2020-01-01から1年間の記事一覧
悪性胸水を合併していると、免疫チェックポイントの効果はあまり期待できないという報告です。 実感としてそんな感じがします。 治療に対する生理的バリアという概念は納得できます。 中枢神経系への転移だけでなく、悪性胸水や腹水を伴う病状では、それなり…
抗PD-L1抗体の抗腫瘍効果を、脂質代謝異常改善薬のベザフィブラートが活性化するかも、という話です。 基礎研究の世界の話題に過ぎないが、源流はPD-1 / PD-L1系の発見者である本庶佑先生の研究室であり、信頼性があります。 Mitochondrial activation chemi…
ドライバー遺伝子変異を有する患者に免疫チェックポイント阻害薬を使ったときの無増悪生存期間延長効果についての報告です。 KRAS遺伝子変異とBRAF遺伝子変異があると、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子がある患者よりも無増悪生存期間が有意に伸びるのだとか…
先日、近隣の医療機関からこんな文書連絡がありました。 「当院の緩和ケア病棟を閉鎖します」 ここは準公的医療機関であり、この地域では唯一、緩和ケア専門病棟を有していました。 旧知の医師が病棟責任者を務めていて、彼の前職のころから、私は何度も助け…
2020/11/27はいろいろな薬事承認が成された日だったようです。 非小細胞肺がん治療の領域にも、「免疫チェックポイント阻害薬2剤併用」という新たな地平が開かれました。 また、抗CTLA-4抗体が非小細胞肺がん領域で薬事承認されたという意味でも新しい出来事…
HLA(Human Leukocyte Antigen, ヒト白血球型抗原)は、白血球の血液型と言えるものであり、自己と非自己の識別に関与する重要な免疫機構として働いています。 免疫学の領域では重要なキーワードですが、HLAが話題に上るのは後天性免疫不全症候群(AIDS)や…
METエクソン14スキップ変異陽性アジア人非小細胞肺がん患者に対するテポチニブの効果についての報告です。 タイトルを考えていて思いましたが、患者さんの背景を説明する修飾語は、年々長くなる一方ですね。 テポチニブが薬事承認されて随分たちますが、まだ…
EGFR-TKI治療後に病勢進行に至った患者に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド(ABCP)療法の第II相試験です。 効果が同等なら、がん薬物療法はシンプルな方が患者さんにも担当医にも負担が少ない、と考えがちな私にとっては…
ほんのちょっとしたことなのですが、ふと気がついたので書き留めます。 進展型小細胞肺がんに対するIMpower133レジメンとCASPIANレジメンについてのお話です。 IMpower133レジメンは、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ導入療法3週ごと4コース後に…
トルコの先生からの報告です。 新規抗PD-1抗体のcemipilimabが化学療法と比較して、進行非小細胞肺がんの初回治療で有意に生存期間を延長したそうです。 要約を素直に読むと、PD-L1発現状態を考慮しなくても生存期間を延長しているようですが、わざわざPD-L1…
データと実態の乖離が世間の認識をミスリードすることは珍しいことではありませんが、標記の話題は極めて深刻です。 強い危機感を抱いています。 この話題について、朝日新聞デジタルの記事から引用すると、 ・厚生労働省の集計では、新型コロナの重症者は20…
免疫関連有害事象が発生した方が、免疫チェックポイント阻害薬の生存期間延長効果は強くなる、というお話です。 背景は不明ですが、この報告にある内容は、多かれ少なかれ誰もが実感として感じている内容ではないでしょうか。 免疫関連有害事象のマネジメン…
セルペルカチニブとは異なるもうひとつのRET阻害薬、pralsetinibについて。 有効性はともかく、有害事象に関する注意事項がとても多いようです。 致死的な有害事象が5%で認められたというので、おだやかではありません。 Pralsetinib for NSCLC With RET Gen…
ROS1肺がん同様、発現頻度は決して高くはないRET肺がん。 新規治療が開発されたとしても、肺がん診療全体に及ぼすインパクトは大きくありません。 そのため、話題に取り上げるのを避けてきましたが、今日は取り上げます。 SelpercatnibはRET融合遺伝子もしく…
本日、LC-SCRUMの事務局から、こんな連絡が届きました。 ・これまでの登録例から、条件を満たす登録例を選択し、RNAシークエンス解析を実施します。 ・特に、NRG1融合遺伝子陽性例を見つけるために、粘液産生型腺癌を優先して解析を行います。 ・このRNAシー…
読書の秋です。 ことに土曜日の夜は、本を読みふけるのにぴったりです。 とはいえ、本を買ってきては読了し、そのまま本棚に収めると、また無駄な荷物を増やして、といつも妻とけんかになります。 そんなわけで、最近はできるだけ図書館で借りてきた本を読む…
webセミナーを眺めていたら、面白い論文が紹介されていました。 Worldwide Frequency of Commonly Detected EGFR Mutations Rondell P. Graham et al., Arch Pathol Lab Med. 2018;142:163-167 doi: 10.5858/arpa.2016-0579-CP EGFR遺伝子変異の国別分布です…
2020/10/08付で、小野薬品工業が以下のプレスリリースを発出しました。 オプジーボと化学療法の併用療法が、切除可能な非小細胞肺がんの術前補助療法での第III相 CheckMate -816 試験において統計学的に有意な病理学的完全奏効の改善を示す https://www.ono.…
・大上段に構えたようなタイトルだが、内容は他愛ないです。 夕食をとってしばらくし、世間の流れを掴もうとうずたかく積まれた未読の新聞をめくっていたら、妻がおもむろに以下の記事を読んでごらんと言ってiPadをよこしました。 【コロナ禍のがん闘病記〜…
日本人の死因と言えば、私が医学生だったころは、1位は悪性新生物、2位は心疾患、3位は脳血管疾患と相場が決まっていました。 これがここ数年で頻繁に入れ替わっています。 まず、肺炎が脳血管疾患を抑えて3位になりました。 そうかと思いきや、肺炎が亜分類…
以前、ペンブロリズマブが6週間ごとの投与が可能になったと記しました。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e978519.html 2020/09/25付で、ニボルマブも4週間ごとの投与が可能になったようです。 https://www.opdivo.jp/ 4週ごとであれ、6週ごとで…
以下の記事で取り扱った、EGFR-TKI+血管新生阻害薬の話題の延長線上に、このACTIVE試験も位置付けられます。 ApatinibがVEGFR2を阻害する小分子化合物であるというところが、ベバシズマブやラムシルマブといった抗体医薬とは異なり、新しい話題です。 経口…
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬と血管増殖因子阻害薬の併用と聞いて想起されるのは、JO25567試験、NEJ026試験、RELAY試験といったところでしょうか。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e944390.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e9747…
TPSが50%以上の患者に対する初回ペンブロリズマブ単剤療法の有効性を検討したKEYNOTE-024試験について。 ドライバー遺伝子変異のない進行期非小細胞肺がんに対する初回薬物療法の考え方を大きく転換させた臨床試験で、これまで何度となく取り上げてきました…
プレスリリースの時点で一度取り上げた、ロルラチニブ vs クリゾチニブのガチンコ試験、CROWN試験。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e979184.html ESMO 2020で結果が公表されました。 発表者は、ALK陽性肺がんに対するクリゾチニブ一次治療の有…
いろんな場面で維持療法をすることが当たり前になってしまった。 進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法後のベバシズマブ維持療法。 進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するプラチナ製剤+ペメトレキセ…
2020年当時、そろそろ欧州臨床腫瘍学会の話題を仕入れようとネットサーフィンをしていたら、国立がん研究センター東病院のT.M.先生が英語でプレゼンテーションをなさっている動画を見つけてしまい、びっくりたまげて椅子から滑り落ちてしまいました。 https:…
最近、肺がん診断のための気管支鏡検査を見ていて、少し気がかりなことがある。 胸部レントゲンの所見確認が軽視されているように思われてならない。 そもそも、気管支鏡検査前に胸部レントゲン写真が撮影されていないことすらある。 私と同世代の医師が、駆…
治療効果予測因子(predictive marker)と生命予後因子(prognostic marker)は、似て非なるものです。 がん治療において、治療効果予測因子はこれから行おうとする治療の効果がどの程度その患者さんにおいて期待できるのかを知るためのめやすです。 ある因…
この20年で、小細胞がんと非小細胞非扁平上皮がん(≒腺がん)の薬物療法には、大きな隔たりができてしまった。 非小細胞非扁平上皮がんは治療開始前の遺伝子変異検索、PD-L1発現状態評価が必須となった。 殺細胞性抗腫瘍薬、分子標的薬、(血管増殖因子阻害…