・第II相CITYSCAPE試験 Tiragolumab+アテゾリズマブ併用療法

 

 少し前に、抗TIGIT抗体Tiragolumabについて、以下のような記事を書きました。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e974049.html

 

 2020年のASCO年次総会で、Tiragolumabのランダム化第II相試験についての報告があったようです。

 どうもPD-L1≧50%ならば、Tiragolumabとアテゾリズマブの相乗効果がさらに高まる様子です。

 当然のことながら、Tiragolumabとニボルマブやペンブロリズマブ、デュルバルマブを併用したらどうなるんだろう、という発想が浮かんできます。

 とはいえ、実地臨床に使えるようになったときは、Tiragolumabとアテゾリズマブの併用しか認めない、ということになるんでしょうね。

 

 

 

Primary analysis of a randomized, double-blind, phase II study of the anti-TIGIT antibody tiragolumab (tira) plus atezolizumab (atezo) versus placebo plus atezo as first-line (1L) treatment in patients with PD-L1-selected NSCLC (CITYSCAPE).

 

Delvys Rodriguez-Abreu et al., ASCO 2020 Abst. #9503

 

背景:

 免疫調整受容体TIGITは新しい抑制性免疫チェックポイント分子で、非小細胞肺がんを含む多種のがんにおいて、活性化T細胞やNK細胞に発現している。第I相試験(GO30103試験)では、TIGITとPD-L1双方のシグナル伝達系をtiragolumabとアテゾリズマブを用いて共に阻害することにより、未治療のPD-L1陽性非小細胞肺がん患者の奏効割合をPD-1 / PD-L1いずれかのみを阻害する治療に比べて改善する可能性が示された。今回は非小細胞肺がん患者に対する初回治療として、tiragolumabとアテゾリズマブの併用療法の有効性と安全性を検証する第II相試験を計画した。対照群としてプラセボとアテゾリズマブの併用療法を設定した。

 

方法:

 今回の二重盲検プラセボ併用無作為化前向き臨床試験において、PD-L1陽性(TPS≧1%, 使用抗体は22C3 IHC pharmDx Dako assay)、未治療、測定可能病変を有する、ECOG PS 0-1、EGFRもしくはALK遺伝子異常をもたない、局所進行もしくは進行非小細胞肺がん患者を対象とした。対象となった患者は1:1の割合で、TA群(Tiragolumab 600mg静注+アテゾリズマブ1200mg静注、3週ごと)もしくはPA群(プラセボ+アテゾリズマブ1200mg静注、3週ごと)に無作為に割り付けられた。割付調整因子はPD-L1発現状態(TPS≧50% vs TPS 1-49%)、組織型、喫煙歴とした。主要評価項目は担当医評価による奏効割合と無増悪生存期間とした。その他の副次評価項目は奏効持続期間、全生存期間、安全性とした。探索的評価項目として、PD-L1発現ごとの奏効割合、無増悪生存割合をおいた。

 

結果:

 135人の患者がPA群(68人)とTA群(n=67)に割り付けられた。2019年1月30日、追跡期間中央値5.9ヶ月の初回中間解析の時点で、TA群はPA群に対して奏効割合と無増悪生存期間中央値を有意に改善していた。一方、治療関連の有害事象はPA群の72%、TA群の80.6%で認められた。Grade 3以上の有害事象はPA群の19.1%、TA群の14.9%に認められた。患者の治療意志撤回にまで波及するような事例は、PA群の10.3%、TA群の7.5%で認められた。さらに6ヶ月経過した、2019年12月2日、追跡期間中央値10.9ヶ月の時点でも、奏効割合はTA群で37.3%(95%信頼区間は25.0%-49.6%)、PA群で20.6%(95%信頼区間は10.2%-30.9%)、無増悪生存期間中央値はTA群で5.6ヶ月(95%信頼区間は4.2-10.4ヶ月)、PA群で3.9ヶ月(95%信頼区間は2.7-4.5ヶ月)、ハザード比0.58(95%信頼区間は0.38-0.89)と、TA群優位の状態が維持されていた。PD-L1≧50%の患者群では、奏効割合はTA群で66%、PA群で24%で、無増悪生存期間中央値はTA群で未到達(95%信頼区間は5.5ヶ月から未到達)、PA群で4.1ヶ月(95%信頼区間は2.1−4.7ヶ月)、ハザード比0.30(95%信頼区間は0.15-0.61)と、TA群の優位性がさらに高まっていた。一方でTPS 1-49%の患者群では、奏効割合はTA群で16%、PA群で18%で、無増悪生存期間中央値はTA群で4.0ヶ月(95%信頼区間は1.6−5.6ヶ月)、PA群で3.6ヶ月(95%信頼区間は1.5−5.5ヶ月)、ハザード比は0.89(95%信頼区間は0.53-1.49)で、TA群の優位性は失われていた。安全性は忍容可能だった。