2022-01-01から1年間の記事一覧

・第II相OPAL(NEJ032C / LOGiK1801)試験・・・オシメルチニブ+ペメトレキセド+プラチナ製剤併用療法

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんに対し、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法が非常に有効で、生存期間中央値は実に49カ月と報告されています。 oitahaiganpractice.hatenablog.com ゲフィチニブでこれだけ良い結果が示され…

・抗体薬物複合体(ADC)の仕組み

このところ、抗体薬物複合体の話題に触れることが多くなりました。 HER2蛋白を見分けるトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)然り。 HER3蛋白を見分けるPatritumab deruxtecan(HER3-DXd)然り。 TROP2蛋白を見分けるDatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)…

・2022年日本肺癌学会総会つまみ食い その2

2022年世界肺癌会議からの注目演題紹介、というセッションだったと思います。 内容もさることながら、今年度修行先から大分に帰ってこられた先生が堂々と発表しておられたので、頼もしい限りだなあ、と感じ入りながら拝見しました。 ・EGFR-TKI既治療EGFR遺…

・NEJ-043試験 日本人EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するABCP併用療法は?

IMpower150試験において、EGFR-TKI既治療EGFR遺伝子変異陽性患者にABCP併用療法を適用した場合の生存期間中央値は27.8ヶ月(95%信頼区間18.6-41.4)で、今回のNEJ043試験の結果はやや劣ります。 oitahaiganpractice.hatenablog.com とはいえ、EGFR-TKIの治療…

・HERTHENA-Lung02試験:EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するHER3-DXdの効果は?

次世代の殺細胞性抗腫瘍薬として、抗体薬物複合体の開発が盛んです。 ことに、トポイソメラーゼI阻害薬と、特異抗体への接着剤となるリンカーを結合させたDeruxtecanを各種特異抗体にくっつけたものが話題に上ります。 今回は、EGFRと同様に細胞膜に存在する…

・2022年日本肺癌学会総会つまみぐい その1

2022年12月1日から3日にかけて、福岡市で日本肺癌学会総会が開催されました。 木・金・土の3日間で、新型コロナウイルス感染症はまだ鎮静化していませんし、診療に穴をあけるわけにもいかないので、都合のつく範囲でweb参加しました。 学会のweb参加、随分と…

・ADAURA試験、2年間の追加追跡調査の結果

完全切除後EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者さんに対し、術後補助療法としてのオシメルチニブの意義を検証したADAURA試験。 2年間の追加追跡調査後の結果が報告されていました。 結果は揺るがず、オシメルチニブの高い治療効果を追認することとなりまし…

・KEYNOTE-042試験 5年間追跡調査後

PD-L1≧1%以上の進行非小細胞肺がん患者さんを対象に、ペンブロリズマブ単剤療法の有効性を検証したKEYNOTE-042試験、5年間追跡調査後の結果が報告されていました。 個人的に考えるポイントを3つ挙げれば、以下の通りです。 ・ペンブロリズマブ単剤療法を自信…

・第III相IPSOS試験・・・プラチナ併用化学療法ができない患者へのアテゾリズマブは?

プラチナ併用化学療法の対象とならない進行非小細胞肺がん患者さんに対するアテゾリズマブ単剤療法の有効性と安全性を検証した第III相IPSOS試験。 ジェムシタビンやビノレルビンが比較対象となったことは適切なのか、という気はしますが、少なくともこれらの…

・KEYNOTE-407試験 5年間追跡調査後

進行肺扁平上皮がんに対するペンブロリズマブ+(ナブ)パクリタキセル+カルボプラチンの有効性を検証したKEYNOTE-407試験。 5年間追跡調査後の結果が出てきました。 3点ポイントを上げるならば、 1.生存期間中央値17.2ヶ月 2.5年生存割合18.4% 3.2…

・KEYNOTE-189試験 5年間追跡調査後

進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するペンブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ製剤の有効性を検証したKEYNOTE-189試験。 5年間追跡調査後の結果が出てきました。 3点ポイントを上げるならば、 1.取り組みやすい治療 2.PD-L1発現状態によらず有効性…

・進行非小細胞肺がん2次治療における免疫チェックポイント阻害薬+抗がん薬併用の意義

進行非小細胞肺がんの二次治療以降で免疫チェックポイント阻害薬が有効なことは、CheckMate-017試験、CheckMate-057試験、KEYNOTE-010試験、OAK試験あたりで再現性をもって示されました。 それでは、長く標準治療として君臨してきたドセタキセルをさらに上乗…

・NTRK融合遺伝子陽性肺がんに対するラロトレクチニブ

臓器横断的臨床試験の結果、既に実地臨床で使用できるラロトレクチニブ。 oitahaiganpractice.hatenablog.com 肺がん患者さんだけでの治療成績はどうか、というのが今回の報告の趣旨です。 印象深かったのは、以下の3点でしょうか。 1.対象となったのはNTR…

・EGFRエクソン20挿入変異とsunvozertinib

オシメルチニブの構造を土台として、側鎖に操作を加えてEGFRエクソン20挿入変異に有効な治療薬を開発するというコンセプトで見いだされたsunvozertinibというお薬、今年のASCOで報告されていました。関連した論文に詳しい内容が記載されていましたので読んで…

・甲状腺腫瘍で野口病院を受診

左肺上葉結節影同様、甲状腺左葉にも何かがあることは2016年から分かっていました。 とはいえ、甲状腺腫瘍ならよほど増大速度が速くない限りはしばらく経過観察でいいんじゃないかなあと高をくくっていました。 今年は消化器内科の先生の検査オーダーで撮影…

・内視鏡的大腸ポリープ粘膜切除術と人生初の日帰り入院

8月下旬、CTとともに胃カメラ、大腸カメラも併せて行いました。 胃カメラはともかく、大腸カメラは事前準備が大変です。 検査前日の夕食は素麺だけにして、食後に下剤を飲みます。 当日は朝5時起きで、起床後ただちに約2Lの下剤を飲み始めます。 この2Lを飲…

・3年ぶりの肺結節影経過観察

もう9月も終わりを迎えようとしています。 一昨年は義父が、昨年は実母の進行肺がんが、今年は母方の叔父の膵がんが発覚しました。 自分のことはそっちのけで親族のお世話をしていましたが、そろそろ自分の体も見ておかなきゃな、ということで、今年は3年ぶ…

・休薬の提案

肺がん治療中の休薬について、新聞の「読者の声」コーナーに寄稿したので読んでみてね、というご連絡を患者さんからいただきました。 効果が出ている薬を休薬するのは、担当医の立場では勇気のいることです。 しかし、患者さんから申し入れがあったときには…

・市販の新型コロナウイルス感染症抗原検査キットはどの程度信頼できるのか

新型コロナウイルス感染症診療は、患者数の増加とともに日に日に混迷の度合いを深めています。 どんなに本人や家族が希望しても、保健所が入院勧告すべき病状にない患者さんは、基本的に入院治療させてもらえないようです。 そうした事例があったため、所轄…

・病理病期II-IIIA期EGFR遺伝子変異陽性肺がんの術後オシメルチニブ、適応拡大

2022年08月24日付で、病理病期II-IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性肺がん患者さんに対し、術後補助療法としてオシメルチニブが使用可能になりました。 アストラゼネカのタグリッソ、早期EGFR変異陽性肺がんの術後補助療法として適応拡大 (astrazeneca.co.jp) その…

・ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、PS良好なら年齢を問わずよさそう

なんだかこのところ、肺がん薬物療法の話題と言えばニボルマブ+イピリムマブ併用療法ばかりを取り上げているような気がします。 実母の治療経過に直結するのでどうしても興味が集中しがちです。 年齢問わず、PS 0-1と良好ならニボルマブ+イピリムマブ併用…

・仲間の意見を聞く

肺がんの診療を進めるにあたり、常に意識することがあります。 ・その患者さんにとって、肺がんと診断することはどんな意味があるのか ・その患者さんにとって、肺がんの治療をすることはどんな意味があるのか ・その患者さんは、肺がんと診断されることの意…

・最近の出来事

相変わらず、新型コロナウイルス感染症対応に翻弄される毎日です。 私立病院である私の職場ですらこうなので、公的医療機関にお勤めで新型コロナウイルス感染症対応を最前線でなさっている呼吸器内科の先生方は、他疾患も併せて診るのに本当にご苦労されてい…

・新型コロナウイルス感染新規患者数は、期待を裏切らない

久し振りの記事にしては陳腐なタイトルだな、とお叱りを受けそうです。 それでも書きたくなります。 自粛もまん延防止措置も緊急事態宣言も何もないお盆が明けて、当たり前のように新型コロナウイルス感染新規患者数が増えました。 年末年始明け、3連休明け…

・新型コロナウイルスのオミクロン株と、斜陽の抗体医薬品

新型コロナウイルス感染症の勢いが止まらず、肺癌診療に思いを馳せる余裕が出てきません。 ちょっと前までは、抗体医薬品であるロナプリーブやゼビュディを早い段階で積極的に使うことで、治療開始の翌々日には患者さんが解熱して見通しが立つことが多かった…

・新型コロナウイルス感染症、7つめの波が打ち寄せる

新型コロナウイルス感染症の7つ目の波、なかなかに厄介です。 我が国における日々の新規感染患者数が世界のトップを走ることになるとは、少し前までは予想もしていませんでした。 大分県内の日々の新規感染患者数が2000人を超えることもまた、予想外でした。…

・III期非小細胞肺がんに対し、術前化学療法に放射線治療を上乗せすることの意義はあるか

根治切除を目指したい局所進行非小細胞肺がん患者さんに対して、しばしば術前化学放射線療法を行うことがあります。 私が所属していた施設では、シスプラチン+ビノレルビン併用療法2コースもしくはシスプラチン+S-1併用療法2コースに加え、40-45Gy程度の放…

・ニボルマブ+イピリムマブ±化学療法における副作用対策の基本的考え方

先日、ニボルマブ+イピリムマブ±化学療法についてのオンラインセミナーがありました。 新型コロナウイルス感染症患者さんが夕方から2人入院してきて、対応に忙殺されましたが、どうにか途中から参加することができました。 どちらかというと、本治療の有効…

・がん患者の家族、親族として思うこと

一昨年末から義父、実母が立て続けに進行肺腺がんになりました。 担当医の先生方の適切なご加療により、ようやくそれぞれに小康状態になったと思ったら。 今度は母方の叔父が膵がんになりました。 義父や実母は非喫煙者なので、できる限りの支援をしなければ…

・バングラデシュの患者さんと

2022/06/01から入国制限が緩和されたためかどうかはわかりませんが、外国籍の患者さんを診療する機会がCoVID-19流行前に復しつつあります。 先日は中国籍の方が腹痛・腰痛でもだえ苦しみながら時間外外来にお越しになりました。 私は中国語ができませんし、…