浸潤型粘液産生性腺がんは、PET陰性だったっけ?

 Invsive Mucinous Adenocarcinoma(IMA).  日本語に直せば、「浸潤型粘液産生性腺がん」といったところか。  ある程度以上の年代の医師には、この呼称よりも、いわゆる野口分類における"mucinous BAC"の方が馴染み深いだろう。  過去に経験した中から、典型的なレントゲン、CT、切除肺の肉眼像、切除肺の顕微鏡像を示す。  レントゲンでは、一見右中下肺野の肺炎のように見える。  CTでも、右下葉の大葉性肺炎と言われれば、そう見える。  そう考えて抗生物質で治療してもよくならない、というのがミソ。  苦しまぎれにステロイドを使ってみても、やっぱりよくならない。  原因がわからないからということで生検をして初めて診断がついて、運よく切除できた肺をスライスすると、こんな感じ。  中ほどから左側、透明感があってコラーゲンを豊富に含んだように見えるプルンプルンしているところが、肺がんの病巣。  プルンプルンしているところには豊富な粘液が含まれている(コラーゲンではない)。    顕微鏡で見れば、こんな感じである。  肺胞上皮を置換するように進展・増殖する腺癌の中でも、杯細胞様の腫瘍細胞が豊富な粘液を伴いながら増殖していく。  これと同じような病歴、画像経過を示す患者が、最近いた。  残念ながら既に両肺にわたって影が広がっていて、高度の呼吸不全を伴っていた。  進行期で、これから緩和医療に向かう。  PETを撮影したところ、両肺にまたがる病巣において、ほとんどは淡い集積しか示していなかった。  一方で、同じinvasive mucinous adenocarcinomaと気管支鏡診断した患者のPETを示す。  恐ろしいことに、病巣への集積は極めて淡く、良性と判断されかねない。  この方は確定診断してからPETを撮影したのでそうは診断されなかったが、果たして未確診の状態で検査をしても肺がんと診断されたかどうか。    PET陰性でも肺がんでないとは言いきれない典型例だ。