2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

・マルチプレックス変異検索・・・オンコマインDxとAmoyDx、どちらを選ぶ?

初回診断時から複数の肺癌ドライバー遺伝子変異を同時に調べることができるマルチプレックス変異検索検査として、オンコマインDxターゲットテストマルチCDxに加え、AmoyDx肺癌マルチパネルIVDが利用可能になりました。 オンコマインDx Target TestマルチCDx …

・オリゴ転移巣を有する非小細胞肺がんに対する局所治療後のペンブロリズマブ単剤療法

2021年日本肺癌学会総会の講演で取り上げられていた報告について、要約だけ読んでみました。 オリゴ転移巣に対する局所治療には、手術も放射線治療も含まれます。 相乗効果を期待するのならば、手術よりも放射線治療を優先して、がん特異抗原の流出を誘発し…

・次の肺がん病期分類

2021年の日本肺癌学会総会で、次の肺がん病期分類に向けた取り組みについての講演があり、少しだけ拝聴しました。 おおむね次のようなことが語られていました。 今後は、単に解剖学的な分類に留まらず、薬物療法の効果予測に役立つようなバイオマーカーに関…

・台湾女性における肺がんCT検診と過剰診断

我が国の成人女性の喫煙率は、2018年のデータで8.7%とされています。 1966年には18%だったので、約50年で半減しています。 おとなりの台湾では、成人女性の喫煙率は5%未満とさらに低いんだそうです。 約20年前の報告では、肺がん男性の85%、肺がん女性の…

・過剰診断・見落とし・AI診断について復習

2022/02/25に、台湾女性における肺がんCT検診についての話題に触れる予定です。 その前に、2019/11/16に開催された肺がんCT検診認定機構の講習会スライドを復習します。 健康診断と一般診療のちがいについて。 一般診療では、症状がある人を正しく診断し、正…

・肺がんと過剰診断

N-NOSE。 線虫を使って、15種類のがんを早期発見する技術の商業運用が始まりましたね。 線虫が、尿に含まれるがん患者特有の物質をかぎ分けるそうです。 N-NOSE(エヌノーズ) | 尿1滴でわかる!線虫がん検査 N-NOSE® 陽性なら、とりあえずどれかのがんであ…

・IMpower010試験 アジア人サブグループ解析結果

2022年日本臨床腫瘍学会総会で、IMpower010試験のアジア人サブグループ解析結果が報告されていました。 IB期は術後2年間UFT内服のままでよしとして、II-IIIA期をどのように扱うかですね。 アテゾリズマブ地固め療法を行うにあたり、全てのII-IIIA期の患者さ…

・有害事象による治療中止と、その後の治療再開

分子標的薬や抗体医薬、免疫チェックポイント阻害薬が出てきてからというもの、薬物療法のスケジュールの考え方が大きく変わりました。 いわゆる抗がん薬を用いた薬物療法で、治療中止を要する有害事象に見舞われると、本来の治療予定日から2週間経過しても…

・IMpower010試験・・・術後補助化学療法におけるアテゾリズマブ

2021年に報告された大規模臨床試験結果の中でも大きな話題となったIMpower010試験です。 2020年のADAURA試験、2021年のIMpower010試験と、対象患者さんや治療コンセプトは異なるものの、新型コロナウイルス感染症の世界的流行とともに、肺がんの世界では術後…

・進行肺扁平上皮がんにおけるシスプラチン+ジェムシタビン+ネシツムマブ併用療法

ネシツムマブ。 今回(2022年)の日本臨床腫瘍学会総会で耳にするまでの長い間、その存在すら忘れていました。 というのも、第III相臨床試験で有効性が確認されてはいたものの、毎年のように華々しく取り上げられた免疫チェックポイント阻害薬の陰にすっかり…

・進行肺扁平上皮がんでは、二次治療以降でニボルマブにイピリムマブを上乗せする意義はない

CheckMate-227試験の結果を受けて、PD-L1発現の有無に拠らず進行非小細胞肺がんの初回治療として、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が標準治療の一つとなりました。 今回紹介する第III相臨床試験は、それでは進行肺扁平上皮癌の二次治療以降において、初回…

・新型コロナウイルスワクチン接種に関するがん関連3学会合同Q&A

標記の件について、日本臨床腫瘍学会からお知らせが来ていました。 「原則、接種」 と考えて良さそうです。 詳細は以下のリンクからご参照ください。 新型コロナウイルス感染症 関連情報 | お知らせ | 日本臨床腫瘍学会 (jsmo.or.jp)

・第III相CheckMate743試験3年追跡データ・・・切除不能悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法

切除不能悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性を検討した第III相CheckMate743試験のことは、以下の記事で触れたことがあります。 ・悪性胸膜中皮腫とニボルマブ+イピリムマブ併用療法 - 大分で肺癌診療 (hatenablog.com) 今回、…

・肺がんCT検診は誰にでも勧められるか?

知り合いから、そろそろいい年頃なので肺がん検診を自主的に始めようと思ってるんだけど、どんなスケジュールでやるといいでしょうか、と相談を受けました。 難しい質問です。 肺がんCT検診については、以下のガイドラインがあります。 日本における低線量 C…

・抗がん薬治療中のB型肝炎ウイルスとの付き合い方

B型肝炎ウイルスのスクリーニング検査として頻用されるHBs抗原検索では、その陽性例でステロイドの投与や化学療法により、B型肝炎ウイルスの急激な増殖(再活性化)が起こり、致死的な重症肝炎に至ることが報告されています。 HBs抗原陰性であっても、HBc抗…

・PACIFIC試験の5年追跡結果・・・局所進行非小細胞肺がん治療の新たなベンチマーク

局所進行非小細胞肺がんの治療にデュルバルマブが使われるようになる前は、この病態に対して標準治療をした際の5年生存割合はざっと20-25%でした。 これをもとに、治療前の患者さん・ご家族に説明をする際には、 「4-5人に1人は5年以上長生きできます」 と説…

・限局型肺小細胞がんにおける海馬回避予防的全脳照射

海馬回避全脳照射については、以前触れたことがあります。 ・全脳照射の時、海馬を避けることに意味はあるのか →http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e971509.html 一般向けの教養書でも海馬と記憶の関係はしばしば触れられています。 アルツハイマー…

・病勢進行後の治療をどう考えるか

肺がんの治療が多様化し、治療の考え方はとても複雑になりました。 「病勢進行」後の治療をどう考えるかについて、散文的にはなるが書き記します。 1)「病勢進行」をどうとらえるか 病勢進行の定義をRECIST効果判定の考え方に沿って端的に書き下すなら、「…

・間質性肺炎合併患者に対する定位放射線照射

大分県は、定位放射線照射を行う環境に恵まれています。 定型的な定位放射線照射が可能な施設が複数ある上に、サイバーナイフを利用した高精度の定位照射も可能です。 大分サイバーナイフがん治療センター (keiwakai.oita.jp) 定位照射を受けた肺がん患者さ…

・抗がん薬治療中の植物との付き合い方

私も年を取ったのか、はたまた新型コロナウイルス感染症の流行により引きこもり生活が長くなったためか、植物と仲良くすることが多くなりました。 小さな植木鉢を買ってきて、ヤマボウシやイロハモミジの種を拾ってきて植えて、小さな苗を日々可愛がっていま…

・肺がんと診断されてから禁煙することに意味はあるのか?

先日、治療はおろか診断に必要な検査も拒んだ肺がん疑いの90代の患者さんが、静かに息を引き取りました。 高度の喫煙歴があったこと、肺気腫と間質性肺炎を合併していたこと、腫瘍マーカーのSCCが上昇していたことから、原発性肺扁平上皮がんだったのだろう…

・抗がん薬治療における刺身・鮨との付き合い方

抗がん薬治療中は様々なストレスがつきものだが、食事は忘れてはならない重要な要素です。 骨髄抑制が起こっている間は、基本的に生ものはNGと患者さんに話しています。 ちょうど骨髄抑制がピークを迎えている頃、よせばいいのに鮨を食べて、急性腸炎を起こ…

・歯の手入れ

肺がんのみならず、がん治療と並行して歯の手入れを行うことの大切さは今更いうまでもありません。 とはいえ、私自身きちんとした歯の手入れを身に着けるまでに、何十年もかかりました。 いまが完成形かどうかは分かりませんが、一例として参考にしていただ…

・EGFR遺伝子変異陽性肺がんの脳転移巣に対して、分子標的薬と放射線治療をどう組み合わせるか?

脳転移を有するEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんに対し、放射線治療とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬のどちらを先行するのが望ましいのか、を検証した後方視的研究に関する報告です。 あくまで後方視的研究であることは踏まえておかなければなりま…

・第II相OCEAN試験 放射線治療歴のない脳転移巣があるEGFR肺癌において、脳転移巣に対するオシメルチニブの病巣縮小効果は?

ドライバー遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんと診断され、脳転移を合併した患者さんに対して、分子標的薬による治療を先行させ、治療反応を見てから脳転移巣への放射線治療を行うか否かを検討する、というアプローチは、最近ではよく行われるようになりま…

・新型コロナウイルス感染症にかかったあと、ロナプリーブやゼビュディをつかったあとも、ワクチンを接種すべきか?

これは2020年4月某日の新型コロナウイルス国内新規感染者数の都道府県別状況です。 2022年2月現在と比較して、感染者数だけ見れば20分の1以下の水準ですが、緊急事態宣言発出前夜の雰囲気が見て取れます。 私も、ささやかながら新型コロナウイ…

・しゃっくり(吃逆)と柿のへた

当直勤務していたら、脳梗塞後の患者さんが嘔吐しているので診てほしいと依頼され、ベッドサイドに行ってみました。 患者さんはほぼうつぶせになって、緑色の吐物を断続的に吐いておられます。 便秘がひどくなるといつもこうなり、自然に収まるまではそうし…

・ソトラシブがやってくる

KRAS G12C変異を有する進行非小細胞肺がんに対して有効とされるソトラシブ、2022年1月20日付で、我が国における製造販売承認を取得したようです。 LC-SCRUMのデータでは、KRAS遺伝子変異は参加登録者の14%に認められ、そのうち30%がG12C変異だったとのことで…

・たばこと泌尿器系のがん

折に触れてたばことがんの関係に触れています。 最近、関わった患者さんが泌尿器系のがんに見舞われることが相次ぎました。 ひとりは外来かかりつけの患者さんです。 膀胱がん手術の既往がある間質性肺炎の患者さんで、これだけで喫煙経験者とほぼ断定できま…