・抗PD-1抗体のcemipilimab、初回治療で化学療法より生存期間を延長

 トルコの先生からの報告です。

 新規抗PD-1抗体のcemipilimabが化学療法と比較して、進行非小細胞肺がんの初回治療で有意に生存期間を延長したそうです。

 要約を素直に読むと、PD-L1発現状態を考慮しなくても生存期間を延長しているようですが、わざわざPD-L1≧50%の患者集団についてスポットを当てているということは、結局既存の同効薬と同じように、肺がん細胞のPD-L1の発現割合が高いほど治療効果も高い傾向だったということでしょうか。

 

 

 

378MO - EMPOWER-Lung 1: Phase III first-line (1L) cemiplimab monotherapy vs platinum-doublet chemotherapy (chemo) in advanced non-small cell lung cancer (NSCLC) with programmed cell death-ligand 1 (PD-L1) ?50%

 

Ahmet Sezer et al., ESMO Asia 2020

 

背景:

 EMOPOWER-Lung 1試験は多施設共同、オープンラベルの国際共同第III相臨床試験であり、腫瘍細胞表面のPD-L1発現割合≧50%のIIIB / IIIC / IV期の未治療扁平上皮 / 非扁平上皮非小細胞肺がん患者を対象として、抗PD-1抗体であるcemipilimabについて検証する試験である。

 

方法:

 本試験に参加する患者は、cemipilimab 350mgを3週間に1回投与する群(cemi群)と担当医により選択された化学療法を行う群(chemo群)に1:1の割合で無作為割り付けされた。chemo群の患者の病勢進行が確認されたのち、治療をcemipilimabに切り替えるクロスオーバーは可とされていた。主要評価項目は全生存期間と、独立した委員会により判定される無増悪生存期間とされた。予定された生存イベントの50%に至った段階で、規定されていた中間解析を行った。今回示すデータは、ITT解析によるものと、PD-L1≧50%の患者群でのITT解析に関するものである。2020年3月1日にデータカットオフを行った。

 

結果:

 全体のITT解析において、経過観察期間中央値13.1ヶ月の段階で、生存期間中央値はcemi群(356人)で22.1ヶ月(95%信頼区間は17.7ヶ月-未到達)、chemo群(354人)で14.3ヶ月(95%信頼区間は11.7-19.2ヶ月)、ハザード比0.68、95%信頼区間0.53-0.87、p=0.002と、cemi群で有意に優れていた。無増悪生存期間中央値はcemi群で6.2ヶ月(95%信頼区間は4.5-8.3ヶ月)、chemo群で5.6ヶ月(95%信頼区間は4.5-6.1ヶ月)、ハザード比0.59、95%信頼区間0.49-0.72、p<0.0001と、こちらもcemi群で有意に優れていた。PD-L1≧50%の患者群においては、経過観察期間中央値10.8ヶ月の段階で、生存期間中央値はcemi群(283人)で未到達(95%信頼区間は17.9ヶ月-未到達)、chemo群(280人)で14.2ヶ月(95%信頼区間は11.2-17.5ヶ月)、ハザード比0.57、95%信頼区間0.42-0.77、p=0.0002で、有意にcemi群で優れていた。無増悪生存期間はcemi群で8.2ヶ月(95%信頼区間は6.1-8.8ヶ月)、chemo群で5.7ヶ月(95%信頼区間は4.5-6.2ヶ月)、ハザード比0.54、95%信頼区間0.43-0.68、p<0.0001で有意にcemi群が優れていた。chemo群で、cemiplimabへクロスオーバーした患者の割合は73.9%に上った。全体のITT解析において、cemi群では奏効割合が高く(36.5% vs 20.6%)、奏効持続期間が長く(21.0ヶ月 vs 6.0ヶ月)、患者背景に関わらずGrade 3以上の有害事象が少なかった(37.2% vs 48.5%)。

 

結論:

 本試験では、PD-L1≧50%の患者集団において、高いクロスオーバー割合にも拘わらず、cemipirimab単剤療法が有意に全生存期間と無増悪生存期間を延長した。