デュルバルマブは局所進行非小細胞肺がんの生存期間を有意に延長した(PACIFIC試験)

 我が国の実地臨床に導入済みだが、局所進行非小細胞肺がんに対する放射線化学療法後のデュルバルマブ療法の効果を検証した第III相PACIFIC試験の生存期間解析結果が論文報告された。

 既にNew England Journal of Medicine誌に無増悪生存期間の解析結果が報告済みだったが、全生存期間解析結果が改めて本誌に採択されたと言うこと自体が、いかに本治療がEpoch Makingであるかを物語っている。

 デュルバルマブ群の生存期間中央値は、25.2ヶ月の経過観察期間経過時点でも全く見通せない。

 生存期間中央値の95%信頼区間は34.7ヶ月以上とされており、早い話が95%程度の確率でほぼ3年生存できるということだ。

 

 個人的に本治療が意義深いと感じるのは、以下のような点だ。

・治癒を目指した治療においてきっちりと結果が出て、かつ生存曲線における両治療群間の差が末広がりになりつつあること

・バイオマーカーによる患者選別をしておらず、放射線化学療法終了時点で病勢進行がなければ誰にでも適用可能であること

 そうは言いながら、我が国で本治療を行う場合には、放射線肺臓炎を含めた間質性肺炎の取り扱いには注意したい。

 最近、放射線化学療法後、病勢進行を待たずににペンブロリズマブを使用し、不幸な転帰をたどった患者がいた。

Overall Survival with Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III NSCLC

Antonia et al., N Engl J Med 2018

DOI: 10.1056/NEJMoa1809597

背景:

 本第III相試験(PACIFIC試験)の前回の解析において、臨床病期III期、切除不能の非小細胞肺癌と診断され、抗がん薬・根治的胸部放射線同時併用療法後に病勢進行を認めなかった患者では、デュルバルマブがプラセボ(偽薬)に対して有意に無増悪生存期間を延長することが明らかとなった。今回は、もうひとつの主要評価項目である全生存期間解析結果に関して報告する。

方法:

 本試験に参加した患者をデュルバルマブ群(デュルバルマブを体重1kgあたり10mgの投与量で2週ごとに投与、最長12ヶ月まで)とプラセボ群(偽薬を2週ごとに投与、最長12ヶ月まで)に2:1の比率で無作為割付した。(また、プロトコール治療を12ヶ月まで継続し、その時点で病勢進行が認められなかった場合には継続投与可とし、また一旦プロトコール治療を完遂して無治療経過観察の後に病勢進行した場合にも、プロトコール治療再開可とされた。)年齢、性別、喫煙歴を割付調整因子とし、最後の胸部放射線照射日から起算して1-42日の間で無作為割付を行った。主要評価項目は無増悪生存期間と全生存期間とした。最終解析は、無作為割付された計713人の患者において、概ね491の死亡イベントが観察された際(イベント発生率69%)に行うように設定された。中間解析は、同様に285件、393件の死亡イベントが観察された際に行うことになっていた。この計画に基づき、初回の中間解析は299件の死亡イベントが確認された2018年3月22日時点をデータカットオフとして行った。中間解析における有効中止の基準をp=0.00274としていたが、今回の中間解析時点でこの基準を達成したため、データを公表することになった。

結果:

 2014年5月から2016年4月までの間に、計713人の患者が無作為割付され、709人(99.4%)がプロトコール治療を受けた(デュルバルマブ群473人、プラセボ群236人)。2018年3月22日のデータカットオフまでに299件の死亡イベント(デュルバルマブ群183件、プラセボ群116件)が観察された。経過観察期間中央値は25.2ヶ月だった。デュルバルマブ群とプラセボ群の比較において、1年生存割合はそれぞれ83.1%(95%信頼区間は79.4-86.2%)および75.3%(95%信頼区間は69.2-80.4%)だった。2年生存割合はそれぞれ66.3%(95%信頼区間は61.7-70.4%)および55.6%(95%信頼区間は48.9-61.8%)であり、両側検定におけるp値は0.0025で、デュルバルマブが有意に生存期間を延長した。生存期間中央値はそれぞれ未到達(95%信頼区間は34.7ヶ月−未到達)および28.7ヶ月(95%信頼区間は22.9ヶ月−未到達)だった。ハザード比は0.68、99.73%信頼区間は0.47-0.997で、p=0.0025の有意水準だった。無増悪生存期間中央値はそれぞれ17.2ヶ月(95%信頼区間は13.1-23.9ヶ月)および5.6ヶ月(95%信頼区間は4.6-7.7ヶ月)だった(ハザード比は0.51、95%信頼区間は0.41-0.63)。副次評価項目である、患者に遠隔転移イベントもしくは死亡イベントが発生するまでの期間の中央値は、それぞれ28.3ヶ月および16.2ヶ月だった(ハザード比0.53、95%信頼区間0.41-0.68)。Grade 3-4の有害事象発生割合はそれぞれ30.5%、26.1%であり、プロトコール治療の毒性中止にいたる割合はそれぞれ15.4%、9.8%だった。

結論:

 本試験において、デュルバルマブはプラセボに比して、有意に生存期間を延長した。