・CodeBreaK200試験・・・KRASG12C変異肺がんの標準二次治療はソトラシブへ

 

 KRAS G12C変異陽性の既治療進行非小細胞肺がんに対するソトラシブ内服療法。

 CodeBreaK 200試験において、ドセタキセルとの大規模比較試験で有意に無増悪生存期間を延長したとのことです。

 加えて、副作用もドセタキセルより軽微だった模様です。

 腫瘍縮小効果のみならず、無増悪生存期間延長効果も証明され、この背景を持つ患者さんにとっての新たな標準治療となったと考えてよいでしょう。

 ただし、クロスオーバーが許容されていたとはいえ、全生存期間の延長効果は認められていませんので、そこは踏まえておかなければなりません。

 

 

 

Sotorasib versus docetaxel for previously treated non-small-cell lung cancer with KRASG12C mutation: a randomised, open-label, phase 3 trial

 

Adrianus Johannes de Langen et al.
Lancet. 2023 Feb 7;S0140-6736(23)00221-0. 
doi: 10.1016/S0140-6736(23)00221-0. 
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背景:
 ソトラシブはGTPaseタンパクであるKRASのG12C変異型に対する特異的かつ非可逆的な阻害薬である。今回は、既治療KRASG12C変異陽性非小細胞肺がん患者に対するソトラシブの有効性と安全性を標準治療と比較した。

 

方法:
 ランダム化オープンラベル第III相臨床試験を、22か国、148施設の共同試験として企画した。18歳以上のKRASG12C変異陽性進行非小細胞肺がん患者で、プラチナ併用化学療法とPD-1 / PD-L1阻害薬による前治療後に病勢増悪したものを対象とした。新規出現、もしくは進行しつつある未治療脳転移巣や、自覚症状を伴う脳転移巣を合併している患者は対象外とした。KRASG12C変異以外に、EGFRやALKなど、認可済みの分子標的薬を利用できる遺伝子異常を有するものも除外した。ドセタキセルによる前治療歴があるものも除外した(ただし、術前療法もしくは術後補助療法としてドセタキセルを使用し、その治療が終了してから6か月間は病勢が進行しなかった患者は適格とした)。KRASG12C阻害薬の前治療歴があるもの、プロトコール治療開始時点で他のがん薬物療法開始から28日間以内のもの、プロトコール治療開始からさかのぼること2週間以内になんらかの放射線治療を受けたものも除外した。適格患者は、ソトラシブ群(960mg/日、1日1回内服)とドセタキセル群(75mg/㎡を3週間に1回点滴)に1:1の比率で無作為に割り付けられた。進行肺がんに対するがん薬物療法治療歴(1レジメン vs 2レジメン vs 3レジメン以上)、人種(アジア人 vs 非アジア人)、中枢神経系への転移病歴(あり vs なし)を割り付け調整因子とした。独立委員会による判定に基づく病勢進行、有害事象による忍容不能、他の抗がん治療開始、試験参加への同意取り下げ、患者死亡のいずれかの事象が発生するまではプロトコール治療を継続した。主要評価項目は無増悪生存期間で、盲検化された条件で独立委員会が判定し、intention-to-treatの手法に基づいて治療群間比較を行った。ドセタキセル群の患者において画像診断上病勢進行と判定された場合、二次治療としてソトラシブを使用すること(クロスオーバー)が認められた。プロトコール治療を受けた全ての患者に対して安全性評価を行った。

 

結果:

 2020年6月4日から2021年4月26日までに、345人の患者が無作為割り付けを受けた(ソトラシブ群171人(50%)、ドセタキセル群174人(50%))。ソトラシブ群の169人(99%)、ドセタキセル群の151人(87%)は少なくとも1回のプロトコール治療を受けた。追跡期間中央値17.7ヶ月(四分位間16.4-20.1)を経て、ソトラシブ群で優位に無増悪生存期間が延長したことが示された(無増悪生存期間中央値はソトラシブ群5.6ヶ月(95%信頼区間4.3-7.8)、ドセタキセル群4.5ヶ月(95%信頼区間3.0-5.7)、ハザード比0.66(95%信頼区間0.51-0.86)、p=0.0017)。12ヶ月無増悪生存割合はソトラシブ群24.8%、ドセタキセル群10.1%だった。奏効割合はソトラシブ群28.1%(95%信頼区間21.5-35.4)、ドセタキセル群13.2%(95%信頼区間8.6-19.2)で、ソトラシブ群が有意に優れていた(p<0.001)。病勢コントロール割合はソトラシブ群82.5%、ドセタキセル群60.3%、奏効持続期間中央値はソトラシブ群8.6ヶ月(95%信頼区間7.1-18.0)、ドセタキセル群6.8ヶ月(95%信頼区間4.3-8.3)だった。ソトラシブ群の36%、ドセタキセル群の42%がプロトコール治療終了後の後治療を受けた。ドセタキセル群の34%がKRASG12C阻害薬を使用した(26%はソトラシブ)。生存期間中央値はソトラシブ群10.6ヶ月(95%信頼区間8.9-14.0)、ドセタキセル群11.3ヶ月(95%信頼区間9.0-14.9)だった(ハザード比1.01、95%信頼区間0.77-1.33、p=0.53)。

 ソトラシブの忍容性は良好で、Grade3以上の有害事象をソトラシブ群56人(33%)、ドセタキセル群61人(40%)に認めた。ソトラシブ群で頻度が高かったGrade3以上の有害事象は下痢(20人(12%))、ALT上昇(13人(8%))、AST上昇(9人(5%))だった。ドセタキセル群で頻度が高かったGrade3以上の有害事象は好中球減少(13人(9%))、倦怠感(9人(6%))、発熱性好中球減少(8人(5%))だった。重篤な有害事象はソトラシブ群の11%、ドセタキセル群の23%に認めた。プロトコール治療中止を必要とする有害事象はソトラシブ群の10%、ドセタキセル群の11%で認めた。治療関連死はソトラシブ群1人(間質性肺障害)、ドセタキセル群2人(腸閉塞1人、多臓器不全1人)だった。

 

結論:

 がん薬物療法治療歴のあるKRASG12C遺伝子変異陽性の進行肺がんに対する治療として、ソトラシブはドセタキセルと比較して有意に無増悪生存期間を延長し、毒性はより軽微だった。