・第III相AEGEAN試験・・・デュルバルマブとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法

 

 ペンブロリズマブ、ニボルマブに加えて、デュルバルマブによる周術期治療の有用性についてもAEGEAN試験で検証されています。

 ペンブロリズマブのKEYNOTE-671試験と比肩する規模で行われた第III相臨床試験で、両試験共に5年、10年といった長期治療成績がどのようになるのか興味深いところです。

 内科医の立場からは、III期の患者さんに絞って解析し、化学放射線療法+デュルバルマブ地固め療法(PACIFIC療法)と今回のAEGEAN療法、どちらが有望なのかも見てみたいポイントです。

 AEGEAN療法のよいところは、局所再発後の治療選択肢として(根治的)胸部放射線照射が残せる、ということでしょうか。

 実地臨床において、術後局所再発に対して胸部放射線照射を行い、その後長期にわたって無増悪生存が得られている経験をお持ちの先生方は少なくないと思います。

 

 

 

AEGEAN: A phase 3 trial of neoadjuvant durvalumab + chemotherapy followed by adjuvant durvalumab in patients with resectable NSCLC

 

John V. Heymach et al.
AACR 2023 annual meeting abst.#CT005
doi.org/10.1158/1538-7445.AM2023-CT005

 

 

Perioperative Durvalumab for Resectable Non-Small-Cell Lung Cancer

John V Heymach et al.
N Engl J Med. 2023 Nov 2;389(18):1672-1684. 
doi: 10.1056/NEJMoa2304875. Epub 2023 Oct 23.

 

 

背景:

 最近の報告で、切除可能非小細胞肺がんに対する術前、術後の免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有用性が示されている。AEGEAN試験は切除可能非小細胞肺がん患者を対象に、デュルバルマブ+化学療法による術前療法とそれに引き続く手術、さらにその後のデュルバルマブ術後療法の有用性を検証する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相比較試験である。

 

方法:

 未治療の切除可能な非小細胞肺がん(第8版AJCC分類準拠のII-IIIB(N2)期)で、PS 0/1の患者を対象に、durva群とplacebo群に1:1の割合で無作為割付した。durva群では術前にデュルバルマブ1,500mg/回静注とプラチナ併用化学療法を3週間ごとに4コース施行し、術後はデュルバルマブのみ4週間ごとに12コース施行した。placebo群では術前に偽薬とプラチナ併用化学療法を3週間ごとに4コース施行し、術後は偽薬のみ4週間ごとに12コース施行した。割付調整因子は病期(II期 vs III期)、Ventana SP263抗体評価によるPD-L1発現状態(<1% vs ≧1%)とした。EGFR / ALK遺伝子異常を有することが判明していた患者は、有効性解析対象(mITT)からは除外された。主要評価項目は病理学的完全奏効(pathological complete response, pCR)割合、無イベント生存期間(EFS、RECIST v1.1準拠)とし、いずれも独立委員会による中央判定によるものとした。プロトコール治療を1コース以上受けた全ての患者を安全性解析対象とした。

 

結果:

 2019/01/02から2022/04/19の期間に、802人の患者が無作為割付され(うち740人がmITT集団)、799人がプロトコール治療を受けた(durva群400人、placebo群399人)。mITT集団における背景因子は広範囲にわたってバランスがとれていた。durva群の84.7%、placebo群の87.2%が4コースの術前プラチナ併用化学療法を完遂し、durva群の77.6%とplacebo群の76.7%が手術を受けた(mITT集団)。2022/11/10のデータカットオフ時点までで、mITT集団の観察期間中央値は11.7ヶ月だった。pCR割合はdurva群で63/366(17.2%)、placebo群で16/374(4.3%)で群間差は13.0%(95%信頼区間8.7-17.6)、p=0.000036と有意にdurva群で良好だった。EFSイベント発生割合はdurva群で98/366(26.8%)、placebo群で138/374(36.9%)、EFS中央値はdurva群で未到達(95%信頼区間31.9-未到達)、placebo群で25.9ヶ月(18.9-未到達)、ハザード比0.68(95%信頼区間0.53-0.88)、p=0.003902と有意にdurva群で良好だった。1年EFS割合はdurva群73.4%(95%信頼区間67.9-78.1)、placebo群64.5%(95%信頼区間58.8-69.6)、2年EFS割合はdurva群63.3%(95%信頼区間56.1-69.6)、placebo群52.4%(95%信頼区間45.4-59.0)だった。プロトコール治療期間全体を通して、Grade 3-4の有害事象はdurva群の42.3%、placebo群の43.4%で発生した。

 

結論:

 AEGEAN試験におけるデュルバルマブとプラチナ併用化学療法による周術期(術前・術後)補助療法はpCR割合、EFSいずれの主要評価項目も有意に改善し、管理可能な安全性プロファイルも示した。

 

 

 

 

 

Surgical Outcomes with Neoadjuvant Durvalumab + Chemotherapy Followed by Adjuvant Durvalumab in Resectable NSCLC (AEGEAN)

 

T. Mitsudomi et al.
WCLC2023 abst.#OA12.05

WCLC 2023 - OA12Pushing the Boundaries: Adjuvant and Neoadjuvant Approaches in Early Stage Non-small Cell Lung Cancer (abstractsonline.com)

 

 

背景:

 第III相AEGEAN試験では、切除可能非小細胞肺がん患者に対する周術期デュルバルマブ+プラチナ併用化学療法が、術前化学療法単独と比較して、無イベント生存期間(event-free survival, EFS)と病理学的完全奏効(pathological complete response, pCR)割合を有意に改善し、管理可能な安全性プロファイルも確認された。今回は本試験の手術関連成績について報告する。

 

方法:

 未治療の切除可能な非小細胞肺がん(第8版AJCC分類準拠のII-IIIB(N2)期)で、PS 0/1の患者802人を対象に、durva群とplacebo群に1:1の割合で無作為割付した。durva群では術前にデュルバルマブ1,500mg/回静注とプラチナ併用化学療法を3週間ごとに4コース施行し、術後はデュルバルマブのみ4週間ごとに12コース施行した。placebo群では術前に偽薬とプラチナ併用化学療法を3週間ごとに4コース施行し、術後は偽薬のみ4週間ごとに12コース施行した。割付調整因子は病期(II期 vs III期)、PD-L1発現状態(<1% vs ≧1%)とした。プロトコール改訂により、無作為割付前にEGFR / ALK遺伝子異常の有無を確認することが義務付けられた。無作為割付前にEGFR / ALK遺伝子異常を有することが判明していた患者は、有効性解析対象からは除外された(それ以外の患者をmITT解析対象とした)。当初、予定手術として肺葉切除、スリーブ切除、二葉切除のみが適格とされ、片肺全摘、区域切除、部分切除は不適格とされていたが、プロトコール改訂により腫瘍サイズ>7cm以外の要因でT4と判定された患者、あるいは予定手術が片肺全摘とされた患者も容認されることとなった。手術成績はmITT解析対象について記述統計として解析し、今回は1コース以上のプロトコール治療を受けた患者について安全性を評価した。

 

結果:

 mITT解析対象として無作為割付された740人のうち737人がプロトコール治療を受けた(durva群366人、placebo群371人)。mITT解析対象となったdurva群、placebo群のうち、手術を受けたのはそれぞれ80.6% vs 80.7%、(担当医判定で)肉眼的に完全切除できたのは77.6% vs 76.7%、病勢進行のため手術がキャンセルされたのは6.8% vs 7.8%、病勢進行のため肉眼的に非完全切除に留まったのは1.4% vs 2.1%、手術を受けた患者のうち予定より手術が延期となったのは17.6% vs 21.9%で、その理由の主なものは物流や手術日程調整(9.8% vs 12.0%)といった実務的な問題だった。術前療法最終コースから手術までの期間中央値は両群ともに34.0日間だった。開胸術施行は49.2% vs 50.7%、低侵襲手術施行は49.2% vs 47.0%だった。肺葉切除が主要な術式(80.7% vs 73.2%)で、片肺全摘(9.2% vs 9.6%)がそれに続いた。肉眼的に完全切除できた患者では、R0切除できていた患者はdurva群でより多かった(94.7% vs 91.3%)。手術施行から初回の術後補助療法までの期間中央値は両群とも同等だった(50.0日間 vs 52.0日間)。術後の期間内において、手術に起因すると考えられる何らかの有害事象に至った患者は40.2% vs 39.2%で、そのうちGrade 3-4相当だったのは8.4% vs 9.3%だった。Clavien-Dindo分類に準拠した術後合併症評価では、両群とも同等の合併症発生割合(59.3% vs 59.9%)で、ほとんどの場合その最大Gradeは1-2だった(53.2% vs 51.7%)。

 

結論:

 切除可能非小細胞肺がん患者に対する術前化学療法に周術期デュルバルマブ療法を追加しても、手術忍容性、術式、切除範囲、手術時期のいずれにも悪影響を与えず、手術安全性は忍容可能であることが示された。加えて、記述統計上はデュルバルマブを追加することでR0切除患者が増えていた。