・NeoADAURA前哨戦その2・・・第II相NEOS試験

f:id:tak-OHP:20220407004415j:plain

 どの分野においてもそうですが、肺がん治療開発の分野においても中国のプレゼンスは目覚ましいものがあります。

 既知の治療薬を用いた中国発の臨床試験結果が増えたな、というのが数年前までの印象でしたが、ここ最近は続々と中国で開発された新薬とそれに関する大規模臨床試験の結果が次々と公表されるようになりました。

 今回の報告は2022年欧州肺癌会議(European Lung Cancer Congress(ELCC))で公表されたものですが、本会議における中国発の発表は大変多く、なんだかアジアの学会のプログラムを見ているようです。

 基礎研究から大規模臨床試験実施に至るまで、学術・経済・政治の各分野で体制が整ってきたということなのでしょう。

 ただし、中国国内のみで行われている大規模臨床試験もまた多いため、少なくとも欧米諸国からは、欧米で追試検証をしてからでないと臨床導入できない、という空気感が大勢のようです。

 新薬開発、国際的な臨床導入には、国際共同臨床試験が不可欠である、ということは我々も踏まえておかなければなりません。

 

 閑話休題

 今回の話題は、オシメルチニブの術前療法に関する第II相試験の結果です。

 腫瘍縮小効果や安全性についてはいまさら言うまでもないのですが、生存期間延長効果がどの程度見込めるかは、今後時間をかけて追跡していかなければならないでしょう。

 

 

 

81MO - Osimertinib as neoadjuvant therapy in patients with EGFR mutated resectable stage II-IIIB lung adenocarcinoma (NEOS): Updated Results

 

Chao Lyu et al.
2022 European Lung Cancer Congress(ELCC) Abst.#81MO
Annals of Oncology (2022) 33 (suppl_2): S71-S78.10.1016/annonc/annonc857

 

背景:
 切除可能EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対する術前オシメルチニブ療法について検証した多施設共同単アーム第II相NEOS試験の中間解析で、有望な有効性と安全性が過去に報告されている。今回、NEOS試験の最終結果について報告する。

 

方法:
 18-75歳のII-IIIB(T3-4N2)期EGFR遺伝子変異陽性肺腺がん患者を対象に、オシメルチニブ80mg/日を6週間投与し、その後に外科切除を行った。主要評価項目は担当医評価による奏効割合(RECIST ver.1.1準拠)とした。副次評価項目には安全性、R0切除率、QoL、Major Pathologic Response(MPR=切除標本における残存腫瘍細胞が10%未満と定義)率、病理学的完全奏効(pathological Complete Response, pCR)率、リンパ節転移N2からのdownstaging率とした。

 

結果:
 2018/10/17-2021/06/08の期間に、88人の患者がスクリーニングされ、最終的に40人がNEOS試験に参加した。オシメルチニブ6週間内服を完遂した38人において、奏効割合は71.1%(27/38)だった。32人の患者が外科切除(50%は胸腔鏡下もしくはロボット支援下手術で、残る50%は開胸手術)を受け、R0切除率は93.8%(30/32)だった。外科切除後に病理学的評価が可能だった28人において、MPR率は10.7%、pCR率は3.6%だった。13人(46.4%)の患者では、50%以上の病理学的奏効を認めた。治療関連有害事象はオシメルチニブ使用中に24人(60%)で、うちGrade 3を3人(7.5%)で認めた。オシメルチニブ投与中止にいたる有害事象はなかった。

 

結論:

 これまでのところ、本試験データは術前オシメルチニブ療法についての最も大規模なデータである。切除可能EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの術前療法として、オシメルチニブは有効性、安全性ともに満足できる結果を残しており、有望な治療と考えられる。



 

関連記事です。

oitahaiganpractice.hatenablog.com