・新型コロナウイルス オミクロン株感染とその後のウイルス排出期間

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 新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を奮っています。

 ・・・猛威を奮っている、というのは言い過ぎかもしれません。

 世界的にも、我が国でも、感染者数は爆発的に増加していますが、その一方で重症者や死亡者はほとんど増えていません。

 2022/01/13に国立感染症研究所から公表された内容では、

・2022/01/10までに厚生労働省のシステムに登録された817人のオミクロン株感染者データを解析

・症状のある人は87%で、発熱、咳、頭痛、全身倦怠感

・軽症者は61.7%

・中等症は0.7%

・重症者はなし

・ワクチンを3回接種した人は1.2%

・ワクチンを2回接種した人は59.9%

・ワクチンを1回接種した人は3.2%

・ワクチンを接種していなかった人は18.1%

・20代は32%

・30代は16.4%

・40代は15.8%

と報告されており、酸素吸入を必要とする中等症・重症は1%にも満たないこと、ワクチンを接種していても感染すること、40代以下が全体の3分の2を占めることが分かります。

 中等症・重症の患者さんが少ないことは、デルタ株とは明らかに異なります。

 そのため、欧米諸国がそうしているように、オミクロン株に対する社会・医療の在り方は、これまでとは別の考え方をしなければならないように思います。

 新型コロナウイルス感染症に関して、我が国はこれまでずっと、他の国の動向を見ながら対策を練ることができる、恵まれた環境にあります。

 政府方針を後追いするだけでなく、企業体、地域の共同体、家族、個人と様々なレベルで、それぞれがよく考えて先んじた行動をとるべきでしょう。

 

 一方、オミクロン株に対峙する医療機関・宿泊療養施設では、デルタ株流行(国内第5波)までとは異なる難問に直面しています。

 病状が軽快した患者さん、あるいは無症状ながらPCR陽性と判明した方は、いつから退院、あるいは宿泊療養施設を退去できるのでしょうか。

 デルタ株流行時は、症状出現もしくはPCR陽性確認から10日間経過し、かつ症状軽快から72時間経過すれば退院・退去可能とされていましたが、今のところオミクロン株はより厳しく管理されています。

 ワクチン接種完了者はデルタ株流行時と同様に取り扱われますが、ワクチン非接種者は、原則としてPCRで2回(各回24時間以上間隔をあけて)陰性が確認できない以上は、当面退院・退去できないと聞きます。

 ワクチン非接種者でも、オミクロン株もデルタ株と同様に扱われるようになれば、もう少し医療機関・宿泊療養施設の逼迫が是正されると思うのですが。

 

 とはいっても、安全性の根拠となるデータが背景になくてはなりません。

 以下のリンクで参照可能な2022/01/05改正の厚生労働省からの事務連絡、2022/01/13公表の国立感染症研究所のデータを見る限り、

1)新型コロナウイルスワクチン接種者はデルタ株流行時と同様の取り扱いでよい

2)ワクチン非接種者では、PCR検査結果は以下のように推移する

診断からの日数 RNA検出検体数
および割合n (%)
0-2日目 7/11 (63.6)
3-6日目 11/13 (84.6)
7-9日目 7/13 (53.8)
10-13日目 3 /10 (30.0)
14日目以降 1/8 (12.5)

ということのようです。

 ワクチン非接種者の場合、診断から9日目まではまだ50%以上の方でPCR陽性、10-13日経過後は30%まで低下、14日目以降は10%強まで低下するとのことです。

 PCR検査結果はウイルスのRNA断片を検出している(感染性のあるウイルス粒子のみならず、感染性のないウイルスの残骸も検出している)ので、実際には感染性を持ったウイルス粒子の排出期間はもっと短いのではないかと予想されます。

 感染性のあるウイルス粒子そのものの排出期間に関するデータ公表、あるいは医療機関・宿泊療養施設稼働状況の更なる逼迫を受けて、いずれワクチン非接種者におけるオミクロン株の取り扱いも緩和されるのではないかと予想していましたが、2022/01/14の報道資料を見る限り、ワクチン非接種者も従来通りの方針にするように日本政府は方針を固めたようです。

 とはいえ、感染したらかなり長期間にわたって行動制限を強いられるのは、当面間違いありません。

 ワクチン非接種者が、急に2回ないし3回接種できるわけでもありません。

 感染リスクのある行動を避ける、不織布マスクを着用する、手洗い・うがいを励行するといった基本的な対策がなにより肝要です。

 

<出典>

厚生労働省からの事務連絡(令和4年1月5日改正):000876461.pdf (mhlw.go.jp)

 

SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第1報):感染性持続期間の検討 (niid.go.jp)

 

SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査:新型コロナワクチン未接種者におけるウイルス排出期間(第2報) (niid.go.jp)

 

新型コロナ: 変異型検査の体制縮小、オミクロン置き換わりで 厚労省: 日本経済新聞 (nikkei.com)