・2022年日本肺癌学会総会つまみぐい その1

 

 2022年12月1日から3日にかけて、福岡市で日本肺癌学会総会が開催されました。

 木・金・土の3日間で、新型コロナウイルス感染症はまだ鎮静化していませんし、診療に穴をあけるわけにもいかないので、都合のつく範囲でweb参加しました。

 

 学会のweb参加、随分と一般的になりました。

 学会を国内旅行と交流の機会、と捉える向きには物足りないかもしれませんが、出張費を抑えて時間を節約するという点で、地方で仕事をしている我々には大変ありがたい仕組みです。

 

 また、web参加といっても、学会によって随分と勝手が異なります。

 じっくり勉強したいものからすると、オンデマンド配信の有無は非常に大きな違いです。

 その点、今回の日本肺癌学会総会は、オンデマンド配信で視聴できるのは教育講演とpatient advocate programのみで、残念でした。

 

 暇を見つけて、学んだことを少しずつまとめて、機会があれば掘り下げます。

 今日のところは以下の4点で。

 

 

 

1)CheckMate227試験 5年間追跡調査後の日本人サブグループ解析

ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群 vs 化学療法群

  PD-L1≧1%:5年生存割合 46% vs 34%

  PD-L1<1%:5年生存割合 36% vs 19%

 ・ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で、5年生存した患者さんの59%は、5年経過時点でも次治療を受けずに済んだ

ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群で、治療関連有害事象によりプロトコール治療を中止した患者さん79%は治療中止後3年以上効果が持続した

 

2)CheckMate9LA試験 3年間追跡調査後の日本人サブグループ解析

ニボルマブ+イピリムマブ+2コース化学療法併用群 vs 化学療法群

  3年生存割合 41% vs 14%

 

3)殺細胞性抗腫瘍薬は特異抗体との複合体開発が主流になりつつある

・HER2蛋白を標的としたTrastuzumab deruxtecan(T-DXd)

 DESTINY-Lung01試験

 DESTINY-Lung02試験

 DESTINY-Lung04試験

・HER3蛋白を標的としたPatritumab deruxtecan(HER3-DXd)

 U31402-A-U102試験

 HERTHENA-Lung02試験

・TROP2蛋白を標的としたDatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)

 TROPION-PanTumor01試験

 TROPION-Lung01試験

 TROPION-Lung02試験

 TROPION-Lung04試験

 TROPION-Lung05試験

 TROPION-Lung07試験

 TROPION-Lung08試験

 

4)EGFR-TKI耐性化後のEGFR遺伝子変異陽性肺がん治療戦略

・IMpower150試験より、ABCP併用群 vs BCP併用群

 A:アテゾリズマブ

 B:ベバシズマブ

 C:カルボプラチン

 P:パクリタキセル

 EGFR遺伝子変異陽性集団での生存期間中央値 29.4ヶ月 vs 18.1ヶ月

 EGFR-TKI治療歴のある集団での生存期間中央値 27.8ヶ月 vs 18.1ヶ月

・NEJ043試験よりEGFR-TKI治療歴あり、他の治療歴なしのABCP併用療法施行日本人患者データ

 生存期間中央値 18.9ヶ月

 無増悪生存期間中央値 7.4ヶ月

 奏効割合 56%

 病勢コントロール割合 92%

・再生検の意味

 耐性変異が見つかっても、現時点では有効な治療薬がない