・CheckMate227試験とCheckMate9LA試験

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 免疫チェックポイント阻害薬は、高額医療でありながらも、肺がん薬物療法の領域では確固たる地位を築きました。ドライバー遺伝子変異陰性なら、早い段階で免疫チェックポイント阻害薬を使用することを考えなければなりません。PD-L1発現割合が50%以上ならペンブロリズマブ単剤で、それ以下なら化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用が有効とされています。  

 しかし、2019年ごろから、こんなことを方々で耳にし始めました。

・免疫チェックポイント単独では、治療開始初期の病勢進行により、一定期間は生存曲線が化学療法群に劣る

・PD-L1高発現であっても、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を併用することで、治療開始初期の病勢進行を抑えられ、かつ免疫チェックポイント阻害薬による長期奏効が期待できるのではないか

 じゃあ、もうPD-L1なんて測定しなくてもいいんじゃない?と思います。

 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性を検証するCheckMate-227試験では、PD-L1の発現状態がどうであれ、治療成績はあまり変わりませんでした。

 そして、実際にニボルマブ+イピリムマブ併用療法に治療初期の化学療法を追加する第III相臨床試験、CheckMate-9LA試験が行われました。結局、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法併用が有意に全生存期間を延長したということです。それも、最初の中間解析時点よりも、2回目の解析時点の方が、両群間の生存曲線が末広がりに広がって、比例ハザード性を綺麗に保っていました。あっぱれあっぱれ、と賞賛したいところですが・・・。対照群における化学療法単独での生存期間中央値が10.8ヶ月というのは、ちょっと成績が悪すぎないでしょうか。

 

 

 

 Nivolumab (NIVO) + ipilimumab (IPI) + 2 cycles of platinum-doublet chemotherapy (chemo) vs 4 cycles chemo as first-line (1L) treatment (tx) for stage IV/recurrent non-small cell lung cancer (NSCLC): CheckMate 9LA.

 

Martin Reck, et al.

ASCO 2020 Abst. #9501

 

背景:

 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、進行非小細胞肺がんの一次治療において、PD-L1発現状態にかかわらず全生存期間と奏効持続期間を化学療法に比べて改善することが、CheckMate-227試験において示されている。我々は、一定のコース数に限定した化学療法をニボルマブ+イピリムマブ併用療法治療初期に組み合わせることにより、PD-1とCTLA-4の二重阻害によって得られる持続的な生存期間延長効果が立ち上がるまでの、早期の病勢コントロールが得られるのではないかと仮説を立てた。CheckMate9LA試験は第III相ランダム化比較試験であり、進行・再発非小細胞肺がん患者の一次治療において、ニボルマブ+イピリムマブ+2コースの化学療法併用療法と、化学療法単独の効果を評価した。

 

方法:

 成人した患者で、治療歴がなく、組織学的に診断が確認されたIV期もしくは術後再発の非小細胞肺がん患者で、ECOG-PSは0-1、EGFRもしくはALKの遺伝子異常を認めない患者を対象に、1:1の割合で以下の治療群に無作為割付を行った。NI-Chemo群では、ニボルマブ360mg/回を3週ごと、イピリムマブ1mg/kgを6週ごと、化学療法を治療開始から2コース投与し、患者数は361人だった。Chemo群では化学療法のみを4コース投与し、患者数は358人だった。割付調整因子はPD-L1の発現状態(1%未満 vs 1%以上)、性別、組織型(扁平上皮がん vs 非扁平上皮がん)とした。化学療法の内容は、組織型に応じて決めることとした。非扁平上皮非小細胞肺がんの患者で、Chemo群に割り付けられた患者は、ペメトレキセド維持療法を受けられることとした。NI-Chemo群の患者は、病勢進行が確認されるまで、忍容不能の毒性が出現するまで、あるいは投与期間が2年間に達するまでは、ニボルマブ、イピリムマブの投与を継続することとした。主要評価項目は全生存期間で、322件のイベントが発生した時点で中間解析を行うこととした。副次評価項目は無増悪生存期間、奏効割合、PD-L1発現状態ごとのサブグループ解析とした。探索的評価項目として、安全性・忍容性を設定した。

 

結果:

 患者背景は治療群間で均等だった。中間解析(経過観察期間の最短値は8.1ヶ月)時点で、全生存期間は有意にNI-Chemo群で延長していた(ハザード比0.69、96.71%信頼区間は0.55-0.87、p=0.0006)。統計学的に有意な無増悪生存期間の延長、奏効割合の改善も確認された。さらに観察期間を長くとった(経過観察期間最短値は12.7ヶ月)ところ、Chemo群に対するNI-Chemo群の全生存期間延長における優位性は維持されており、生存期間中央値はNI-Chemo群で15.6ヶ月、Chemo群で10.9ヶ月だった(ハザード比0.66、95%信頼区間は0.55-0.80)。1年生存割合はNI-Chemo群で63%、Chemo群で47%だった。PD-L1や組織型に即した様々なサブグループ解析を行っても、NI-Chemo群の優位性は変わらなかった。Grade 3-4の治療関連有害事象は、NI-Chemo群で47%、Chemo群で38%だった。

 

結論:

 CheckMate 9LA試験は主要評価項目を達成し、ニボルマブ+イピリムマブ+治療初期の化学療法併用レジメンは、化学療法単独と比して有意に全生存期間を延長した。新規の毒性は認めなかった。