2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

肺がん周術期の薬物療法

2019年日本臨床腫瘍学会、備忘録。 ・EVAN試験:N1-N2の患者が対象で、N2は全体の64% ・ADJUVANT(CTONG1103試験) Lancet oncol. 2018, 139-148 ・LACEのメタアナリシス J Clin Oncol 3552-, 2008 ハザード比は0.89にとどまる ・ECOG1505:ASCO2015 術後化…

免疫チェックポイント阻害薬への失望・・・治療標的なし、個別化医療でもなし

これも2019年の日本臨床腫瘍学会総会から。 ユニークな視点の発表だ。 そして、ところどころ頷ける。 ・ASCO2019、Abst.#9013 KEYNOTE-189試験におけるPFS2(無作為割付から二次治療後の病勢進行までの期間)は、PD-L1発現の多寡によらず、すべての患者にお…

・免疫チェックポイント阻害薬時代の肺がん長期生存

2019年の日本臨床腫瘍学会の備忘録です。 まとめ切れていなかったノートを発掘しました。 箇条書きで書き残します。 ・ECOG1594試験:Schiller et al., N Engl J Med 2002 プラチナ製剤+(1990年代の)新規抗がん薬併用化学療法の意義づけとなった、記念碑…

・虫歯や歯周病と肺がん

上に掲げたのは、何を隠そう私の智歯(親知らず)です。 向かって左は右上顎の智歯、向かって右は右下顎の智歯です。 どちらも傷んでいますが、ことに右下顎の智歯を見ると今でもゾッとします。 半周くらいまっくろけで、ひどい齲歯だったことが分かります。…

浸潤型粘液産生性腺がんは、PET陰性だったっけ?

Invsive Mucinous Adenocarcinoma(IMA). 日本語に直せば、「浸潤型粘液産生性腺がん」といったところか。 ある程度以上の年代の医師には、この呼称よりも、いわゆる野口分類における"mucinous BAC"の方が馴染み深いだろう。 過去に経験した中から、典型的…

電子たばこと肺障害(EVALI)

電子たばこと肺障害の話題は、昨年(2019年)ごろから取り沙汰されるようになった。 米国では規制の対象となっているようだが、我が国ではそうした動きはまだ見られない。 New England Jourlal of Medicineに関連記事が載っていたので、軽く目を通してみた。…

スタッフが流す涙

先日、「がんと老衰」という記事を書いた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e968813.html 2件目に扱った90歳過ぎの女性も、結局この記事を書いた翌日に永眠された。 例によって、私と看護スタッフ、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーが…

ECOG-ACRIN 5508試験・・・COMPASS試験と絡めて

COMPASS試験の企画立案時、本試験がしばしば引き合いに出されていた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e969044.html 個人的には、きつい末梢神経障害に悩まされるパクリタキセルを含むECOG-ACRIN 5508レジメンは、好きじゃない。 少なくとも、自…

COMPASS試験

COMPASS試験。 結果的にnegative trialになってしまったが、カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ併用療法⇒ペメトレキセド+ベバシズマブ維持療法を、日本人・未治療進行非扁平上皮非小細胞肺がん・ベバシズマブ使用可能・EGFR遺伝子変異陰性の患者…

KEYNOTE-604試験・・・どう受け止めるか

進展型小細胞肺がんの領域に、アテゾリズマブだけでなくペンブロリズマブも分け入ってきた。 本当にこの2つの薬は競合する。 既に実地臨床で使われているアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド併用療法は、IMpower133試験の結果に基づいている。 http…

高齢進行非小細胞肺癌の治療に関する、セカンドオピニオン・・・?

コメント欄で、相談を受けた。 患者さん、ご家族からのセカンドオピニオンだったらこの場ではお引き受けしないのだが、今回はどうも若手の先生からのご様子。 こんなのもセカンドオピニオンというんだろうか。 少しでもお力になれれば、この先生のモチベーシ…

・METエクソン14スキップ変異に対する治療開発のその後・・・カプマチニブとテポチニブ

METエクソン14スキッピング変異にクリゾチニブが効く、という話題を初めて取り上げたのは2017年でした。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e888165.html 2019年の米国臨床腫瘍学会総会で、ほかにもカプマチニブやテポチニブが効く、という発表があ…

セカンドオピニオン・個別相談に関する告知事項

先ほど、セカンドオピニオン・個別相談に関するご相談を、スマートフォン・携帯電話からのメールで頂きました。 お答えしたいのですが、パソコンからではお返事ができません。 エラーで帰ってきてしまいます。 スマートフォン・携帯電話からメールでご連絡を…

免疫チェックポイント阻害薬後の丸山ワクチン

今日のお昼過ぎ、病棟カンファレンスをしていたら、近郊の中核医療機関の呼吸器内科医からご連絡をいただいた。 進行期原発性肺がんに対して、初回治療でペンブロリズマブを使っていたが病勢進行に至り、次の治療を考えているところ。 患者さんから丸山ワク…

・KRAS遺伝子変異とペンブロリズマブのいい関係

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のImmuno-Oncology Congress 2019で、以下のようにKRAS遺伝子変異とペンブロリズマブの治療効果の相関関係が報告されていたようです。 「PD-L1は治療効果予測因子として不十分」 だの、 「TMB(tumor mutation burden, がん細胞がど…

歴史は勝者によって作られる・・・闇に葬られる臨床試験

私が臨床試験の英語論文に目を通し始めた2,000年代初頭に比べると、肺がん領域の臨床試験デザインや結果報告には、かなり製薬企業の思惑が反映されるようになった気がする。 折に触れて繰り返しているが、臨床試験の結果を学習するのは当たり前で、結果がど…

第II相試験において、メトホルミンがEGFR阻害薬の治療効果を増強

安価で、おそらく世界中のどこでも手に入る2型糖尿病治療薬、メトホルミン。 ほかの分野で汎用されているこうした薬を、抗がん治療と組み合わせる試みは、以前からいくつも試されてきた。 そして、ことごとくその効果が否定されてきた。 最近、急性心筋梗塞…

"uncommon / マイナー"なEGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するオシメルチニブの効果

オシメルチニブは他のEGFR阻害薬と比較して、野生型EGFRへの親和性が低く、変異型EGFRへの親和性が高い(一言でいえば、変異型EGFRへの選択性が高い)ことから、Exon 19やExon 21、T790M以外の変異タイプ(いわゆるuncommon mutation、言い換えればマイナー…

正月をどこで迎えるかということ

2,020年がやってきた。 この年末年始は、2人の肺がん患者が入院したまま年越しをした。 終末期を間近に控えた肺がん患者が年末年始を迎えたとき、私はいつも決まり文句のように、 「この年末年始が最後になると思います」 「ご自宅で過ごせるように、みんな…

セカンドオピニオン・個別相談開始

節目の年を迎え、今年からセカンドオピニオン・個別相談の対応を再開することにした。 冷やかしを排除するとともに、私・相談者ともに節度を持って臨むために有料化することにした。 また、個人情報保護のため、重要な情報のやり取りには郵便サービスを用い…