・ORCHARD試験のモジュール1、オシメルチニブ+savolitinib併用療法の中間解析結果

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 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんに対し、1次治療でオシメルチニブを使用し、病勢進行に至った後にどんな治療を行うべきか検証することを目指すORCHARD試験。

 今回は、再生検でMET遺伝子異常が認められた患者さんを対象に、オシメルチニブ+savolitinib併用療法を行うモジュール1の中間解析結果です。

 オシメルチニブ耐性化後となると、次治療の効果は限定的と言わざるを得ません。

 そんな中、奏効割合41%は立派な成績だと思います。

 

 

 

ORCHARD osimertinib + savolitinib interim analysis: PhII platform study in EGFRm NSCLC after progression on osimertinib

 

Okamoto et al.
2022 JSMO O6-2

 

背景:
 非可逆的で、中枢神経系病変にも有効な第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブを用いたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者の殆どは、最終的に、主としてMETの異常により耐性化する。第II相ORCHARD基盤研究は、オシメルチニブ1次治療による耐性機構を明らかにして、病勢進行後の最適な治療方針を見出すことを目的とした。今回の中間解析では、EGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺がん患者で、MET遺伝子増幅もしくはMETエクソン14スキップ変異を有する者を対象とした、オシメルチニブ+savolitinib併用療法について報告する。

 

方法:

 オシメルチニブ1次治療後に病勢進行し、Foundation Medicine CDxプラットフォームの次世代シーケンサー解析で再生検検体を解析した結果MET遺伝子異常が確認された患者を対象に、オシメルチニブ80mg/日+savolitinib300mg/日併用群とオシメルチニブ80mg/日+savolitinib600mg/日併用群に割り付けた。主要評価項目はRECIST ver.1.1準拠の奏効割合とし、副次評価項目は奏効持続期間や安全性とした。中間解析のデータカットオフは2021年1月だった。

 

結果:

 オシメルチニブ+savolitinib併用療法を受けた患者は20人(すべてMET遺伝子増幅)で、オシメルチニブ1次治療の継続期間中央値は414日(95%信頼区間197-1722)だった。データカットオフ時点で、17人の患者は腫瘍縮小効果を評価可能だった。奏効が確定した患者はそのうち7人、したがって奏効割合は41%(80%信頼区間25-59)、3人(18%)は未確定の奏効状態にあり、4人(24%)は6週間以上病勢安定、1人(6%)は病勢進行、2人は評価不能だった。奏効が確定した7人は、データカットオフ時点でも引き続き奏効状態を維持していた。奏効持続期間中央値は5.5ヶ月程度だった。20人全てで何らかの有害事象を認めた。6人(30%)ではGrade 3以上の有害事象に見舞われており、そのうち5人は治療関連有害事象と考えられた。頻度の高かった有害事象は肺炎と好中球減少(それぞれ2人(10%))。6人は深刻な有害事象に見舞われた。3人(15%)は有害事象のためにオシメルチニブ+savolitinib併用療法を中止した。治療関連死は認めなかった。

 

結論:

 オシメルチニブ+savolitinib併用療法は、オシメルチニブ1次治療後にMET遺伝子異常を認めた患者に対する有効性の兆しを見せた。今回の中間解析結果を受けて、事前に規定されていたプロトコールに沿って30人まで患者集積を拡大することにした。オシメルチニブ+savolitinib併用療法は、SAVANNAH試験にて引き続き検証中である。

 

質疑応答:

Q1 スクリーニングの段階で、どの程度の頻度でMET遺伝子異常が認められたか?

A1 現段階で正確なデータは持ち合わせていない。一般に、オシメルチニブ1次治療後にMET遺伝子異常による耐性を示すのは全体の10-20%とされている

Q2 METコピー数と有効性の関連はあるか?

A2 正確なデータはないが、関連性はありそう。最終解析時点では検証すべき事柄だろう。

Q3 今後の展望は?

A3 今回のORCHARD試験は全体で30人と小規模な単アーム臨床試験だが、SAVANNAH試験は総数200人を集積した試験で、こちらからも何らかの情報が得られるだろう。ただし、ORCHARD試験は次世代シーケンサーを、SAVANNAH試験は免疫染色やFISHをMET遺伝子異常検出の手法として用いているため、患者背景が若干異なることに注意しなければならない。ランダム化比較試験を新たに行う意義は乏しく、単アーム試験で奏効割合がある程度担保されればそれで十分だろう。

 

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