「期待される生命予後が3ヶ月以上の患者」

 「期待される生命予後が3ヶ月以上の患者」

 このくだりは、臨床試験の適格条件や、担がん患者さんが他の疾患にかかって手術の必要性があるとき、などによく耳にするフレーズです。

 「もともと生命予後があまり期待できない患者さんに、危険性を伴う治療は勧められない」

 「リスクを犯して手術をしても、がんのために3ヶ月以上生きられないのなら、何のために手術をするのかわからない」

といった理念があるからです。

 

 しかし、「期待される生命予後が3ヶ月以上の患者」・・・。

 ときとして、判断が難しいことがあります。

 私は、判断が難しいときには、それすなわち「期待できない」と判定することにしています。

 しかしこれも、分子標的薬に感受性がある腫瘍の場合は、立ち止まって考え直さねばなりません。

 

 限局型肺小細胞癌に対する放射線化学療法後に新たに進行肺腺癌に罹患した70代後半の患者さん。

 EGFR遺伝子変異陰性、ALK再構成陰性で、標準治療としてドセタキセル単剤療法を選択しました。

 ここまで③コース、G4の好中球減少等に見舞われながらもそれなりに効果が得られ、症状も緩和されています。

 しかし、先週末、突然の右上腹部痛で緊急入院されました。

 点滴と鎮痛薬で軽快しましたが、診断は胆石による疝痛発作。

 有症状の胆石は原則手術とされていますが、外科医に相談したところ、④コース目の化学療法を先行して行い、その有害事象から回復した段階で待機的に手術をする方針になりました。

 ③コースを終えて、今後もある程度治療効果が見込めるので「期待される生命予後が3ヶ月以上の患者」と判定して手術をお願いしたわけですが、この胆石疝痛発作が化学療法開始前に起こっていたら、そうは判定できなかったかもしれません。

 

 「期待される予後が3ヶ月以上の患者」

 いつまでたっても難しいテーマです。