・いまさらと言われるのを覚悟でLUME-Lung 1試験のおさらい

f:id:tak-OHP:20220324133536j:plain

 既治療進行非小細胞肺がんに対するドセタキセル+ニンテダニブの有効性を検証したLUME-Lung 1試験について触れます。

 欧州では標準治療のひとつとされていますが、我が国では肺がんに対するニンテダニブの保険適応はなく、抗腫瘍薬としては使用できません。

 とはいえ、「進行性線維化を伴う間質性肺炎」の患者さんにニンテダニブを使うことができるようになりましたので、進行性線維化を伴う間質性肺炎の患者さんが進行非小細胞肺がんを合併したときには、二次治療以降でドセタキセルを使用する、という状況は起こりうるでしょう。

 レトロスペクティブな検討でもいいので、進行性線維化を伴う間質性肺炎の患者さんが進行非小細胞肺がんを合併したとき、ニンテダニブを使用しつつ他のがん薬物療法を行った場合の治療成績を見てみたいところです。

 

 ところで、本試験における治療関連死の確率はやや高いようです。

 ドセタキセル+ニンテダニブ併用療法群において治療関連死の割合が5.3%というのは、無視できない数字です。

 ドセタキセル単剤療法でも3.8%に上っており、参加施設における実地臨床の安全性そのものが問われかねない結果です。

 

 

 

Docetaxel plus nintedanib versus docetaxel plus placebo in patients with previously treated non-small-cell lung cancer (LUME-Lung 1): a phase 3, double-blind, randomised controlled trial

 

Martin Reck et al., Lancet Oncol VOLUME 15, ISSUE 2, P143-155, FEBRUARY 01, 2014

 

背景:

 第III相LUME-Lung 1試験は非小細胞肺がん患者に対する二次治療としてのドセタキセル+ニンテダニブ併用療法の有効性と安全性を評価した試験である。

 

方法:

 27ヶ国、211の参加施設から、初回化学療法後に病勢進行に至ったIIIB / IV期の非小細胞肺がん患者を集積した。割付調整因子はECOG-PS、過去のベバシズマブ投与歴、組織型、脳転移の有無とした。1:1の比率で無作為割付を行った。DN群では、ドセタキセル75mg/?を1日目に点滴投与し、ニンテダニブ200mg/回を1日2回、2日目から21日目まで服用した。D群では、ドセタキセル75mg/?を1日目に点滴投与し、偽薬を1日2回、2日目から21日目まで服用した。両群ともにプロトコール治療を3週ごとに反復し、忍容不能の有害事象が起こるまで、あるいは病勢進行に至るまで治療を継続した。担当医も患者もどちらの治療群に割り付けられたかは知らされなかった。主要評価項目は中央評価による無増悪生存期間とし、714件のイベントが発生した時点で解析することとした。主な副次評価項目は全生存期間とし、1121件のイベントが発生した時点で、ステップワイズ法に沿って以下の患者群について段階的に解析することにした。?初回化学療法から9か月以内に病勢進行に至った腺がん患者について、?腺がん患者全体について、?全患者について。

 

結果:

 2008年12月23日から2011年2月9日にかけて、1314人の患者を無作為割付した。655人はDN群に、659人はD群に割り付けられた。追跡期間中央値7.1ヶ月(四分位範囲は3.8-11.0ヶ月)の時点で主要評価項目に関する解析を行った。無増悪生存期間はDN群で有意に改善していた(中央値はDN群3.4ヶ月(95%信頼区間は2.9-3.9ヶ月)、D群2.7ヶ月(95%信頼区間は2.6-2.8ヶ月)、ハザード比0.79(95%信頼区間は0.68-0.92)、p=0.0019)。追跡期間中央値31.7ヶ月(四分位範囲27.8-36.1ヶ月)の時点で、初回化学療法から9か月以内に病勢進行に至った腺がん患者集団において、DN群(206人)はD群(199人)に対して有意に生存期間が延長していた(中央値はDN群10.9ヶ月(95%信頼区間は8.5-12.6ヶ月)、D群7.9ヶ月(95%信頼区間は6.7-9.1ヶ月)、ハザード比0.75(95%信頼区間は0.60-0.92)、p=0.0073)。同様の結果は腺がん患者全体でも認められ、DN群(322人)はD群(336人)に対して有意に生存期間が延長していた(中央値はDN群12.6ヶ月(95%信頼区間は10.6-15.1ヶ月)、D群10.3ヶ月(95%信頼区間は8.6-12.2ヶ月)、ハザード比0.83(95%信頼区間は0.70-0.99)、p=0.0359)。しかし、全患者を対象とすると、生存期間に有意差は認められなかった(中央値はDN群10.1ヶ月(95%信頼区間は8.8-11.2ヶ月)、D群9.1ヶ月(95%信頼区間は8.4-10.4ヶ月)、ハザード比0.94(95%信頼区間は0.83-1.05、p=0.2720)。Grade 3以上の有害事象はDN群でD群より多く認められ、主なものは下痢(6.6% vs 2.6%)、可逆性のALT上昇(7.8% vs 0.9%)、可逆性のAST上昇(3.4% vs 0.5%)だった。DN群のうち35人(5.3%)、D群のうち25人(3.8%)は有害事象により死亡した。主な死因としては敗血症(DN群5人、D群1人)、肺炎(DN群2人、D群7人)、呼吸不全(DN群4人、D群0人)、肺塞栓症(DN群0人、D群3人)が挙がった。

 

結論:

 プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った進行非小細胞肺がん患者に対する二次治療として、ドセタキセル+ニンテダニブ併用療法は、とりわけ腺がん患者に対して有効だった。

 

 

 関連記事です。

 従来我が国では特発性肺線維症にしか使えなかったニンテダニブですが、「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」に対象が拡大されました。こうした患者さんが進行非小細胞肺がんを合併した場合、積極的に使用を検討すべきだと思います。

oitahaiganpractice.hatenablog.com