2019-01-01から1年間の記事一覧

臨床試験と実地臨床

2019年の終わりに寄せて。 近年は、第III相臨床試験、それも実地臨床の内容を変えるような臨床試験の結果が頻繁に報告されるようになった。 新しい小分子化合物の分子標的薬や抗体医薬、免疫チェックポイント阻害薬が世に出てから一定期間が立ったことが一つ…

JCOG0707・・・日本人完全切除後リンパ節転移陰性非小細胞肺がんにはやっぱりUFT

リンパ節転移陰性完全切除後非小細胞肺がん患者に対する術後補助化学療法。 我が国が完全にガラパゴス化した領域ではあるが、それだけに誇らしい面もある。 結局、TS-1がUFTを凌駕することはもはやないといってよさそうだが、もっと意義深い知見が本試験から…

CASPIAN試験・・・アテゾリズマブとデュルバルマブ、どっちがいいのか

進展型小細胞がんに対しては、抗PD-1抗体よりも抗PD-L1抗体の方がいいんだろうか。 アテゾリズマブのIMpower133レジメンに続き、デュルバルマブもカルボプラチン+エトポシド併用療法に上乗せすることで、生存期間延長効果が得られることが2019年の世界肺癌…

・CheckMate227試験・・・試験デザインに極めて難あり

最近の臨床試験デザインは複雑怪奇なものが多いですが、あまりにいろいろ盛り込みすぎて結局どう解釈していいのかわからない、という点では、本試験が極めつけといっていいのではないでしょうか。 論文化されたとのことで一度読んでみたのですが、結局何が言…

IMpower131・・・KEYNOTE407に及ばず

未治療進行扁平上皮肺がん患者を対象に、アテゾリズマブを標準化学療法に上乗せすることの有効性を検証したIMpower131試験。 全体として全生存期間の延長は認められなかったが、TC3(腫瘍細胞の50%以上がPD-L1を発現)もしくはIC3(腫瘍病巣内の炎症細胞の10…

IMpower110・・・KEYNOTE024に届くか

ESMO2019で中間解析結果が報告されていたIMpower110試験。 PD-L1≧1%の未治療進行非小細胞肺がん患者を対象として、アテゾリズマブ単剤療法と標準化学療法を比較する第III相試験である。 PD-L1発現状態がTC3(腫瘍細胞の50%以上が陽性)またはIC3(腫瘍病巣内…

IMpower132・・・KEYNOTE189には及ばず

WCLC2018で公表されたIMpower132試験。 進行非小細胞非扁平上皮がん患者を対象に、プラチナ+ペメトレキセド併用療法に対するアテゾリズマブの上乗せ効果を検証した試験である。 無増悪生存期間は延長したが、全生存期間は統計学的有意に延長できなかった。 …

・IMpower150試験、再掲

IMpower150試験は、未治療進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象として、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(ABCP)療法、アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(ACP)療法、ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリ…

IMpower130試験・・・なぜアブラキサン?

進行非扁平上皮・非小細胞肺がん患者に対する初回治療として、カルボプラチン+アブラキサン併用療法にアテゾリズマブを上乗せすることの有用性を検証したIMpower試験。 アテゾリズマブ上乗せが無増悪生存期間を約1.5ヶ月、全生存期間を約5ヶ月、統計学的有…

「無増悪生存期間は延長しないが、全生存期間は延長する」ということの意味

肺がん領域における免疫チェックポイント阻害薬の効果、一つの特徴として、 「無増悪生存期間は延長しないが、全生存期間は延長する」 ということがある。 特に、初期の臨床試験(進行非小細胞肺がんの二次治療としての免疫チェックポイント阻害薬の効果)で…

FLAURA日本人サブグループ解析

オシメルチニブの生存期間延長効果は、どうも西高東低のよう。 現在の実地臨床を見ると、EGFR遺伝子変異陽性の進行肺がん患者に対してはほぼオシメルチニブ一択となっているが、果たしてそれは正しいのか。 有意差はついていないものの、ハザード比1.390でゲ…

IMpower133試験の日本人サブグループ解析結果

進展型小細胞肺癌に対するカルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ併用療法の有効性を検証したIMpower133試験、日本人サブグループ解析結果が論文化されていた。 要約だけ読んでみた。 最近進展型小細胞肺癌と診断された患者には積極的に使用されており…

FLAURA全生存期間に関する論文の精読

<FLAURA試験に関するこれまでの記事> http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e906089.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e913700.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e954089.html http://oitahaiganpractice.junglekouen…

・EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌の一次治療成績比較

FLAURA試験の全生存期間結果が公表されて、そろそろこの分野の治療成績を俯瞰してみたくなりました。 乱暴といわれることを覚悟して、主だった第III相臨床試験(JO25567のみ第II相試験)の全生存期間、無増悪生存期間の中央値を並べてみました。 中には特定…

CheckMate 017 / 057の統合解析・・・5年生存割合は

進行非小細胞肺癌に対する二次治療におけるニボルマブの有用性を検討したCheckMate 017 / 057試験。 5年生存割合のデータがWCLC2019で公表されていた。 二次治療からの5年生存割合が13.4%、5年無増悪生存割合が8.0%というのは立派な成績。 TPS<1%でも5年生…

FLAURA全生存期間解析・・・初回治療オシメルチニブ、アジア人とExon21変異では全生存期間を延長せず

EGFR阻害薬は、どちらかというとアジア人の方が有効なイメージを持っていた。 オシメルチニブではどうもそうではなさそうだ。 先般開催された2019年欧州臨床腫瘍学会年次総会で、FLAURA試験の追跡調査結果が発表された。 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対…

2019年ノーベル医学生理学賞は「細胞の低酸素応答メカニズム」研究へ

2019年のノーベル医学生理学賞は、「細胞の低酸素応答メカニズム」の解明に尽力したWilliam G. Kaelin Jr, MD、Sir Peter J. Ratcliffe, FRS、Gregg L. Semenza, MD, PhDの3氏に贈られるとのこと。 インターネット上で記事をナナメ読みしてみると、 ・酸素の…

KEYNOTE-024 data updated

TPS>50%の患者に対する初回ペンブロリズマブ単剤療法の有効性を検討したKEYNOTE-024試験。 これまで何度となく取り上げてきた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e856772.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e874097.html http://o…

KEYNOTE-189再々掲

化学療法+免疫チェックポイント阻害薬併用療法も随分定着してきた感がある。 若年、TPSが低めの患者を選択して適用されているように感じる。 いまのところ、化学療法のみ、あるいは免疫チェックポイント阻害薬のみの治療に比べて、重篤な有害事象が出ている…

KEYNOTE-407再考・・・パクリタキセルとナブパクリタキセル、どっちを選ぶ?

今年の1月にもらった2018年世界肺癌会議のパンフレット、先日もう1回もらった。 その中で、KEYNOTE-407試験における併用薬ごとの結果比較、しげしげ眺めてみると、面白いなと感じた。 KEYNOTE-407試験に関する過去の記事は、以下を参照。 http://oitah…

抗生物質の供給不安

今、院内でちょっとした問題になっているのが、表題の抗生物質の問題。 外科領域で、術後の感染予防と称して頻用されるセファゾリンが供給不能になっており、代替薬として他の抗菌薬が使用されるため、抗菌薬全般が品不足になっているとのこと。 以下のリン…

カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ、我が国でも進展型小細胞肺癌一次治療に使用可能に

分子標的薬よりも先に、免疫チェックポイント阻害薬が進展型小細胞肺癌の領域に乗り入れてきた。 いずれ、限局型にもこうした動きが出てくるかもしれない。 関連する臨床試験は、IMpower133試験。 関連記事は以下を参照のこと。 http://oitahaiganpractice.j…

オシメルチニブ、FLAURA試験で全生存期間も有意に延長

これで、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌に対するゲフィチニブ、エルロチニブの単剤治療としての役割はほぼ終わった。 ややもすると、他のEGFR阻害薬もそうかも知れない。 https://www.astrazeneca.com/content/astraz/media-centre/press-releases/2019…

・電子カルテ

現在の職場に電子カルテが導入されて、随分経過しました。 現在システム更新作業のただなかにあります。 所感を少し。 手書きのお手紙が電子メール、SNSに切り替わるように、紙カルテが電子カルテに切り替わるのも、時代の要請であることは間違いありません…

肺癌における最強のTKI後の治療戦略

2019年 日本臨床腫瘍学会 やけに大上段に構えたシンポジウム名で、思わず参加してしまった。 冒頭はスイスの演者、トリは米国の演者。 米国の演者の方が、英語が聞きやすかった。 スイスの演者はドイツっぽい訛があるように感じた。 実地臨床で、どんな風に…

統計学的有意差と一般人の感覚

2019年 日本臨床腫瘍学会より 肺癌臨床研究の領域では、非喫煙 / 軽喫煙者の進行非小細胞肺癌に対するgefitinib vs CBDCA+PTXの効果を検証したIPASS試験の結果が公表されたあたりから、生存曲線の比例ハザード性が必ずしも成立しない(放物線の下降部分のよ…

ゲノム医療を開始するに当たっての環境 Oncoguide NCC Oncopanelに関連して

2019年 日本臨床腫瘍学会から 遺伝子プロファイリングを実施する環境についてのシンポジウム。 本当は、熊本の基幹病院の先生からの発表があったはずで、地方実地医療での遺伝子プロファイリングがいかに難しく、報道が先行したために現場が混乱しているとい…

がんゲノム診療 元年・・・ではあるけれど・・・

2019 日本臨床腫瘍学会総会 1日目から 今年の日本臨床腫瘍学会のテーマは「がんゲノム診療 元年」。 確かに、6月以降の趨勢を見ていると、今年のトピックスは次世代シーケンサー技術を用いた遺伝子プロファイリング検査の実地臨床への導入である。 スティー…

Best of ASCO 2019 雑記

うまく分類できないので、とりあえず書き付ける。 <ongoing studies of osimertinib> ・WJOG9717L: osimertinib+Bevacizumab, phase II ・TORG1833: osimertinib+Ramcirumab, phase II ・CheckMate-722: osimertinib+Nivolumab+Chemotherapy, phase III ・…

・第III相RELAY試験:全体解析と東アジア人集団のサブグループ解析

ASCO annual meeting 2019 Abst. #9000 日本臨床腫瘍学会年次総会 2019 Abst. #PS1-2 ・非小細胞肺癌において、EGFR遺伝子変異陽性となる患者の割合は欧米では10−20%、アジア人では40−60%とされている ・EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者にEGFR阻害薬を使…