2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

・私のレジェンド

長く肺癌診療を続けていると、レジェンドとしか言いようのない患者さんに出会います。 局所進行肺癌に対して、右片肺切除+縦郭リンパ節郭清といった大きな手術を受けて、長期生存している患者さん。 進行肺癌に対する化学療法を繰り返しながら、胃転移、大…

・EGFR遺伝子変異陽性肺がんの一次治療は、オシメルチニブが本当に正解なのか

2021年日本臨床腫瘍学会のPresidential Session 2でNEJ026試験のupdated dataが公表されていました。 NEJ-026試験は、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者を対象に、エルロチニブ+ベバシズマブ併用療法とエルロチニブ単剤療法の有効性を比較する試験…

・POSEIDON試験・・・CheckMate-9LAレジメンの向こうを張れるか?

デュルバルマブが関わる臨床試験は、海洋に関わるコードネームが様々ついています。 PACIFIC(太平洋)。 CASPIAN(カスピ海)。 MYSTIC(コネチカット州の港町) そして今回のPOSEIDON(海洋神)。 デュルバルマブは抗PD-L1抗体、Tremelimumabは抗CTLA-4抗…

・TATTON試験より、デュルバルマブとオシメルチニブの併用療法(ELCC2016)

2016年に報告された、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する、デュルバルマブとオシメルチニブの併用療法について、5年ぶりに再掲します。 この結果を踏まえて、TATTON試験の発展形と考えてよいORCHARD試験において、本併用療法は治験治療モジュールからは…

・TATTON試験におけるオシメルチニブ+Savolitinib・・・日本人患者集団の解析結果

ORCHARD試験のモジュール1として設定されているオシメルチニブ+Savolitinib併用療法について。 ORCHARD試験の前段階の臨床試験であるTATTON試験は、以前も何度か取り上げており、そのうちオシメルチニブ+Savolitinib併用療法の全体集団に関する解析結果は2…

・オシメルチニブとMET阻害薬savolitinibの併用療法

ORCAHRD試験に関連した話題として、その前段階の試験だったTATTON試験の結果について、約2年ぶりに再掲します。 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんで、オシメルチニブ初回治療後に耐性化した際、次に何をするかという話題であり、我が国の実臨床におい…

・ORCHARD試験・・・進化する臨床試験デザイン

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんの患者さんの一次治療として、現時点で最も頻用されていると考えられるオシメルチニブ。 しかし、分子標的薬の常として、いつかは耐性化・病勢進行の時期を迎え、次の治療をどうするか考えなければならない時期がやって…

・HER2遺伝子変異陽性肺がんに対するtrastuzumab deruxtecan

HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん。 苦い思い出です。 もう7年ほども前にさかのぼりますが、1人だけこのタイプの患者さんを担当したことがあります。 もともと他院で診療されていた患者さんでしたが、プラチナ併用化学療法と丸山ワクチンを併用したいとい…

・新型コロナウイルスワクチンの効果と考え方

この記事は、2021/10/04が初版です。 現在世界的に広がっているオミクロン株の感染爆発は、当時はその予兆すらありませんでした。 連日新規感染者数の記録が更新されている今日にあたり、学ぶべき点はないかと考え、一部書き加えて改めて掲載します。 新型コ…

・少数の遠隔転移(オリゴ転移)に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬と定位放射線照射の併用療法

少数の遠隔転移を有するEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対する局所療法の有効性について。 個人的な見解に過ぎませんが、方法論としては放射線治療のほか、手術も考えていいのではないかと思っています。 局所症状の治療ないしは予防に役立つし、腫…

・ドライバー変異林立時代の診断の在り方を真剣に考える

肺がん領域におけるドライバー遺伝子変異検索の対象が本格的に広がってきました。 薬物療法効果予測因子として広義に捉えれば、現時点で以下のバイオマーカーが(近い将来のものも含めて)対象となります。 ・EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失、エクソン21-L8…

・エドルミズ、また使えず

他の医療機関からご依頼を受けて、しばらくお預かりしている高齢の非小細胞肺がんの患者さんがいらっしゃいます。 困ったことに、転院後ずっとお食事がのどを通らず、かなりひどい脱水状態になってしまったため、点滴での治療を継続しています。 このままで…

・肺葉切除か、区域切除か・・・JCOG0802 / WJOG4607L

肺がんに対する標準的な手術療法は、病巣を含む肺葉切除+2群リンパ節郭清術とされます。 私たちの肺は、右は上葉・中葉・下葉の3つの部分に、左は上葉(上大区+舌区)、下葉の2つの部分に分かれます。 例えば、肺がんの病巣が右肺上葉にあり、手術可能と…

・進行前立腺がんに肺がんを合併した高齢患者さん

結核性胸膜炎、一過性脳虚血発作、肺炎球菌性肺炎の既往がある患者さんでした。 ご家族から顔色が悪いと言われ、かかりつけのクリニックを受診しました。 酸素欠乏を伴う肺炎を指摘され、私のところにお越しになりました。 筋金入りの重喫煙者です。 1日2…

・抗LAG-3抗体、Relatlimab

PD-1、CTLA-4に加えて、がん治療上のターゲットになる免疫チェックポイントの1つとして、LAG-3が知られています。 抗原提示細胞とT細胞が会合する際、T細胞の細胞膜表面に発現しているLAG-3蛋白は抗原提示細胞のMHC-class IIと抗原ペプチドの複合体に結合し…

・新型コロナウイルス オミクロン株感染とその後のウイルス排出期間

新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を奮っています。 ・・・猛威を奮っている、というのは言い過ぎかもしれません。 世界的にも、我が国でも、感染者数は爆発的に増加していますが、その一方で重症者や死亡者はほとんど増えていません。 2022/01/13に国…

・SPIKESのまとめ

ここ1週間くらい、シリーズとして「悪い知らせの伝え方」「SPIKES」についてまとめてきました。 最後にもう一度、スライドだけまとめて掲載します。 面談に参加されるみなさんが一連の流れを踏まえておくと、きっとお役に立つと思います。

・SPIKESの最後のS

今回は「SPIKES」の最後の「S」のお話です。 一連の面談が終了し、最後の締めくくりです。 SPIKES最後の「S」は「Strategy」の「S」、または「Summary」の「S」です。 悪い知らせを伝える際の面談は、長い時間を要することがほとんどです。 患者さん、ご家族…

・SPIKESのE

今回は、「SPIKES」の「E」を扱います。 「SPIKES」の「E」は「Empathy」「Exprolation」の「E」です。 「Emotion」は「感情移入」「共感」です。 「Exprolation」は「探索」です。 前回の「K」の際に「K」と「E」は本来不可分なのでは、といった締めくくり…

・SPIKESのK

今回は、「SPIKES」の「K」を扱います。 「SPIKES」の「K」は、「Knowledge」から来ています。 準備を重ねて、いよいよ患者さんに悪い知らせを伝える段階です。 「S」「P」「I」での内容を踏まえて、過不足なく医療情報を患者さんに伝えます。 言うまでもあ…

・SPIKESのI

今回は「SPIKES」の「I」を扱います。 「I」は「Invitation」の頭文字です。 「Invitation」=「招待」? 患者さんから、ご自宅にでも招待されるんでしょうか。 それとも、医療従事者が患者さんをどこかに招待するんでしょうか。 どっちもピンと来ませんよね…

・SPIKESのP

今回は、「SPIKES」の「P」を扱います。 「P」は「Perception」の頭文字です。 「Perception」の意味は「認識」「理解」です。 患者さんもしくは家族、敷衍すれば説明する医療従事者側の「認識」「理解」です。 当然のことながら、面談開始前の参加者それぞ…

・SPIKESの最初のS

今回は、「SPIKES」の最初の「S」について扱います。 「S」は「Setting」の頭文字です。 日本語訳すれば「事前準備」といったところでしょうか。 本稿を読んでおられる方には、病院で自分・もしくは家族の病状説明を受けたことがある方もいらっしゃると思い…

・悪い知らせの伝え方「SPIKES(スパイクス)」はなぜ必要なのか

悪い知らせの伝え方「SPIKES(スパイクス)」。 がん診療においてなぜこの面談技術が必要なのか、一例を挙げてみます。 「SPIKES」はASCO(米国臨床腫瘍学会)公式カリキュラムの第1巻に収められています。 この冊子は非売品で、今でも大切に手元に保管して…

・悪い知らせの伝え方、受け取り方

11年ぶりに、このテーマについて更新します。 この期間に肺癌診療、ことに肺癌薬物療法は随分と様変わりしました。 しかし、このテーマについてはずっと色褪せず、変わりません。 いつまでも心にとどめておきたいテーマです。 ***************************…

・そろりと面会制限の限定解除・・・からの再制限

この記事の初版を書いたのは2021年11月13日だったのですが・・・。 2か月もたたないうちに再制限せざるを得なくなりました。 残念ですが仕方がないです。 これが「実証実験」の結果です。 人的交流、経済回転を優先するのは世界的な潮流です。 郷土…

・あれから20年も、この先10年も

2020年11月のこと、ネット上に、米国の抗腫瘍薬開発のオピニオンリーダーから以下のようなコメントが寄せられていたので引用しました。 かなり意訳してます。 この20年は、私の社会人としてのキャリアとぴったり重なり、とても共感します。 再掲します。 ***…

・各種マスクによる新型コロナウイルス拡散予防効果

2022年01月05日、我が国でもいよいよ、オミクロン株による新型コロナウイルス感染流行の第6波が本格的に到来しました。 報道陣の質問に対して、大阪府の吉村知事が高らかに宣言していましたね。 共感します。 ワクチン接種がいきわたり、治療薬も様々使える…

・オミクロン襲来

冒頭に掲げたのは2021年10月16日の日本経済新聞からの抜粋です。 当時は新型コロナウイルスデルタ株の流行が収束しつつある頃でした。 1日あたりの新規感染者数は、米国で85000人弱、我が国で500人強となっています。 その他の記事には 「…

・がん治療とその後の療養生活

母の誕生日にきょうだいで贈った胡蝶蘭です。 温泉熱を利用した温室で胡蝶蘭を育てるのが、亡くなった父の趣味でした。 この胡蝶蘭は温室に入れずに玄関においていますが、いまの環境を気に入ってくれているのか、贈った翌年も、その翌年もこうして花をつけ…