日本臨床腫瘍学会総会1日目 ISY-7 VEGFとrare driver oncogeneについて

2016年 第14回日本臨床腫瘍学会 2016/7/28

<International Symposium 7>ALK阻害薬とその他の分子標的薬、つづき

■ ISY-7-3 VEGF inhibitors

・血管新生とがん

 Hallmarks of Cancer, Hanahan, Weinberg et al, Cell 2011

 http://www.cell.com/cell/pdf/S0092-8674(11)00127-9.pdf

 Singhal et al, Clin Cancer Res 2005

 http://clincancerres.aacrjournals.org/content/11/11/3974.full-text.pdf

・アバスチン

 BEYOND study, Zhou et al, J Clin Oncol 2015

 http://jco.ascopubs.org/content/33/19/2197.full.pdf+html

 中国で行われた臨床試験で、ECOG4599の結果を再現

 一次治療としてのカルボプラチン+タキソール+アバスチンの地位は確立

・サイラムザ

 ヒト化IgG1クラス抗VEGFR2モノクローナル抗体

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e738312.html

 二次治療における血管新生阻害薬の上乗せ効果を示した点で意義がある

 実地臨床においてどういったsettingで使用するかはなかなか難しい問題

・オフェブ

 わが国では、特発性肺線維症に対しては既に臨床導入されている

 ただし、肺癌に対しては全く見通しが立っていない

 LUME-Lung 1 study

 http://oitahaiganpractice.blog.fc2.com/blog-entry-44.html

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/d2014-11-16.html

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e843642.html

 http://www.ejcancer.com/article/S0959-8049(14)01139-3/pdf

 腺癌に対象を絞って、二次治療におけるオフェブ+タキソテールの有効性を検証することを目的としたLUME-Columbus studyは患者集積不良を理由に中止されています。同様のsettingで競合する臨床試験が多い(ICIsなどでしょうね)ことが直接の理由だったようで、サイラムザもあと少し開発が遅れていたらきっと同じような運命をたどっていたでしょうね。

 http://trials.boehringer-ingelheim.com/content/dam/internet/opu/clinicaltrial/com_EN/results/1199/1199.128_Statement_DR.pdf#search='LUME+columbus'

・VEGF阻害薬は、T790Mによる耐性出現を遅らせるかもしれない

 Ichihara et al, Clin Cancer Res 2009

・タルセバ+アバスチン併用療法、JO25567試験

 出血性合併症は併用群で72%(Grade 3以上は3%)、タルセバ群で29%

・免疫チェックポイント阻害薬とVEGF阻害薬の併用療法

 VEGFは樹状細胞、CD8陽性リンパ球を抑制し、制御性T細胞を活性化する

・サイラムザ+Durvalumabの第I相試験

 胃癌、噴門部腺癌、非小細胞肺癌、肝細胞癌が対象

・アバスチンの効果予測因子:ABIGAIL study, Mok et al, J Thorac Oncol 2014

 治療開始前のVEGF-Aが低値だと、無増悪生存期間と全生存期間が延長する

■ ISY-7-4 LC-SCRUM and clinical trial with rare driver oncogene

・もともとLC-SCRUMはRET, ROS1, ALKの3種を公的資金を用いてSRLに外注してスクリーニングし、見つかった患者さんを臨床試験に橋渡しするのが目的だった

・RETr患者さんを対象にカプレルサの有効性を検証したLURET試験は、2013年2月から患者募集を開始、目標患者数は17人だったが、2016年のASCOで19人まで追加して発表することができた

・LC-SCRUMのライバルはNCI-MATCH

・LC-SCRUMでは、2016年6月30日までに2355人のsEGFRm(-)の非小細胞・非扁平上皮肺癌患者を対象に解析を行った

・RETrは3%(腺癌98%, 非喫煙者56%)、ROS1rは4%(腺癌97%, 非喫煙者47%)、ALKrは2%(腺癌94%, 非喫煙者42%)、その他は91%

・LURET studyは奏効割合53%、無増悪生存期間中央値4.7ヶ月、1年生存割合49.7%、KIF5B-RETrでは奏効割合20%、CCDC6-RETrでは奏効割合83%

 Seto et al, ASCO 2016 #9012

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e855792.html

・spider plotを見る限り、解析時点ではCCDC6-RETr患者群は全て治療開始前より縮小した状態を保っていた(病勢コントロール割合100%)

・韓国でもLURET studyと同様のsettingでカプレルサを使用した臨床試験が報告されていた

 Lee et al, ASCO 2016 #9013

・315人をスクリーニングし、26人(8%)がRETr陽性だったとのこと

→ちょっと多すぎるんじゃないか?

 奏効割合17%、無増悪生存期間中央値 4.54ヶ月

・東アジアのROS1陽性肺癌患者さんにザーコリを使用する第II相試験

 Goto et al, ASCO 2016 #9022

 127人が参加(日本人26人、中国人74人、その他27人)

 完全奏効14人、部分奏効74人、病勢安定19人、病勢進行7人、奏効割合69.3%

 多分来年中には、ROS1陽性肺癌にザーコリの適応症が拡大されるだろう

・BRAF V600E 遺伝子変異陽性肺癌に対するDabrafenib+Trametinib

 Planchard et al, Lancet Oncol 2016

 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27283860

 奏効割合63.2%