・METエクソン14スキップ変異に対するテポチニブ、日本人への効果は?

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 METエクソン14スキップ変異陽性の進行非小細胞肺がん患者さんに対するテポチニブの有効性・安全性を評価したVISION試験。

 日本人患者さんに関するサブグループ解析の結果が公表されていました。

 全体集団と比較して、

・65-75歳の患者さんの層が厚く、やや高齢

・男性の比率が高い

・テポチニブ開始前の段階で脳転移があった患者さんがやや少ない

・奏効割合が高い

・奏効持続期間が長い

・無増悪生存期間が長い

・生存期間はあまり変わらない

といった特徴があるようです。

 発表後の質疑応答において、

・日本人で奏効割合が高い、奏効持続期間が長い、無増悪生存期間が長いのは、浮腫対策を含めた副作用管理が行き届いているためではないか

・病勢進行に至った場合の経過は、他のドライバー遺伝子変異陽性肺がん治療中と大きな違いはない

とのコメントがありました。

 

 

 

Efficacy and intracranial activity of tepotinib in Japanese patients with MET exon 14 skipping (METex14) NSCLC (VISION)

 

M Morise et al., JSMO2022 Abst.#O13-4

 

背景:

 テポチニブは選択性の高いMET阻害薬で、非小細胞肺がん全体の3-4%を占めるとされるMETエクソン14スキップ変異陽性非小細胞肺がんに対して日本で薬事承認されている。この患者集団では、全体の20-40%が脳転移を伴い予後不良であるとされ、治療開発が待ち望まれている。テポチニブは脳血液関門を通過するとされており、MET肺がん動物モデルの頭蓋内病変に対して有効性が認められている。

 

方法:

 第II相VISION試験において、METエクソン14スキップ変異陽性非小細胞肺がんで構成されたコホートA+Cの患者集団を解析対象とした。MEエクソン14スキップ変異はリキッドバイオプシーもしくは組織生検でMETエクソン14スキップ変異が確認された患者を対象に、テポチニブ500mg/回を1日1回内服投与した。主要評価項目はRECIST1.1準拠での独立効果判定委員会評価による奏効割合とした。後付けの後方視的解析として、Response Assessment in Neuro-Oncology Brain Metastases (RANO-BM) クライテリアを用いて、脳転移巣についても評価した。

 

結果:

 2021年2月1日のデータカットオフ時点までで、3ヶ月以上の追跡期間を経たコホートA+コホートC患者、計275人が評価対象となった。49.1%が男性で、年齢中央値は73歳(41-94)、49.8%が治療歴なしだった。奏効割合49.1%(95%信頼区間43.0-55.2)、奏効持続期間中央値は13.8ヶ月(95%信頼区間9.9-19.4)、無増悪生存期間中央値10.8ヶ月(95%信頼区間8.5-12.4)、生存期間中央値19.7ヶ月(95%信頼区間15.6-22.1)だった。

 RECIST ver.1.1準拠の評価では、治療開始前に脳転移があった34人の患者において、奏効割合は58.8%(40.7-75.4)だった。日本人患者は38人を占め、68.4%が男性、年齢中央値は73歳(62-87)、47.3%が治療歴なしだった。奏効割合60.5%(95%信頼区間43.4-76.0)、奏効持続期間中央値18.5ヶ月(95%信頼区間8.3-未到達)、無増悪生存期間19.9ヶ月(95%信頼区間8.3-未到達)、生存期間中央値20.4ヶ月(95%信頼区間16.3-未到達)だった。コホートA(データカットオフ2020年7月1日)において、15人の患者が中枢神経系病変をRANO-BM基準に照らし合わせて評価可能だった。15人中12人は、過去に放射線治療を受けていた。測定可能病変を有する7人中5人で、測定可能病変のない8人中7人で頭蓋内病変のコントロールが得られた。

 

 

 

 

 

 関連記事です。

 METエクソン14スキップ変異陽性肺がんに対し、現在保険診療で使用可能なのはカプマチニブとテポチニブです。

 2019年の米国臨床腫瘍学会総会が大きな転換点になりました。

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 旧ブログではもう少し関連資料が充実しています。

大分での肺がん診療:METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib (junglekouen.com)

 

 METエクソン14スキップ変異陽性肺がんに対するテポチニブの有効性は第II相VISION試験で確認され、2020年に論文報告されており、同じ年から我が国でも保険診療で治療可能になりました。

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 我が国でテポチニブが使用可能になってから、もうすぐ2年が経過します。

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 VISION試験におけるアジア人サブグループ解析結果についての報告です。

 当時は無増悪生存期間のデータまでしかありませんでしたが、今回取り上げた学会報告では全生存期間のデータが出てきました。

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