・CodeBreaK 200試験、アジア(日韓)人サブグループ解析

KRAS G12C変異陽性の既治療進行非小細胞肺がんに対するソトラシブ内服療法。 CodeBreaK 200試験において、ドセタキセル単剤療法と比較して無増悪生存期間中央値を1.1ヶ月(5.6ヶ月 vs 4.5ヶ月)、統計学的有意に延長しました。逆に、生存期間中央値は0.7ヶ月…

・CoVIDいまだ健在なり

今日はがんとは関係ない話題です。 ここ1週間くらい、CoVIDに翻弄されています。 訪問診療先の患者さんが発症したかと思えば、週半ばから病棟クラスターが拡大し、自分の担当する入院患者さんだけでも水曜日に2人、金曜日に1人、土曜日に1人、今日は3人が発…

・高齢進行がん患者さんご夫妻の老々介護と、周囲からの「温かい励ましに感謝」

常々、医師は現場に立って患者さんに接してナンボの職業だと思っています。 どんなに学会発表や研究会発表を視聴したり、論文を読んだりしてもほとんどの場合、そこには数字や画像しか出てきません。 しかし、実際の診療には患者さんやご家族のいたみ、つら…

・第III相INSPIRE試験・・・中国発のALK阻害薬の実力は?

近年、中国発の臨床試験結果が数多く報告されるようになりました。 その多くは、既に実地臨床で使用されている性質の薬品と同様の作用機序の薬品を中国国内で新たに開発し、とても短い開発期間で第III相試験結果公表までつなげていく、という内容です。 本当…

・第II相DeLLphi-301試験・・・BiTE抗体のtarlatamabと肺小細胞がん

日本臨床腫瘍学会が認定するがん薬物療法専門医。 メイワ・・・いや、アリガタイことに、専門医は5年に1回の頻度で資格更新の試験を受けることになっていて、今回も一所懸命勉強しました。 そのため、完全にブログの更新を止めていました。 私のようなデキが…

・EGFR遺伝子変異陽性局所進行非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後の取り扱い

2022年08月の適応拡大により、EGFR遺伝子変異陽性切除可能非小細胞肺がんに対し、病理病期II期以降なら術後補助療法としてオシメルチニブが使用可能になりました。 タグリッソ錠40mg/タグリッソ錠80mg (pmda.go.jp) 臨床試験による裏付けはないものの、同じ…

・第III相Neotorch試験・・・toripalimabとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法

免疫チェックポイント阻害薬による周術期治療シリーズ、いったんトリを飾るのは中国発のNeotorch試験です。 他の試験と比べると治療の組み立てが少しユニークで、免疫チェックポイント阻害薬+プラチナ併用化学療法を術前に3コース、術後に1コース行い、その…

・第III相AEGEAN試験・・・デュルバルマブとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法

ペンブロリズマブ、ニボルマブに加えて、デュルバルマブによる周術期治療の有用性についてもAEGEAN試験で検証されています。 ペンブロリズマブのKEYNOTE-671試験と比肩する規模で行われた第III相臨床試験で、両試験共に5年、10年といった長期治療成績がどの…

・第II相NADIM-II試験・・・ニボルマブ周術期(術前・術後)補助療法

KEYNOTE-671試験と比較すると規模は小さいランダム化第II相試験ながらも、III期の患者さんに絞って、化学療法はカルボプラチン+パクリタキセル併用療法に絞って行われたNADIM II試験。 術前・術後にニボルマブを併用する試験治療群においてはN2患者さんが72…

・第III相KEYNOTE-671試験・・・ペンブロリズマブとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法

これまでのところ、肺がん領域における2023年最大のトピックスは、「免疫チェックポイント阻害薬による周術期補助療法」でしょうね。 今回取り上げるKEYNOTE-671試験のほか、AEGEAN試験、Neotorch試験、NADIM II試験と目白押しです。 5年、10年と追跡しない…

・第III相IPSOS試験・・・PS不良、高齢の進行非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブ一次治療

PS不良、高齢、背景疾患といった理由でプラチナ併用化学療法が使えない進行非小細胞肺がん患者さんに対して、アテゾリズマブ単剤療法の生存期間延長効果を検証した第III相IPSOS試験。 目を瞠るほどの結果を残したわけではありませんが、生存期間を延長して、…

・お盆に親族が集まるということ

1年ちょっとの膵がんとの闘病期間を経て、6月下旬に叔父が亡くなりました。 大学病院の腫瘍内科でがん薬物療法を受けていたのですが、自宅で身動きが取れなくなって、私の勤め先に救急搬送されてきました。 各種検査データから多臓器不全の状態にあり、CTで…

・第II相WU-KONG6試験・・・EGFRエクソン20挿入変異での奏効割合60.8%

EGFRエクソン20挿入変異に対するsunvozertinibの治療開発について、新たな報告です。 2022年の米国臨床腫瘍学会では、第I相試験段階での報告が行われていました。 そのころに作成した以下の過去記事で、sunvozertinibがどういった種類のお薬なのか詳しく触れ…

・第III相LUNAR試験・・・腫瘍治療電場・・・?

腫瘍細胞の有糸分裂過程を阻害する電場を用いた治療・・・。 摩訶不思議な響きを持つ謳い文句で、私が不意に思い浮かべたのは叔母が好んで通い続けていた、「ヘルストロン」のサロンでした。 ヘルストロンとは | 株式会社 白寿生科学研究所 ハクジュプラザ…

・ADAURA試験・・・全生存期間解析結果

2023年の米国臨床腫瘍学会で、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する術後補助療法としてのオシメルチニブの有効性を検証した第III相ADAURA試験について、5年間追跡調査後の生存期間解析に関する報告がありました。 要は、術後オシメルチニブ…

・「コロナ患者の呼吸器を2分間停止・・・」の記事、問題点は?

ウェブサイト上に以下のような記事があり、いろいろと考えさせられてしまいました。 進行肺がんの診療ばかりしていると人工呼吸管理に携わること、意識することは少ないのですが、一般診療を行う呼吸器内科医としては他人ごとではありません。 医師と患者の…

・パクリタキセルによる末梢神経障害と冷たい手袋・靴下(フローズン・グローブ)

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんの患者さんで、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が効かなくなった後の治療はいくつか選択肢がありますが、IMpower150試験のサブグループ解析の結果からカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブ併用療…

・JCOG2007・・・NIPPON studyの憂鬱 日本人にニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ併用化学療法はキツいのか

令和5年4月30日 日本経済新聞より抜粋 JCOG2007(NIPPON試験)概要 JCOGホームページより抜粋 2007.pdf (jcog.jp) JCOG2007(NIPPON試験) ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ併用化学療法群の治療関連死一覧国立がん研究センターのプレスリリースより…

・50%糖液を用いた難治性気胸に対する胸膜癒着術・・・一筋縄ではいきません

「社会にも研究にも、いわゆる「流れ」というものがあって、その流れにはいつも目を配っておかないといけないよ」 とは、私に肺がんの病理学を手ほどきしてくださった恩師が、私にたくさん授けてくださった至言のひとつです。 その当時、術後補助療法の有効…

・デュルバルマブ+トレメリムマブ+プラチナ併用化学療法はどんな患者に使うべきか

2022年12月28日付で、進行・再発非小細胞肺がんに対する治療として厚生労働省の適応承認を受けたデュルバルマブ+トレメリムマブ+プラチナ併用化学療法。 プラチナ併用化学療法は二剤併用なので、とどのつまり四剤併用のがん薬物療法です。 本治療の有効性…

・AI・・・Autopsy Imaging, 死亡時画像診断

AIといわれて誰もが思い浮かべるのは、Artificial Intelligence、いわゆる「人工知能」ですよね。 日常会話の中で、新聞報道で、ニュースで、ソーシャルメディア上で、AIという言葉を耳にしない日はありません。 しかし、今日の話題は「人工知能」ではなく「…

・まさかのウロキナーゼ入手困難・・・その理由は・・・!?

20220722_mochida.pdf (jrs.or.jp) 悪性胸水のコントロールに苦戦しています。 EGFRエクソン19欠失変異陽性の患者さんだったので、オシメルチニブがよく効くだろうと高をくくっていたのですが、そうは問屋が卸しませんでした。 軽い皮膚障害以外に目立った副…

・気管支カメラが先か、胃カメラが先か

気管支カメラと胃カメラの両方を試みなければならないことがときにあります。 患者さんが口から血をはきだしているとき、それがどこから来ているのか知りたいときです。 口の中か。 鼻からか。 喉からか。 気管・気管支からか。 あるいは食道や胃、十二指腸…

・CheckMate153試験再び・・・途中でやめられません

既治療非小細胞肺がんに対するニボルマブの継続投与と1年間期間限定投与を比較する第IIIb / IV相試験のCheckMate153試験について紹介します。 Continuous Versus 1-Year Fixed-Duration Nivolumab in Previously Treated Advanced Non–Small-Cell Lung Cance…

・最近の出来事

相変わらず、新型コロナウイルス感染症対応に翻弄される毎日です。 私立病院である私の職場ですらこうなので、公的医療機関にお勤めで新型コロナウイルス感染症対応を最前線でなさっている呼吸器内科の先生方は、他疾患も併せて診るのに本当にご苦労されてい…

・バングラデシュの患者さんと

2022/06/01から入国制限が緩和されたためかどうかはわかりませんが、外国籍の患者さんを診療する機会がCoVID-19流行前に復しつつあります。 先日は中国籍の方が腹痛・腰痛でもだえ苦しみながら時間外外来にお越しになりました。 私は中国語ができませんし、…

・ビタミンC、自然治癒、ルルドの泉

先日に続き、いま読んでいる本からの引用です。 決してブログのネタにするために読み始めたわけではなく、どちらかというとiDeCoやNISAでの銘柄選びの基礎知識を得ようと思って手を付けた本なのですが、なぜかがんに関わる記述が随所に見られます。 昨今大量…

・中央値からその先へ

このブログでは、よく参考データとして「中央値」を引き合いに出します。 生存期間「中央値」。 無増悪生存期間「中央値」。 奏効持続期間「中央値」。 追跡期間「中央値」。 期間のデータを扱う時には、ほぼ決まって「中央値」が登場します。 なぜでしょう…

・医療費を削減するための臨床研究と、SATOMI臨床研究プロジェクト

先だって、妻がドラマを録画する空き容量を確保するために、昔の「報道特集」で取り扱われたニボルマブの話題を取り上げました。 oitahaiganpractice.hatenablog.com その2日後、偶然にもその後の経過を追うような話題が、NHKの「おはよう日本」に取り上げら…

・造血因子製剤の進歩

肺がん診療ばかりをしているとどうしても知識が偏りがちになりますが、当たり前のことながらほかの分野でも日々臨床医学は進歩しています。 思えば、すっかりがん薬物療法の一分野を築いた感のある免疫チェックポイント阻害薬ですが、その嚆矢となったニボル…