2016-01-01から1年間の記事一覧

pembrolizumab一次治療に対するみんなのコメント

進行非小細胞肺がんに対する一次治療でpembrolizumabがプラチナ併用化学療法を凌駕したのはとてもインパクトが大きな出来事だが、実際に2016年欧州臨床腫瘍学会後はいろんな人がコメントを発している。 非小細胞肺がんの薬物療法の領域で、実地臨床に大きな…

FDAがatezolizumabを承認

周到な準備の下に、という印象だが、ESMO2016での発表に合わせて、FDAが既治療非小細胞肺がんに対する治療薬としてatezolizumabを承認した。 抗PD-L1抗体が承認されるのは初めての出来事である。 承認条件はニボルマブやペンブロリズマブを髣髴とさせる。 現…

KEYNOTE-024・・・恐るべき黒船、ペンブロリズマブ

1、2年前のこと、大分で行われた講演会の席上である先生が、 「もうプラチナ併用化学療法の時代は終わったかもしれない」 と話していた。 EGFR阻害薬に関する講演の席上だったので、確かにドライバー遺伝子変異を有する肺がんの患者さんではそういうことも…

既治療非小細胞肺がんへのS-1はドセタキセルに「劣らない」

今年の欧州臨床腫瘍学会は注目される発表が多かったようだが、まずは我が国の実地臨床へのインパクトが大きいものとして、あえてS-1を取り上げたい。 S-1は内服の殺細胞性抗腫瘍薬でありながら有効な薬であり、これまでは初回化学療法での治療開発が主だった…

もういっちょ定位照射

9月の下旬に以下リンクのような体幹部定位照射による成績向上の記事を書いたが、今回取り上げる報告の方が、より直接的で分かりやすい。 後方視的な検討とはいえ、早期肺がんに対する体幹部定位照射の位置づけはほぼ定まったといっていいのではないだろうか…

短期集中型・少分割胸部放射線照射

III期までは根治の可能性がある病態としてcurative intent(治癒を目指す)の治療を、IV期では治癒不能の病態としてpalliative intent(症状緩和・延命を目指す)の治療を提供するのが基本で、両者の間にはとても深い溝がある。 今回の報告では、病期II期も…

人種差なのか、人種差別なのか

病気の発症率や治療成功率には性差や人種差、そして国家間差や地域差がある。 病気そのものの性質にもよるだろうし、国家間、地域間の医療インフラの水準にもよるだろう。 たとえば、原発性肺腺癌におけるEGFR遺伝子変異陽性割合は、日本ではおしなべて30-40…

米国での定位体幹部放射線照射成績

現在私が勤務している病院では、合併症を多数抱えた超高齢者が次々に入院してくる。 ときどき70歳代の患者さんを担当すると、「若い」と感じる。 昨日も胸部多発浸潤影で相談された患者が91歳で、気管支鏡での精密検査をすべきかどうか、心底悩んでいる。 実…

進行非小細胞肺癌に対するニボルマブ単剤初回治療

第III相試験で優越性が否定されてしまった(http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e863977.html)今となっては後の祭りだが、2015年に発表されたニボルマブ単剤の進行非小細胞肺癌初回治療の第I相試験結果が論文化された。そうは言いながらも改めて結果…

ニボルマブ+プラチナ+α併用化学療法

2014年の米国臨床腫瘍学会や欧州臨床腫瘍学会で報告された、進行非小細胞肺癌初回治療におけるニボルマブの第I相試験の結果が論文化された。 既に臨床導入されている二次治療でのニボルマブ単剤療法とは異なり、3週間に1回の投与を継続する、という治療スケ…

全脳照射はなくてもいい?

2016年9月5日、下記の報告が欧州呼吸器学会の年次集会で発表され、同時にLancet誌に掲載された。 非小細胞肺癌に合併した脳転移に対する全脳照射は広く普及しているものの、エビデンスは乏しい。全脳照射に関するランダム化比較試験は、1971年に論文化された…

ザーコリの適応疾患として「ROS1陽性肺癌」を追加申請

2016年8月31日付で、ファイザー社はザーコリの適応疾患として「ROS1陽性肺癌」を追加する申請を行ったようです。 以下のプレスリリースに詳細が記載されています。 http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2016/2016_08_31.html 問題は、ROS1陽性肺癌…

Atezolizumabもやってきた

2016年8月31日付で、Genentech社のAtezolizumabに関するプレスリリースがあった模様です。 プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った非小細胞肺癌の患者さんを対象に、タキソテールとの比較第III相試験で全生存期間を有意に改善したということですから、位…

ガイドラインの内容は企業献金で左右される?

高頻度に更新され、我々の業界でもしばしば引用されるガイドラインとして、米国のNCCNガイドラインが知られています。 ASCOやESMOのガイドラインと比較して、 「商業的な影響を受けやすいガイドライン」 とも言われますが、それを裏付けるような論文が一昨日…

尿によるリキッド・バイオプシー

Care Netの記事を眺めていたら、標記の件が記載されていたので、内容を要約して取り上げてみました。 尿で遺伝子変異検査ができると、患者さんは楽ですね。 血中や尿中に腫瘍DNAが漏出するとなると、それなりに進行した患者さんでないと検出できないかもしれ…

都道府県別肺がん罹患率

2016年6月、国立がん研究センターによりまとめられた都道府県別肺がん罹患率がお盆中の日本経済新聞に載っていたので抜粋します。 2012年の地域がん登録データをベースとしたものです。 ちなみに、肺がん死亡率は男女ともに北海道が1位なのだそうです。 2013…

メンテナンス

このところ、本ブログが単なる備忘録になってしまった感があるので、過去の記事のメンテナンスを行います。 ご了承ください。

成人男性の喫煙割合、初めて30%をきる

2016年7月28日、日本たばこ産業(JT)は、2016年の「全国たばこ喫煙者率調査」の結果を発表しました。 ・たばこを吸う成人の割合:19.3% ・たばこを吸う成人男性の割合:29.7% ・たばこを吸う成人女性の割合:9.7% 国内たばこ販売本数 1793億本(2014年度) …

ヤーボイ上乗せは小細胞癌には効かず

進展型小細胞肺癌に対するプラチナ製剤+エトポシド+ヤーボイ併用化学療法の第III相臨床試験で、生存期間延長効果なし By Matthew Stenger Posted: 8/5/2016 10:09:53 AM Last Updated: 8/5/2016 10:09:53 AM Martin Reckらは、進展型小細胞癌の初回化学療…

オプジーボ初回治療はプラチナ併用化学療法を凌駕できず:CheckMate-026

CheckMate-026試験において、オプジーボはプラチナ併用化学療法を凌駕出来なかったと、Bristol-Meyers Squibb社が2016年8月5日付でプレスリリースしました。 かたや、類似薬のキートルーダに関するKEYNOTE-024試験では、明らかにプラチナ併用化学療法を凌駕…

PETでドライバー遺伝子変異がわかる?

我々の間では再生検の話が盛り上がっています。 再生検によって次の治療への糸口をつかみたい、という患者さん・ご家族・医療者の切なる思いがこれを後押ししていますし、実際に再生検のメリットを享受している患者さんが、身近なところで当たり前に出てきて…

日本臨床腫瘍学会1日目 午後の部その3

■ ISY-8-1:Afatinib vs Gefitinib as 1st line treatment of patients with EGFR mutation positie NSCLC(LUX-Lung 7) ・Afatinib, pan-HER inhibitor ・Dacomitinib ARCHER 1009 and 1026 pooled analysis 無増悪生存期間中央値:Dacomitinib 14.6ヶ月、…

日本臨床腫瘍学会総会1日目 午後の部その2

■ EJ-3:How should we use ALK inhibitors separately? ・ASP3026:development stopped. ・AF-001JP study 奏効割合94%、無増悪生存期間中央値は3年経過観察後も未到達 ・J-ALEX study, 第III相試験 用量は300mg/日、有効中止で終了 ・ALEX study, 第III相…

日本臨床腫瘍学会総会1日目 午後の部その1

■ EJ-1: Optimizing EGFR targeted therapies ・EGFR-TKIに関連した重要な臨床試験群 WJTOG3405 NEJ002 EURTAC OPTIMAL LUX-Lung 3 LUX-Lung 6 ・LUX-Lung 7: ジオトリフ vs イレッサ for sEGFRm(+) NSCLC 一次治療 ESMO Asia 2015, Lancet Oncol 2016 奏効…

日本臨床腫瘍学会総会1日目 ISY-7 VEGFとrare driver oncogeneについて

2016年 第14回日本臨床腫瘍学会 2016/7/28 <International Symposium 7>ALK阻害薬とその他の分子標的薬、つづき ■ ISY-7-3 VEGF inhibitors ・血管新生とがん Hallmarks of Cancer, Hanahan, Weinberg et al, Cell 2011 http://www.cell.com/cell/pdf/S009…

日本臨床腫瘍学会総会1日目 ISY-7 ALKについて

2016年 第14回日本臨床腫瘍学会 in Kobe 1日目 2016/7/28 <International Symposium 7>ALK阻害薬とその他の分子標的薬 とりあえず、ALKに関連した前半部分を記します。 ■ ISY-7-1 Alectinib vs Crizotinib 遅刻してちょっとしか聞けませんでした。 たぶんJ…

日本人の平均寿命2015

日本人の平均寿命が過去最高を更新したようです。 男性は約81歳、女性は約87歳です。 しかしながら、どちらも世界一ではありません。 世界一は男女ともに香港です。 平均寿命の定義は、死亡率が今後ずっと変わらないとの仮定のもと、その年に生まれた0歳児が…

オプジーボ、適正使用と価格改定の議論開始

オプジーボと、脂質異常症治療薬のレパーサについて、適正使用ガイドラインの策定と価格改定について、議論が始まるようです。 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000131476.pdf http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingik…

もう一度、日本肺癌学会ワークショップのおさらい

知人の先生から頂いたメモをもとに、もう一度ワークショップのおさらいです。 まとめるのにやたら時間がかかってしまいました。 第31回日本肺癌学会ワークショップ 2016.7.2 分子標的治療の新たな展望 <EGFR-TKIの歴史と新たな展望> 歴史と6つの教訓 ?すべ…

déjà vu

2002年の夏、イレッサによる間質性肺炎で緊急安全性情報が発出されたころを思い出します。 医療者の知識とモラルが改善しないと歴史は繰り返す、ということなのでしょうね。 大腸がんの領域では、一般には有効性が乏しいものの、micro-satellite instability…