻害薬使用の有無に関わらず、がんの制御に免疫機序が作用している、という一つの証左ではないでしょうか。

 

 

Association of Immune-Related Adverse Events With Efficacy of Atezolizumab in Patients With Non–Small Cell Lung Cancer
Pooled Analyses of the Phase 3 IMpower130, IMpower132, and IMpower150 Randomized Clinical Trials

 

Mark A. Socinski, MD et al.
JAMA Oncol. Published online February 16, 2023. 
doi:10.1001/jamaoncol.2022.7711

 

背景:

 免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん薬物療法を行う際に起こる有害事象により、治療効果を予測できるかもしれない。進行非小細胞肺がん患者を対象に行われた3件の第III相臨床試験の統合解析を行い、免疫関連有害事象とアテゾリズマブの治療効果について評価する。

 

方法:

 IMpower130試験、IMpower132試験、IMpower150試験はいずれも多施設共同オープンラベル無作為化第III相医臨床試験であり、アテゾリズマブを含む化学免疫療法の有効性と安全性を検証するのが目的だった。臨床試験参加者は、化学療法治療歴のない臨床病期IV期の非扁平上皮非小細胞肺がん患者だった。

 IMpower130試験では、適格患者をカルボプラチン+ナブパクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法群と、カルボプラチン+ナブパクリタキセル併用療法群に、2:1の割合で無作為に割り付けた。

 IMpower132試験では、適格患者をカルボプラチンもしくはシスプラチン+ペメトレキセド+アテゾリズマブ併用療法群と、カルボプラチンもしくはシスプラチン+ペメトレキセド併用療法群に、1:1の割合で無作為に割り付けた。

 IMpower150試験では、適格患者をカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療法群と、カルボプラチン+パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法群と、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法群に、1:1:1の割合で無作為に割り付けた。

 今回の事後解析は2022年02月に行った。IMpower130(2018/03/15データカットオフ)、IMpower132(2018/05/22データカットオフ)、IMpower150(2019/09/13データカットオフ)のデータを統合し、治療別(アテゾリズマブ併用群 vs 対照群)、免疫関連有害事象(irAE)発現別(irAEあり群 vs irAEなし群)、irAEグレード別(grade 1-2 vs grade 3-5)に解析を行った。immortal biasを調整するために、時間依存性Cox比例ハザードモデルと無作為割り付けから1、3、6、12ヶ月時点でのirAE発現状況解析を行い、全生存期間(OS)に関するハザード比を推定した。

 

結果:

 2503人の患者が無作為割り付けされ、1577人がアテゾリズマブを含む試験治療群に、926人がアテゾリズマブを含まない対照群に割り付けられた。平均年齢は試験治療群63.1歳(標準偏差9.4)、対照群63.0歳(標準偏差9.3)、男性は試験治療群950人(60.2%)、対照群569人(61.4%)だった。irAEを伴ったもの(試験治療群753人、対照群289人)、irAEを伴わなかったもの(試験治療群で824人、対照群637人)で患者背景に偏りはなかった。試験治療群において、irAEを伴ったものの生存期間中央値は25.7ヶ月(95%信頼区間23.9-29.1)、irAEを伴わなかったものの生存期間中央値は13.0ヶ月(95%信頼区間11.7-13.9)だった(ハザード比0.69、95%信頼区間0.60-0.78)。対照群において、irAEを伴ったものの生存期間中央値は20.2ヶ月(95%信頼区間18.2-22.8)、irAEを伴わなかったものの生存期間中央値は12.8ヶ月(95%信頼区間12.0-13.9)だった(ハザード比0.82、95%信頼区間0.68-0.99)。試験治療群でgrade 1-2のirAEを経験した患者とirAEを経験しなかった患者の間でのOSに関するハザード比は、1ヶ月時点で0.78(95%信頼区間0.65-0.94)、3ヶ月時点で0.74(95%信頼区間0.63-0.87)、6ヶ月時点で0.77(95%信頼区間0.65-0.90)、12ヶ月時点で0.72(0.59-0.89)で、irAEを経験した患者の方が有意に予後良好だった。同様にgrade  3-5のirAEを経験した患者とirAEを経験しなかった患者の間でのOSに関するハザード比は、1ヶ月時点で1.25(95%信頼区間0.90-1.72)、3ヶ月時点で1.23(95%信頼区間0.93-1.64)、6ヶ月時点で1.1(95%信頼区間0.81-1.42)、12ヶ月時点で0.87(0.61-1.25)だった。

 

結論:

 今回の解析では、軽度から中等度のirAEを伴った患者ではOSが延長していた。