2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

・90代の老親にたまたま肺の影が見つかったら

90代、神経痛で入院中の患者さん。 胸のレントゲン写真を撮影したらたまたま右肺に影が見つかりました。 CTを撮影したら、大血管に広く接した40mm大の腫瘤があり、明らかな胸膜巻き込み像を伴っていて、いかにも原発性肺腺がん、という印象です。 さあ、どう…

・これまたドライバー遺伝子変異陽性だったろうと思われる患者さん

こちらの方も、いかにもドライバー遺伝子変異が関わっていそうな患者さんです。 女性、非喫煙者、非常に悪性度の高い進展様式。 心嚢液や血液を用いた検索でも何か捕まえられたかもしれません。 嫁いできて40年。 イグサ農家は大変です。 そもそも、畳を敷…

・多分、ドライバー遺伝子変異陽性だっただろう20年前の患者さんの話

ここ1年くらいで、仕事がらみの断捨離を進めています。 若いころには、自分が経験した患者さんのことをのちに振り返れるようにと入院病歴要約を保管していましたが、完全にお蔵入りで全く手をつけませんでした。 紙媒体とはいえ、個人情報の塊が自分の手元…

・レントゲン撮影とCT撮影

数ヶ月にも及ぶ卒業試験を乗り越え。 国家試験をクリアして医師免許を取得し。 右も左もわからぬままに初期研修を終え。 そして、自分の臓器別専門分野として呼吸器内科を選んだのは。 こんなことを申し上げると怒られるかもしれませんが、一貫して消去法で…

・みんな、初診時の胸部レントゲン写真くらい、ちゃんと撮ろうよ

ここ数年というもの、ずっと感じていることがあります。 CTを撮影しても、胸部レントゲン写真を撮影しない医師が多くなりました。 別に、風邪をひいて受診した患者さん全員に胸部レントゲン写真を撮ろうと言っているわけではありません。 しかし、肺がんの疑…

・過去のレントゲンやCT写真

呼吸器内科医として診療していると 「患者さんの写真を撮ったら影があったので、見てもらえませんか」 と相談を受けることが多々あります。 異常を指摘された際の写真だけだと、いろいろな病気の可能性を考えます。 私はいつも 「無症状で肺にコインのような…

・J-SONIC試験・・・特発性肺線維症合併未治療進行非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+ナブパクリタキセル+ニンテダニブ併用療法

間質性肺炎合併肺がんは、早期であれ進行期であれ、難しいテーマの一つであり続けています。 周術期に急性増悪を起こし、肺がんではなく間質性肺炎の悪化のために死亡するリスクがあり、呼吸器外科医は二の足を踏んでしまいます。 放射線治療後の放射線肺臓…

・高齢者局所進行非小細胞肺がんに対するカルボプラチン併用根治的胸部照射+地固めデュルバルマブ

UFT内服による術後補助化学療法と同様に、高齢 / シスプラチン不耐の局所進行非小細胞肺がん患者さんに対する低用量連日カルボプラチン併用化学放射線療法も、我が国特有の「ガラパゴス的」治療かも知れません。 しかし、これは悪い意味ではなく、むしろ高齢…

・免疫チェックポイント阻害薬使用後の分子標的薬と有害事象

免疫チェックポイント阻害薬使用後に引き続いて分子標的治療薬を使うと高度の有害事象に見舞われやすいというのが通説です。 その嚆矢は、TATTON試験におけるデュルバルマブ治療後のオシメルチニブ治療の結果と考えていいでしょう。 大分での肺がん診療:Durv…

・オンコマインDxTTマルチCDx、コンパニオン診断にブリガチニブ追加承認

非小細胞肺がんのドライバー遺伝子変異を検出するマルチプレックス検査であるオンコマインDxTTマルチCDx、本検査でALK融合遺伝子陽性と判定されても、コンパニオン診断としてはクリゾチニブ、アレクチニブの使用根拠としてしか認められていませんでした。 20…

・Co-MET試験

肺がん領域でMETエクソン14スキップ変異が見いだされた当初、クリゾチニブが治療薬として有望視されていました。 しかし、クリゾチニブは複数の分子標的に有効な、裏を返せば個々の分子標的に対する治療効果がやや弱く、副作用は強く出やすいきらいがあり、…

・METエクソン14スキップ変異、キホンのキ

このところ、METエクソン14スキップ変異に関する記事を書くことが多くなりました。 2020年からテポチニブとカプマチニブが保険診療で使えるようになり、今後臨床の現場で診断される機会も多くなるでしょう。 METエクソン14スキップ変異に関する総説から、ポ…

・CSPOR-LC2調査の復習・・・EGFRチロシンキナーゼ阻害薬はいつ卒業すべきか?

一般に、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんの治療を考えるにあたり、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬を最大限使い、さらには化学療法も最大限行うことで、もっとも長生き効果が期待できるとされています。 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬は内服薬のため…

・METエクソン14スキップ変異に対するテポチニブ、日本人への効果は?

METエクソン14スキップ変異陽性の進行非小細胞肺がん患者さんに対するテポチニブの有効性・安全性を評価したVISION試験。 日本人患者さんに関するサブグループ解析の結果が公表されていました。 全体集団と比較して、 ・65-75歳の患者さんの層が厚く、やや…

・trastuzumab deruxtecanと薬剤性肺障害

HER2遺伝子変異陽性肺がんに対するtrastuzumab deruxtecanの有効性がDESTINY-Lung01試験で示され、以前記事にしました。 oitahaiganpractice.hatenablog.com 非常に有望な治療であることは論を俟ちませんが、trastuzumab deruxtecanはHER2に対するモノクロー…

・KEYNOTE-042試験 アジア人サブグループ5年追跡後評価

KEYNOTE-042試験の歴史的意義を簡単に言ってしまえば、PD-L1発現1%以上の患者さんにおけるペンブロリズマブ単剤療法の意義を確認しようとした試験です。 KEYNOTE-024試験において、既にPD-L1発現50%以上の患者さんでのペンブロリズマブ単剤療法の有効性が確…

・EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に耐性化した後のニボルマブ単剤療法

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の効果は期待できません。 大規模臨床試験のサブグループ解析結果や、小規模な臨床試験の結果から判断する限り、考慮すべき治療は以下の2つです。 ・カルボプラチン+パクリ…

・広い意味でのチーム医療

肺がん診療から少し話題が離れます。 私の今の職場では、過去の職場よりも遥かに他の職種のみなさんの力に頼ることが多いです。 医師になって3-4年目くらいまでは、担当患者さんの福祉関連業務や施設入居調整など、全部自分でしていました。 今ではかなり分…

・患者さんの理解度に合わせた、必要にして十分な病状説明と同意の取得

インフォームド・コンセント、インフォームド・アセントという言葉がありますね。 インフォームド・コンセントとは、「医療者による説明を十分に理解したうえで(インフォームド)、 患者さんが検査や治療の実施に自発的に同意する(コンセント)こと」だそう…

・IMpower150試験におけるEGFR遺伝子変異陽性サブグループ解析結果

TKI感受性EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん患者さんにとって、治療経過のどこかでオシメルチニブが使えなくなる、というのは現在の治療体系においては深刻な問題です。 教科書的には、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が使えなくなっても、化学療法を行え…

・ニボルマブ+プラチナ併用化学療法による術前治療:米国食品医薬品局が承認

完全切除可能非小細胞肺がんの治療成績向上を目指した手術前後の取り組みには、大きく分けて以下のようなものがあります。 1)術前薬物療法(NeoAdjuvant therapy) 2)術前化学放射線療法(Induction ChemoRadiotherapy) 3)術後薬物療法(Adjuvant the…

・ORCHARD試験のモジュール1、オシメルチニブ+savolitinib併用療法の中間解析結果

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対し、1次治療でオシメルチニブを使用し、病勢進行に至った後にどんな治療を行うべきか検証することを目指すORCHARD試験。 今回は、再生検でMET遺伝子異常が認められた患者さんを対象に、オシメルチニブ+savolitinib…

・未治療進行EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するオシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法

未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するエルロチニブと抗VEGF抗体の併用療法が、エルロチニブ単剤療法に対して無増悪生存期間を延長するというのは、ほぼ定説になったような感があります。 エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法しかり(JO15567試…

・悪性度の低い悪性腫瘍、悪性度の高い良性腫瘍

なんだかわけのわからないタイトルになってしまいました。 最近身の回りで起こった出来事から。 1)悪性度の低い悪性腫瘍(腺様嚢胞がん) 確定診断からゆうに5年以上経過する主気管支内悪性腫瘍の患者さんです。 紹介元で手厚い治療を受け、病状が安定した…

・日記を書きましょう

今日はライトな話題で。 私はもともと日記を書くのは苦手で、大学を卒業するまでまともに日記を書いたことがありませんでした。 続かないんです。 三日坊主を地で行っていました。 ブログを書くにしても話題や気分の浮き沈みがあり、毎日コンスタントに書く…

・CheckMate-227試験の3年追跡後アジア人サブグループ解析結果、論文化

CheckMate-227試験 3年経過後のアジア人および日本人サブグループ解析結果 CheckMate-227試験 日本人サブグループ解析結果 進行非小細胞肺がん患者さんを対象に、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法等の有効性と安全性を評価したCheckMate-227試験。 今となっ…

・ALK阻害薬とその耐性変化の相互関係

2021年日本肺癌学会総会でALK肺がんのセッションを聴講しました。 ALK肺がんの発見、治療開発の推移、耐性化の問題について広く論じられ、耐性化克服に向けた基礎研究について取り上げられていました。 がん研有明病院の先生から、ALK阻害薬耐性変異に対して…

・完全切除後病理病期IB期のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの術後補助治療としてオシメルチニブを使うか?

随分と長いタイトルになってしまいました。 2021年日本肺癌学会総会でこの件が取り上げられていましたので、復習しました。 そもそも、我が国における完全切除後病理病期I期というのは、2年間UFTを内服することにより5年無病生存割合80%、5年生存割合90%が期…

・第III相ADAURA試験・・・完全切除後IB-IIIA期EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するオシメルチニブ術後補助療法

ADAURA試験については、2020年の米国臨床腫瘍学会総会で結果が公表された際に一度取り上げました。 oitahaiganpractice.hatenablog.com その後、New England Journal of Medicine誌に論文報告されています。 詳細な内容に加え、各種図表もこちらから参照でき…

・METエクソン14スキップ変異治療後の耐性化、その傾向と対策

AmoyDx肺癌マルチパネルIVDが今後普及すると、診断率が高まると見込まれるMETエクソン14スキップ変異を有する非小細胞肺がん。 非小細胞肺がん全体の3%を占めるとされ、その頻度はEGFR、KRASの次くらい、ALKと同等くらいのイメージを持っておくといいのでは…