・ORCHARD試験におけるモジュール4は無効中止:デュルバルマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン併用療法の中間解析結果

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 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対し、一次治療としてオシメルチニブを使った後に病勢進行したあと、再生検の結果に応じて異なる治療を提供するORCHARD試験。

 今回は、治療標的となり得る異常が見つからなかった患者さんに対するデュルバルマブ+ペメトレキセド+カルボプラチン併用療法に関する報告を取り上げます。

 残念ながら思うような治療効果は得られず、中間解析時点で無効中止されることになったようです。

 EGFR遺伝子変異陽性肺がんとデュルバルマブはどうも相性が悪いようです。

 

 

 

 

Durvalumab + chemotherapy in patients (pts) with advanced EGFR mutation-positive (EGFRm) NSCLC whose disease progressed on first-line (1L) osimertinib: An ORCHARD study interim analysis

 

Byoung Chul Cho et al.
European Lung Cancer Congress (ELCC) 2022, Abst.#13P

 

背景:

 オシメルチニブは第3世代、非可逆性、中枢神経系移行性のあるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬で、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者の一次治療として好まれる治療薬である。一次治療としてオシメルチニブを開始した患者は、いずれ薬剤耐性により病勢進行に陥る。現在進行中の第II相、オープンラベル、バイオマーカーに基づく基盤研究であるORCHARD試験は、オシメルチニブによる一次治療後の耐性メカニズムを明らかにするとともに、新規治療レジメンを評価することを目的としている。今回のモジュール4に関する中間解析では、バイオマーカーが見つからなかった患者、あるいはバイオマーカーは見つかったけれどもそれに対応する治療対象とならなかった患者に対して、デュルバルマブ+化学療法の有効性と安全性について報告する。

 

方法:

 WHO-PS 0-1で、オシメルチニブによる一次治療後に病勢進行に至ったのちの再生検標本を用いた次世代シーケンサー解析において既定の遺伝子異常を認めなかったEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者を対象とした。デュルバルマブ1,500mg+カルボプラチン5AUC+ペメトレキセド500mg/㎡を3週間に1度投与し、これを4-6コース反復、その後にデュルバルマブ+ペメトレキセド維持療法を4週間に1度行った。主要評価項目は奏効割合とし、副次評価項目には無増悪生存期間(PFS)と安全性を含めた。2021年6月25日にデータカットオフを行った。

 

結果:

 25人の患者(年齢中央値61歳、女性76%、中枢神経系転移合併患者24%)が登録された。全ての患者が、予定量の75%以上を投与された。データカットオフ時点までに、22人(88%)の患者がプロトコール治療を中止していた。奏効割合は3/25=12%(95%信頼区間4.5-24.8)だった。病勢安定(SD)と判定された患者は17/25=68%で、そのうち6人(24%)の最良効果はPRだった。病勢進行(PD)と判定されたのは4/25=16%だった。1人(4%)は腫瘍縮小効果評価不能だった。PFS中央値は4.8ヶ月(95%信頼区間2.6-7.6)、6ヶ月無増悪生存割合は37.5%(95%信頼区間19.0-56.0)だった。奏効割合が45%以上となる確率が10%以下という試験中止基準を満たしたため、この時点で患者集積は中止した。重篤な治療関連有害事象は2人(8%)で認めたが、間質性肺疾患のイベントはなかった。

 

結論:

 今回の患者集団において、デュルバルマブ+化学療法は忍容性はよかったが、有効性に乏しく中間解析段階で無効中止となった。

 

 

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 ORCHARD試験の基本コンセプトについて触れています。

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 ORCHARD試験のモジュール1、オシメルチニブ+savolibinib(MET阻害薬)併用療法に関する中間解析結果です。

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 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんとデュルバルマブの相性の悪さは、6年前にもその片鱗が示されています。

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