・ペンブロリズマブによる術後補助療法 KEYNOTE-091試験

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 EGFR遺伝子変異陰性の外科切除可能非小細胞肺がん患者さんにおける、周術期の治療がいよいよ混沌としてきました。

 CheckMate-816試験に基づいて、術前にニボルマブ+化学療法を行うのがいいのか。

 IMpower-010試験に基づいて、術後化学療法を行った後にアテゾリズマブ地固め療法を行うのがいいのか。

 あるいは今回のKEYNOTE-091試験に基づいて、術後化学療法を行った後にペンブロリズマブ地固め療法を行うのがいいのか。

 今後活発に議論されることになりそうです。

 

 

Pembrolizumab (pembro) versus placebo for early-stage non-small cell lung cancer (NSCLC) following complete resection and adjuvant chemotherapy (chemo) when indicated: Randomized, triple-blind, phase III EORTC-1416-LCG/ETOP 8-15 – PEARLS/KEYNOTE-091 study

 

L.Paz-Ares et al.
ESMO Virtual Plenary session 2022 Abst.#VP3-2022
DOI:https://doi.org/10.1016/j.annonc.2022.02.224

 

背景:
 ペンブロリズマブは進行非小細胞肺がんの標準治療のひとつである。PEARLS / KEYNOTE-091試験では、完全切除後の早期非小細胞肺がんに対する術後補助治療としてのペンブロリズマブの有効性を、プラセボ対照で評価した。

 

方法:
 適格患者の条件は以下の通り:
・完全切除後のIB期(腫瘍長径40mm以上)、II期、IIIA期非小細胞肺がん(AJCC7版)
ガイドラインに沿った術後補助化学療法を施行済みである
・ECOG-PS 0-1
・PD-L1 TPSの発現状態は問わない
 適格患者をPem群(ペンブロリズマブ200mg/回を3週ごと、上限18コースまで)とPla群(プラセボを3週間ごと、上限18コースまで)に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は全患者集団の無病生存期間(DFS)とTPS50%以上の患者集団のDFSとした。副次評価項目はTPS1%以上の患者集団のDFS、全患者集団の生存期間(OS)、TPS50%以上の患者のOS、TPS1%以上の患者のOS、安全性とした。今回のデータは、プロトコールに規定された2回目の中間解析(IA2:2021/9/20にデータカットオフ)を受けたものである。
 
結果:
 1177人の患者が無作為割り付けされた(Pem群590人、うちTPS 50%以上は168人 / Pla群587人、うちTPS 50%以上は165人)。背景因子は両群ともバランスが取れていた。無作為割り付けからIA2のデータカットオフまでの期間中央値は35.6ヶ月(16.5-68.0)だった。全患者集団のDFSはPem群で有意に改善していた(DFS中央値はPem群53.6ヶ月、Pla群42.0ヶ月、ハザード比0.76、95%信頼区間0.63-0.91、p=0.0014)。TPS50%以上の患者集団でのDFSは有意水準に至らなかった(両群ともにDFS中央値に至らず、ハザード比0.82、95%信頼区間0.57-1.18、p=0.14)。死亡イベントが209件しか発生しなかったため、全患者集団のOSも有意水準に至らなかった(18ヶ月生存割合はPem群91.7%、Pla群91.3%、ハザード比0.87、95%信頼区間0.67-1.15、p=0.17)。治療コース数の中央値はPem群17コース、Pla群18コースだった。Grade 3以上の有害事象はPem群の34.1%、Pla群の25.8%で認め、プロトコール治療中止に至ったのはPem群19.8%、Pla群5.9%だった。治療関連死はPem群の0.7%で認め、Pla群では認めなかった。

 

結論:
 手術、(適応のある場合の)術後化学療法に引き続くペンブロリズマブ術後補助療法は、PD-L1発現による層別化を行わなかった場合には、完全切除後IB-IIIA期非小細胞肺がん患者の無病生存期間を統計学的有意に改善した。有害事象は想定の範囲内だった。PD-L1発現状態別のDFSやOSについては今後引き続き解析を行う予定である。