2020-01-01から1年間の記事一覧

お誕生日おめでとう その2

以前、「お誕生日おめでとう」という記事を書いたことがある。 私よりも若い患者さんで、喫煙経験が全くないのに肺小細胞がんと診断されたとのことで、今でも折に触れて思い出す。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e946312.html 今日ご紹介するの…

ONO-4538-52/TASUKI-52試験

小野薬品工業から、以下のようなプレスリリースが発出されていたようだ。 参加患者の約70%を日本人が占めていたとのこと。 https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n20_0803.pdf <化学療法未治療の根治照射不能なIIIB / IV期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がんを…

・ロルラチニブ、一次治療へ・・・第III相CROWN試験

ALK融合遺伝子陽性進行非小細胞肺がんにおいて、ロルラチニブも初回治療で使えることになりそうです。 しかし、ALK肺がんの世界では、効果・安全性のバランスが非常によいアレクチニブが既に一次治療の主戦力になっている点が、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細…

限局型小細胞肺がん、再燃時の治療

進展型小細胞肺がん再燃時の化学療法は、臨床試験結果に基づいて、それなりに選択肢がある。 条件が合えば、シスプラチン+イリノテカン+エトポシド併用療法もよいだろう。 条件が合わなくても、アムルビシンやトポテカンが使用できるだろう。 しかし、限局…

膠原病と肺がん、嚥下障害

この病気と診断されたときは、悪性腫瘍の検索をしましょうと推奨される病態はいくつかある。 同一部位に肺炎を繰り返す患者における、その部位の根元の肺門部型肺がん。 帯状疱疹を発症した患者における悪性腫瘍合併。 そうしたものの中に、膠原病も含まれる…

EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するペンブロリズマブ、化学療法、エルロチニブ

EGFR遺伝子変異陽性肺がんの方に免疫チェックポイント阻害薬を使っていいものか。 そんな質問を頂いた。 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬も、化学療法も全てやりつくして、最後の挑戦としてペンブロリズマブを使用するとのこと。 データベースを検索してみたとこ…

合併症のコントロールとがん薬物療法

当たり前のことなのだが、がん薬物療法はできるだけ体調を整えた上で臨みたい。 肺気腫を合併していて呼吸状態が悪いなら、肺気腫の治療を加えてから。 症状を伴う脳転移があるのなら、脳転移の治療を行ってから(ドライバー遺伝子変異があればこの限りでは…

KEYNOTE-604 やっぱり「アリ」だろうか・・・

以前、進展型肺小細胞がんに対するプラチナ製剤+エトポシド+ペンブロリズマブ併用療法について検証したKEYNOTE-604試験のことについて書いた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e969016.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e97474…

ペンブロリズマブ、6週間隔投与可能に

ペンブロリズマブの添付文書が今月改訂され、癌腫を問わず、6週間隔投与ができるようになったらしい。 これまでは3週間間隔で200mg点滴だった。 これからは6週間間隔で400mgでもいいのだとか。 https://www.msdconnect.jp/static/mcijapan/images/pi_keytrud…

・ALK陽性肺がんとEnsartinib

ALK陽性肺がんに対する新規治療薬、Ensartinib。 さて、アレクチニブやローラチニブよりもEnsartinibを優先的に使用する機会が、我が国であるでしょうか。 PHASE III RANDOMIZED STUDY OF ENSARTINIB VS CRIZOTINIB IN ANAPLASTIC LYMPHOMA KINASE (ALK) POS…

Sintilimab

中国の製薬会社、Innovent Biologicsとイーライリリーが共同で開発した抗PD-1阻害薬、Sintilimabが、非扁平上皮非小細胞肺がんに対する一次治療として、プラチナ+ペメトレキセド併用化学療法への上乗せで有意に無増悪生存期間を延長したとのこと。 我が国の…

「Class IIIB」を異なる立場で見てみると

我々気管支鏡診断に携わる者は、細胞診で「class IIIB」という結果が返ってくるとどうにもやりきれない気分になる。 ・そもそも、class IIIB-IVって、IIIBとIVのどっちなのよ ・adenocarcinomaが否定できないって、どの位否定できないってニュアンスでいって…

ついに岩手県でもCoVID-19発生

ついに「聖域」岩手県でも新型コロナウイルス感染患者が発生した様子。 こうしてみると、大分県はいつの間にか、相対的に患者数が少ない都道府県になってしまった。 着実に感染は交通網を介して広がっていると感じられる。 県外移動者、旅行者が増えたのだか…

経気管支肺生検の下準備

他のがんと同じく、肺がんも確定診断がつかなければ治療指針が立てられない。 多岐にわたるドライバー遺伝子変異の検索、PD-L1発現状態の情報が不可欠となり、気管支鏡による生検診断の重要性は増す一方である。 研修医の頃には気管支鏡の正しく持つことすら…

レイ・ダリオが経験したセカンド・オピニオン

ものの考え方が偏らないようにと思って、週末はできるだけ一般書を読むようにしている。 今読んでいるのは、レイ・ダリオの「PRINCIPLES」という書籍。 金融の会社を長く経営してきた方のようだが、人生や仕事においてよって立つ原理・原則をまとめたのだそ…

国内感染状況と全国新幹線網

新型コロナウイルスPCR陽性者数、全国的に増加の一途をたどっている。 発症者の年代、地域、背景など、多様性に富み始めた。 東京都を除いたGo To トラベル キャンペーンが始まったそう。 お出かけする前に、以下の2枚の地図をよく見比べてほしい。 お出かけ…

線を引いて、のちに検証する

以前、勤め先で感染対策委員会の委員長を務めていたときは、インフルエンザ流行期の対策立案で、随分と「線引き」に苦労した。 今では随分一般的になった「濃厚接触者」という用語。 院内でインフルエンザ患者が発生したとき、どんな患者・職員を「濃厚接触…

SARS-CoV-2の傾向と対策

経済を救うために警戒を緩めて、予想通り揺り返しがやってきた。 国の施策を批判する向きもあるが、経済を救うためにやむを得ず、という面もあるのだろう。 新型コロナ感染は免れたけれど、経営や生活に困窮して自ら命を絶つ、というような事態も十分に起こ…

患者提案型・医師主導治験「KISEKI trial」、計画進行中

EGFRチロシンキナーゼ阻害薬既治療T790M耐性変異陰性、もしくは中枢神経系転移による病勢進行後の非小細胞肺がん患者を対象としたオシメルチニブ投与の有効性を検証する「KISEKI」試験が進行中とのこと。 おそらく実地臨床では既に一定数行われているであろ…

第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬使用後の中枢神経転移を有する患者に、オシメルチニブ「倍返し」

オシメルチニブを含む第3世代チロシンキナーゼ阻害薬使用後に中枢神経転移(脳転移、髄膜癌腫症を含む)で病勢進行に至った患者に、オシメルチニブを「倍返し」するという臨床試験が行われたようだ。 毒性について、肝障害に関する記載はないが、下痢はGrade…

KEYNOTE-799試験 化学免疫放射線療法

現在のところ、局所進行非小細胞肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の出番は、化学放射線療法後のデュルバルマブ維持療法のみである。 今回の臨床試験では、ペンブロリズマブを同時併用で開始して、最大17コース(1年間)続けるというもの。 治療スケ…

・いまさらと言われるのを覚悟でLUME-Lung 1試験のおさらい

既治療進行非小細胞肺がんに対するドセタキセル+ニンテダニブの有効性を検証したLUME-Lung 1試験について触れます。 欧州では標準治療のひとつとされていますが、我が国では肺がんに対するニンテダニブの保険適応はなく、抗腫瘍薬としては使用できません。 …

局所進行非小細胞肺癌に対する術前化学免疫療法

術前化学療法にデュルバルマブを絡めて、治療成績を上げようというコンセプトの第II相試験。 似たような試験は我が国でも行われているが、期待していいのではないだろうか。 SAKK 16/14: Anti-PD-L1 antibody durvalumab in addition to neoadjuvant chemoth…

・第II相CITYSCAPE試験 Tiragolumab+アテゾリズマブ併用療法

少し前に、抗TIGIT抗体Tiragolumabについて、以下のような記事を書きました。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e974049.html 2020年のASCO年次総会で、Tiragolumabのランダム化第II相試験についての報告があったようです。 どうもPD-L1≧50%ならば…

・CheckMate227試験とCheckMate9LA試験

免疫チェックポイント阻害薬は、高額医療でありながらも、肺がん薬物療法の領域では確固たる地位を築きました。ドライバー遺伝子変異陰性なら、早い段階で免疫チェックポイント阻害薬を使用することを考えなければなりません。PD-L1発現割合が50%以上ならペ…

・ALEX試験、最新の生存解析結果

我が国において、アレクチニブはALK陽性肺がん初回治療の不動の第一選択と言っていいでしょう。 このことを決定づけた第III相臨床試験、標準投与量が我が国と他国で異なることから、我が国ではJ-ALEX試験として、他国ではALEX試験として施行されました。 今…

オシメルチニブ+ABBV-399

EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんの患者さんで、オシメルチニブに耐性化した後、どうするか。 普通に考えれば化学療法への移行というところだろう。 臨床試験では、オシメルチニブ+αの治療がいろいろと試されている。 オシメルチニブと、c-MET抗体−…

ドライバー遺伝子変異検査に関する要望書

MET、NTRK遺伝子変異を検出するにあたって、保険診療上の歪みを指摘した要望書が、日本肺癌学会と日本肺がん患者連絡会から厚生労働省に宛てて提出されたとのこと。 もっともな話。 エキスパートパネルにかける必要すらないように感じる。 EGFR、ALK、ROS1が…

・わかりやすい字を書きましょう。

中学3年生の時の担任の先生の教えで、今でも肝に銘じていることがあります。 「美しい字を書く必要はないが、誰にでもわかる字を書きなさい」 私は幼稚園から高校まで書道を習いました。 しかしいまでは、書道で習ったことよりも、たったの一文で表された上…

・テクノロジーの進歩とともに失われていくもの

テクノロジーの進歩とともに、失われていくものがあります。 新型コロナウイルスとともにリモートコミュニケーションが普及し、face to face交流の一部は確実に失われるでしょう。 そのほかに、最近失われたなあと感じるものを挙げてみます。 ・CDの普及とと…