2016-01-01から1年間の記事一覧

ALK肺癌の治療戦略

第57回日本肺癌学会より イブニングセミナー8 <ALK陽性肺癌の治療戦略−エビデンス、耐性機序、実地臨床> ・典型的な患者例提示 51歳女性 喫煙歴なし 倦怠感、咳、呼吸困難が2ヶ月間続いた 両肺に多発結節あり、胸水あり 脳転移あり ALK陽性腺癌と診断 初…

各種バイオマーカーについて

第57回日本肺癌学会総会より <肺癌薬物療法の実用的バイオマーカー> S10-1: <EGFR遺伝子変異陽性肺癌のバイオマーカー> ・minor mutation Kobayashi et al, Cancer Sci 2016 ・Exon 20挿入変異:T790M同様、EGFR阻害薬耐性あり →中にはEGFR阻害薬が効く…

アンコールセッション(SLCG0402とJ-ALEX)

第57回日本肺癌学会総会より <アンコール・セッション> ES-1: <SLCG-0401試験> ・病理病期IB-IIIA期の完全切除後非小細胞肺癌患者を対象とした術後補助化学療法の第III相試験 ・UFT群(U群)を標準治療群として、CBDCA+PTX療法群(C群)の優越性を検証…

EAST-LCとAURA3の日本人サブグループ解析

第57回日本肺癌学会総会より <Plenary session> PL-1: <EAST-LC(East Asia S-1 Trial ? Lung Cancer)> ・S-1 vs Docetaxel after platinum doublet, phase III study ・適格基準はPS 0-2, NSCLC, IIIB-IV期、前治療暦は2-3レジメンまで可(EGFR阻害薬…

医療経済から見た適正な肺がん診療

第57回日本肺癌学会総会から SP 1-1: ・Malone, J Clin Oncol 2016 医療経済についてのISPORからのステートメント 社会全体にとっての治療選択とは ・医師の難しい立ち位置 “double agent(二重の代理人)”, Blomqvist, 1991 受益者たる患者と、負担者たる…

免疫チェックポイント阻害薬に関連して

第57回日本肺癌学会総会より イブニングセミナー1:免疫チェックポイント阻害薬 ・CheckMate-017(扁平上皮癌)Nivolumabの奏効持続期間は25.2ヶ月 ・CheckMate-057(非扁平上皮癌)Nivolumabの奏効持続期間は17.2ヶ月 ・非扁平上皮癌に対するNivolumab療法…

EGFR遺伝子変異関連

第57回日本肺癌学会総会より O-1-36: <EGFR minor mutation> ・backgroundはLC-SCRUMに参加したEGFR mutation(-)の患者群 ・1,519人中56人(3.7%)でEGFR minor mutationを検出 ・Ex.20は24種のmutationを42人で検出し、もっとも頻度が高かった ・Afatini…

DNAチップ研究所

第57回日本肺癌学会総会より 学会最終日のランチョンセミナーだった。 発表後の質疑応答のときに、 「ALKやRETの異常もliquid biopsyで検出できる」 という驚きのコメントが飛び出した。 DNAチップ研究所ではそういったニーズに応えるべく、日夜研究を続けて…

第3世代EGFR阻害薬の四方山話

第57回日本肺癌学会総会より ランチョンセミナー1: New strategy for NSCLC harboring sensitive EGFR mutation ・T790Mについて Kobayashi, N Engl J Med 786-792, 2005 Yun, PNAS 2008 Sacher, Cancer 2014 ・第3世代EGFR阻害薬 Osimertinib(AstraZenek…

WHO分類2015施行から1年を経て

S3-1: The 2015 WHO Classification of Tumors of the Lung, Re-assessment after One Year of Practice. ・for resected lung cancers 1)Adenocarcinoma subtyping solid patterns micropapillary patterns Nitadori et al, JNCI 2013 Leeman et al, Int…

小細胞癌の治療について

第57回日本肺癌学会総会より S5-0: SCLC treatment strategy overview ・限局型小細胞癌 Pignon et al, N Engl J Med 327, 1618-1624, 1992 3年生存割合:化学放射線療法 14.3ヶ月、化学療法単独 8.9ヶ月 化学放射線療法では治療関連死も1%増える Takada et…

日本の実臨床におけるEGFR阻害薬の実情

第57回日本肺癌学会、1日目 O-1-38: A real world evidence of 1,660 Japanese patients with NSCLC harboring EGFR mutation ・2008年1月から2012年12月に初回治療が開始されたsEGFRm陽性NSCLC患者1,660人を対象に全生存期間を解析した ・第3世代EGFR阻害…

TNM病期分類第8版の要約

肺癌取り扱い規約第8版から、肺がん診療上もっとも影響が大きい病期分類について触れる。 前回、第6版から第7版に改訂されたときも困ったが、今回の第8版ではさらにややこしくなった。 どうややこしくなったか。 ・大前提として、スライス厚2mm以下の高分解…

肺癌取り扱い規約の改訂

先般、日本肺癌学会総会が福岡市で開催された。 3日間、ほぼ朝から晩までずーっと勉強だった。 レポート用紙が5-6冊、メモで埋まってしまった。 興味深い話題は様々あったが、肺癌に関わる全ての人に一番影響が大きいのは、肺癌取り扱い規約が改訂されたこと…

Osimertinib>platinum+pemetrexed for T790M

Osimertinibに関連して、ようやく真打のデータが出てきた。 一般にはAURA3と呼ばれている臨床試験、世界肺癌会議2016で公表され、同時に論文化された。 要約と、本文中の気になった部分を書き残す。 クロスオーバーが容認された試験のため、多分全生存期間で…

テレビの影響

いまさらだが、テレビというメディアの影響は大きい。 インターネット社会になり、「詳しくはネットで」といううたい文句が当たり前になった。 それでも、肺がんにかかる年齢層の大部分は、情報媒体としてはネットよりもテレビや書籍に頼ることが多いだろう…

肺癌患者におけるEGFR遺伝子変異検査の手引き

「肺癌患者におけるEGFR遺伝子変異検査の手引き」が2016年11月2日付で改訂された。 https://www.haigan.gr.jp/uploads/photos/1283.pdf 「手引き」と書くとマニュアルっぽくて面白くなさそうだが、EGFRの理解を深める読み物として読んだほうがいい。 とても…

Osimertinibの市販後副作用発生状況

Osimertinibの市販後副作用発生状況が公表されていた。 将来的にOsimertinibを使う可能性がある人は、できるだけニボルマブの使用を避けたほうがよさそうだ。 http://med2.astrazeneca.co.jp/safety/download/TAG16.pdf ・間質性肺疾患発症:88人 過去に間質…

がん治療革命

本日午後9時からのNHKスペシャル、「“がん治療革命”が始まった 〜プレシジョン・メディシンの衝撃〜」を視聴した。 http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20161120 家族に反対されるかと思いきや、幸いこの時間帯は競合する番組がなく、平…

Pembrolizumab+プラチナ併用化学療法

Pembrolizumabの国内承認の手続きが棚上げになっている。 まずはNivolumabの薬価の件を片付けてから手をつけようということだろうか。 今朝の日本経済新聞の朝刊の社説で、 「政府は、超高額の抗がん剤オプジーボの公定価格、緊急的な措置として来年2月から…

小細胞がんとipilimumab

今回取り上げる論文に対する論説には、 「ここ20年というもの、小細胞肺がんに対する新規医薬品の申請はなかった」 ととてもさびしいコメントが寄せられている。 このipilimumab併用療法の第III相臨床試験、CA184-156試験には日本からも参加者があった。 …

SCRUM-JAPANとNHKスペシャル

肺がん・消化器がんの網羅的遺伝子解析に関するNHKスペシャルが今週末に予定されています。 Check it out !! http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20161120

ニボルマブとCIMAVaxワクチン

肺がんを腫瘍ワクチンで治療しようという試みは、なかなか前進しない。 ずいぶん前の話になるが、ある先生ががんセンターに講演にお越しになった際、 「腫瘍ワクチンは、病巣の表面くらいにしか機能しない印象がある」 「進行期の患者に対する腫瘍縮小よりも…

電磁ナビゲーション気管支鏡システム・・・

最近よく話題として取り上げる再生検のみならず、そもそも気管支鏡手技自体、以前よりはるかに多くの手間をかけるようになった。 私が研修医だった世紀末の頃は、高解像度CTの黎明期で、肺がん診断のための気管支鏡前準備にはレントゲン断層撮影を用いていた…

進行非小細胞肺癌と局所制御

がんによっては、例え初診時に進行期であっても、標準治療として病巣を外科的に切除することがある。 精巣腫瘍、卵巣腫瘍、腎細胞癌といったところが代表的だろう。 volume reduction surgeryと言われることもあるが、まず腫瘍量を減らして、それから薬物療…

免疫チェックポイント阻害薬の投与、いつやめるべきか

先だって悪性黒色腫の症例が間質性肺炎を発症したという日記を書いたが、肺がん患者でも間質性肺炎を発症したという話は聞くし(残念ながら詳しい検査は行われずにステロイドが投与されたようだが)、そのほかにもブドウ膜炎、腸炎、胆管炎、甲状腺機能障害…

LUX-Lung 7の全生存期間解析

LUX-Lung 7試験に関連したweb講演会があったので、ちょっと顔を出してきた。 はっきり言って、混乱した。 LUX-Lung 7試験はsEGFRm陽性非小細胞肺がんに対して初回治療を行うに当たり、afatinibとgefitinibのどちらかを投与するランダム化第II相試験であった…

gefitinibの化学療法併用beyond PDは意味がない-IMPRESS study final

コンセプトが面白い臨床試験は、仮に残念な結果に終わったとしても、何がしかのインパクトを世の中に残していく。 IMPRESS試験も、そうした臨床試験に含まれる。 sEGFRm陽性の進行非小細胞肺がんに対して一次治療でgefitinibを投与し、病勢進行を迎えた後に…

FDAがPembrolizumab一次治療を承認

FDAが進行非小細胞肺がんの初回治療として、Pembrolizumabを承認した。 データ公表から承認まで、異例のスピードと言っていい。 ただし、以下の記事の最後に記されているように、対象となる患者は進行非小細胞肺がん患者のうちわずか10%と見積もられている。…

Nivolumabの憂鬱

2016年欧州臨床腫瘍学会の話題で、Pembrolizumabの一次治療の話題ばかり取り上げているが、CheckMate-026試験も別の意味で注目されている。 既にNivolumabが二次治療以降で臨床導入されている我が国では、Nivolumabがそのまま一次治療へupfrontに使えるよう…