2018-01-01から1年間の記事一覧

ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、適応拡大

年の瀬を迎え、年末年始を病院で迎えざるを得ない患者さんが急性期病院からバタバタと転院してきている。 そんなこんなで、すっかり日記を書くのが滞ってしまった。 思えば、日常臨床を変える大きな保険承認は、ここ最近では年末にされることが多くなった気…

フェントステープとアブストラル

疼痛コントロールを続けている入院患者の治療内容がなかなかまとまらない。 転院当時はオキシコンチン+オキノームの組み合わせで治療していたが、眠気やだるさが強いとのことで、フェントステープに切り替えてみた。 疼痛緩和と眠気のバランスのいいところ…

がん薬物療法専門医資格更新試験

2018/11/23、今年度のがん薬物療法専門医資格更新試験が、東京は御茶ノ水のソラシティ・カンファレンスセンターで行われた。 私の場合、本来は来年度が資格更新年次だが、制度上は更新年次の1年前から試験を受けられることになっている。 今年度は子供も高校…

お誕生日おめでとう

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e946171.html この記事のときに、患者さんがお誕生日を迎えられた、ということを書いた。 お部屋に飾られていたご家族による飾りつけ、素敵だったので許可を得て掲載させていただくことにした。 お誕生日、おめで…

インフルエンザとゾフルーザ

今年も、もうすぐインフルエンザの季節がやってくる。 昨年は、免疫チェックポイント阻害薬とインフルエンザワクチンに絡めて、こんな記事を書いた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e920450.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e9…

縮小手術か、定位放射線照射か

こんなご質問を頂いた。 「早期肺癌の高齢者に対して、縮小手術と定位放射線照射、どっちがいいんでしょうか」 「下記の2つ文献では全く違った結果ですが先生はこの結果の差はどこから出てくるとお考えですか」 「また手術できるなら先生は手術を勧められま…

「緩和ケア」という言葉

ずっと考えていたんだけど、「緩和ケア」という言葉は本当に必要な語彙なんだろうか。 患者の苦痛を和らげる、というのは、医療従事者にとっては当たり前の使命であって、わざわざがん患者の診療のときに切り分けて考える必要があるんだろうか。 痛いと困っ…

Entrectinib - ROS1 / NTRK inhibitor, underconstruction

以前、ROS1融合遺伝子陽性肺がんで、クリゾチニブ耐性になっちゃったらどうしよう、という相談を頂き、苦し紛れに以下の記事を書いた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e930157.html 苦し紛れで書いた記事をご覧になった別の方から、 「実は、家…

JO25567試験とNEJ026試験・・・エルロチニブ+ベバシズマブの位置づけは・・・?

ずっと棚上げにしてきた話題だが、今日は思い切って取り上げる。 以前もちょっとだけ触れた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e935118.html EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん患者さんに対して、エルロチニブ単剤療法とエルロチニブ+ベバ…

デュルバルマブは局所進行非小細胞肺がんの生存期間を有意に延長した(PACIFIC試験)

我が国の実地臨床に導入済みだが、局所進行非小細胞肺がんに対する放射線化学療法後のデュルバルマブ療法の効果を検証した第III相PACIFIC試験の生存期間解析結果が論文報告された。 既にNew England Journal of Medicine誌に無増悪生存期間の解析結果が報告…

Avelumabの二次治療はこけてしまった・・・JAVELIN Lung 200試験

多少の条件の違いはあれ、現在我が国では非小細胞肺癌に対する二次治療として、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブといった複数の免疫チェックポイント阻害薬を使うことができる。 今回登場するAvelumabは、アテゾリズマブと同様にPD-L1阻害薬に…

免疫チェックポイント阻害薬(アテゾリズマブ)、いよいよ肺小細胞癌の領域へ

IMpower133の結果が2018年の世界肺癌会議で公表されたようで、早くも内容が論文化されたようだ。 無理もないことで、多分20年ぶりくらいで、進展型肺小細胞がんの薬物療法に関わる第III相試験において生命予後を改善する新治療が出てきたことになる。 ペンブ…

我が国の肺がん死亡数は伸び悩んでいる

「伸び悩んでいる」という表現は、不適切かも知れない。 「肺がんの年間死亡数、80,000人突破は目前」と毎年学生講義で話してきたが、どうもそうはならなさそうだ。 2014年以降、74,000人そこそこで頭打ちとなっており、もうそれほど増えそうにない。 先進諸…

・Brigatinib、進行ALK肺がんの一次治療でクリゾチニブを凌駕 ALTA-1L study

希少疾患で、肺がん診療全体に対するインパクトは大きくないものの、ALK肺がんの話題が続いています。 Brigatinibがクリゾチニブに対して、無増悪生存期間で上回ったとのことです。 第III相試験の結果であるため、素直に捉えれば、進行ALK肺がんの初回治療で…

免疫チェックポイント阻害薬が病状悪化を助長することもある?

本庶先生のノーベル医学生理学賞受賞が決まり、さらに注目度が高まりそうなPD-1 / PD-L1阻害薬。 ただ、効果判定は一筋縄ではいかない。 以前から言われていたPseudo-progression(本当は治療が効いているのに、病巣への炎症細胞浸潤の影響で一時的に病巣が…

次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子変異検索、いよいよ保険適用へ秒読み

新聞からの抜粋ばかりだが、2018年09月29日は、こんな記事もあった。 こちらは、どちらかというと医療費のコストダウンにつながる記事であり、喜ばしい。 少なくとも肺がん領域では、複数の遺伝子異常を一括して調べられるようになるだろう。

治療1回5000万円・・・、ホンマかいな・・・。

唐代の名医、孫思邈はその著書の中で、 「上等の医者は国を治す能力があり、中等の医者は人を治すことができ、下等の医者は病気しか治せない(上医医国、中医医人、下医医病)」 と書き残したらしい。 さて、果たして現代医療はどこに向かっているのか。 以…

PD-1発見者の本庶佑先生、2018年ノーベル医学生理学賞受賞

免疫チェックポイント阻害薬のコンセプトであるPD-1 / PD-L1系を発見された京都大学名誉教授の本庶佑(ほんじょたすく)先生。 2018年のノーベル医学生理学賞を受賞することが決定したと速報が入った。 おめでとうございます。 https://news.yahoo.co.jp/pic…

ALK阻害薬ロルラチニブ、2018年9月21日に国内製造販売承認を取得

2018年09月21日、ALK阻害薬であるロルラチニブが内製造販売承認を取得した。 プレスリリースへのリンクを以下に示す。 https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2018/2018_09_21.html 使用条件は、 「ALKチロシンキナーゼ阻害剤に抵抗性又は不耐容のA…

遠路はるばる

今日は、遠くから飛行機に乗って、遠路はるばる入院患者さんがやってきた。 80代の男性。 18歳から60歳まで、1日あたりの喫煙本数が100本と、筋金入りのヘビースモーカーだったそうだ。 60歳のとき、胃がんの手術を受けたのをきっかけに禁煙した様子。 原発…

LC-SCRUM 非小細胞肺癌のスクリーニング研究再開

2018年6月1日以降、中止されていたLC-SCRUM Japanへの患者登録が、本日から国立がん研究センターで再開された様子。 今後、各施設へ改訂版の研究計画書が配布され、それぞれの倫理審査委員会で承認を経て、順次広がっていくだろう。 今回、長期にわたる中断…

FLAURA試験における、オシメルチニブの中枢神経系病変への効果

EGFR阻害薬やらオシメルチニブ、ALK阻害薬ならアレクチニブやLorlatinibが中枢神経系への移行性がたかいことはよく知られている。 中でも、オシメルチニブの中枢神経系への移行性を如実に示すのが、有名な以下の写真ではないだろうか。 オシメルチニブ、AZ51…

ステロイド使用中の患者とPD-1/PD-L1阻害薬の効果

今回、アテゾリズマブ使用中に病勢進行と判断した患者さんは、アテゾリズマブ?コース終了時点で副腎機能不全に陥った。 このころはいろいろと変なことが起こっていて、過去にペンブロリズマブで出たことのある多型紅斑とは違った、暗赤色の干しブドウみたい…

ペンブロリズマブ後のアテゾリズマブ、残念ながら無効中止

進行肺腺癌、ドライバー遺伝子変異なし、PD-L1発現30%の患者さん。 ご高齢、髪が抜けるのはどうしてもいや、耐えられない。 初回治療はペメトレキセドで開始、病勢進行。 二次治療はペンブロリズマブを使用、計?コース投与、胸水は減少、原発巣不変、胸膜播…

白菊会

膵臓癌術後再発で、入院緩和医療をしていた患者さんが、先ほど旅立たれた。 次女さんと仲のいいご友人に見守られて、逝った。 血液検査以上をきっかけに発見し、手術ができたものの局所進行度が高く、手術から3年8カ月で亡くなられた。 がん性腹膜炎のため消…

医師賠償責任保険

拠点を今の職場に移して、早いもので5年半が過ぎようとしている。 経気管支肺生検への参加は、今年の5月半ばの検査を最後に、しばらく自粛している。 思わぬリスクが明らかになったからである。 今年の5月半ば、経気管支肺生検に参加した。 右肺上葉、肺尖部…

がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計

今朝のNHKニュースで標記の話題が繰り返し取り上げられていた。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180912/k10011625481000.html https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/0912/index.html https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure…

肺がん手術後の反回神経麻痺

頸部神経叢に端を発し、右は鎖骨下動静脈のレベル、左は大動脈弓下のレベルで反転して、声門を支配する反回神経。 胸部の手術後、しばしばこの反回神経が麻痺を来す。 そして、声がかすれる。 時には嚥下障害の原因になる。 いま、食道がん術後の患者さんが…

ニボルマブ、悪性胸膜中皮腫で使用可能に

2018年8月付けで、 「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」 に対して、ニボルマブが使用できるようになった様子。 添付文書が改定されていた。 うかつにも知らなかった。 治療選択肢が増えるのはいいことだ。 https://www.opdivo…

局所進行非小細胞肺癌に対する予防的全脳照射

予防的全脳照射というコンセプトは繰り返し取り上げられるものの、その対象はというと、今のところ我が国では限局型小細胞肺がんに対して放射線化学療法を行い、一定程度以上の治療効果が得られた患者さんに限られる。 過去の臨床試験を見ると、我が国と海外…